NKT細胞標的治療およびRIKEN-NKT®とは

NKT細胞標的治療およびRIKEN-NKT®とは

NKT細胞標的治療は、独立研究開発法人理化学研究所の研究成果であり、厚生労働省から先進医療B認定を受けるため、2010年に千葉大学医学部にてステージ3bおよびステージ4の非小細胞肺がんを対象とする医師主導型臨床フェーズ2を実施し、優れた治療実績を示した免疫再生医療(がん免疫治療)です。

RIKEN-NKT®は、NKT細胞標的治療の社会実装を目指して設立された独立研究開発法人理化学研究所発のメディカルサイエンス企業である株式会社理研免疫再生医学によりさらに高度化された医療技術です。がん免疫治療としての作用機序はNKT細胞標的治療と同様ですが、細胞培養の再現性や保存安定性に優れ、再生細胞薬(特定細胞加工物)としての完成度の高さが特徴です。

■医師主導型臨床フェーズ2の概要

表は、千葉大学医学部で実施された非小細胞肺がんを対象としたNKT細胞標的治療の医師主導型臨床フェーズ2の臨床データです。表の右側に記載されているのは各治療方法です。上1段はNKT細胞標的治療、中4段は分子標的薬(抗がん剤)、下1段はベストサポーティブケア(無治療)を示しています。図の横軸は生存期間中央値です。

文献1:J Immunol. 2009 Feb 15;182(4):2492-501

■試験結果の概要
  • 対象:余命5カ月とされた終末期の進行非小細胞肺がん患者17名。
  • 結果:進行非小細胞がん症例(ステージ3bおよびステージ4、再発例)17例の平均生存期間は18.6ヵ月であり、特に高IFN-γ(インターフェロンガンマ)生産患者群の生存期間中央値は31.9ヵ月と、ガイドライン推奨療法(抗がん剤など)と比較して顕著な延命効果が示されました。また、別途に実施された頭頸部がんを対象にした第2相臨床試験では10例全例で有効性が確認されました。
  • その他1:初回治療のみで、その後無治療でも、腫瘤増大や転移、再発は認められませんでした。
  • その他2:顕著な副作用は認められませんでした。

■RIKEN-NKT®の実績

RIKEN-NKT®は、NKT細胞標的治療の社会実装を目的に株式会社理研免疫再生医学で研究開発が進められ、同社により慎重に治療成績のデータを蓄積・統計解析しながら提供されており、2024年8月時点で800症例を超えてきています。高いレベルで奏効率(がんの進行停止・部分寛解・完全寛解)を維持しており、QOL向上に至っては90%を超える成績を残しています。

■NKT細胞標的治療の作用機序

NKT細胞標的治療とRIKEN-NKT®は同様の作用機序を示します。

免疫系に寄与するリンパ細胞(リンパ球)には、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、T細胞、B細胞、NKT細胞があります。

自然免疫系のNK細胞は、全リンパ球の10~30%を占め、体内に侵入した菌やウイルスなどの異物を攻撃して排除する働きがあります。獲得免疫系のT細胞は、全リンパ球の60~80%を占め、病原体がもつ抗原情報から学習して抗体を作り、同病原体を攻撃して排除する働きがあります。獲得免疫系のB細胞は全リンパ球の20~40%を占め、T細胞と同様に学習することにより病原体を攻撃します。

これに対し、NKT細胞は全リンパ球の0.1%しか存在しません。しかし、特定細胞加工物であるαガラクトシルセラミドパルス樹状細胞を投与することで活性化し、炎症性疾患において重要な役割を果たすケモカインCXCL16に対し濃度依存的に遊走するとともに、IFN-γを放出(アジュバント効果)して、自然免疫と獲得免疫の橋渡しを行い、これら全てを同時に活性化して、複数の免疫細胞種でがん細胞を総攻撃し、排除する働きがあります。

NKT細胞標的治療やRIKEN-NKT®は、他のがん免疫療法と比較して特徴的な点がいくつもあります。

  • 全ての人の全部位(一部血液がんを除く)が対象となります。これは、活性化NKT細胞ががん抗原でなく炎症疾患において重要や役割を果たすケモカインCXCL16をターゲットすることに由来しています。がん抗原をターゲットする場合、がんの変異に免疫系が追い付かなくなるケースがありますが、活性化NKT細胞はこれが弱点になりません。
  • 活性化NKT細胞には免疫チェックポイントを制御し、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ等)のように体内の免疫環境を整え、自然免疫系のNK細胞や獲得免疫系のT細胞の攻撃力を高める作用があります。
  • 一旦、活性化NKT細胞によって細胞間のシグナル伝達カスケードが回りだすと、その免疫記憶が9ヵ月以上維持されることが臨床前研究により明らかになっています(一般のがん免疫療法の場合、免疫記憶は長く保たれるケースでも1週間程度です)。
  • 活性化NKT細胞は、免疫チェックポイントを制御し、自然免疫系のNK細胞や獲得免疫系のT細胞の力も借りながらがんに対抗する作用機序を有することに加え、活性化NKT細胞自体もパーフォリン効果やグランザイム効果によってがん細胞を直接攻撃し、がん細胞の栄養補給源である血管新生を阻害する働きがあります。

■RIKEN-NKT®に関するお問い合わせ

当社は、独立研究開発法人理化学研究所発のメディカルサイエンス企業である株式会社理研免疫再生医学と業務提携しています。NKT細胞標的治療やRIKEN-NKT®に関するお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」もしくは「098-923-0037」からお願いします。沖縄県内外に関わらず、医療技術に関するご質問対応や、正看護師同席での医療相談をお受けしております。