【索引】NKT細胞標的治療およびRIKEN-NKT®とは
NKT細胞標的治療は、新しいタイプのがん免疫療法です。この治療法は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を活性化し、がん細胞に対する免疫反応を強化することを目的としています。NKT細胞は、「第4のリンパ球」とも呼ばれる特殊な細胞で、免疫抑制環境を改善し、体内の免疫細胞(T細胞やNK細胞)を活性化する能力があります。これにより、がん細胞に対する持続的な攻撃が可能となります。従来の免疫療法と比較して、NKT細胞標的治療は以下の点で優れています。
- 免疫環境の改善:体内の免疫抑制細胞を減少させ、免疫反応を強化します。
- 持続的な効果:長期間にわたり免疫細胞を活性化し続けることができます。
- 広範な適応性:さまざまながんのステージに対して有効です 。
RIKEN-NKT®は、独立研究開発法人理化学研究所発のメディカルサイエンス企業である株式会社理研免疫再生医学が研究開発を進めており、創薬事業や先進医療事業として展開しています。
■RIKEN-NKT®に関するお問い合わせ
当社は、独立研究開発法人理化学研究所発のメディカルサイエンス企業である株式会社理研免疫再生医学と業務提携しています。NKT細胞標的治療やRIKEN-NKT®に関するお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」もしくは「098-923-0037」からお願いします。沖縄県内外に関わらず、医療技術に関するご質問対応や、正看護師同席での医療相談をお受けしております。
索引
■先進医療
先進医療とは、厚生労働大臣に承認された高度な医療技術を用いた治療のことを指します。この医療技術は、主にがん治療や再生医療などの最先端分野で活用されています。
- 先進医療の特徴:
保険適用外:先進医療は公的医療保険の対象外であるため、技術料は全額自己負担となります。但し、診察料や検査料などの通常の医療費は保険が適用されます。
混合診療の認可:先進医療は保険診療と併用することができるため、混合診療が認められており、治療費を抑えることができます。 - 先進医療を受けるための手続き:
患者が先進医療を希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に治療を受けることができます。 - 費用と特約:
先進医療の技術料は高額になることが多いため、先進医療特約という保険が存在します。この特約は、通算1,000万円から2,000万円を上限として、技術料が実費保障されます。
- 先進医療A:
先進医療Aとは、厚生労働大臣が承認した高度な医療技術や治療法の中で、特にがん治療や再生医療などの分野で用いられるものを指します。先進医療は、公的医療保険の適用外であるため、治療にかかる技術料は全額自己負担となりますが、先進医療Aは、保険診療と併用することができるため、診察料や検査料などは保険が適用されます。治療前には十分な説明を受け、同意書に署名する必要があります。先進医療Aの代表例として、がんに対する陽子線治療や重粒子線治療などが挙げられます。 - 先進医療B:
先進医療Bとは、厚生労働大臣が承認した高度な医療技術を用いた治療の一つであり、評価療養の一環として位置づけられています。これらの治療は、将来的に一般の保険診療に導入される可能性を評価するために臨床の場で行われます。先進医療Bは、保険診療と併用して行われることが一般的です。これにより、診察料や検査料などの通常の医療費は公的医療保険が適用されますが、技術料は全額自己負担となります。
■がんのステージ
がんのステージ(病期)は、がんの進行度を示す指標であり、治療方針や予後の判断に重要な役割を果たします。がんは一般的にステージ0からステージIVまでの5段階に分類されます。ステージは、以下の要素に基づいて決定されます。
- がんの大きさ:がんの腫瘍の大きさと広がり。
- リンパ節転移:リンパ節への転移の有無とその範囲。
- 遠隔転移:他の臓器への転移の有無
- ステージ0:
・がんが原発部位に留まり、周囲の組織に浸潤していない初期の状態。 - ステージ1:
・がんが発生した臓器内に限局している。
・がんの大きさが比較的小さく、リンパ節への転移は認められない。 - ステージ2:
・がんが発生した臓器内で大きくなっているが、まだ臓器内にとどまっている。
・一部のケースではリンパ節に転移している場合もある。 - ステージ3:
・がんが臓器外の近くのリンパ節に転移している。
・がんが周囲の組織に浸潤していることもある。 - ステージ4:
・がんが他の臓器に遠隔転移している。
・治療は難しく、がんの進行を抑えるための治療が行われる。
■医師主導型臨床
医師主導型臨床とは、医師が主体となって実施する臨床研究や治験のことを指します。この形式は、企業が主導する治験とは異なり、医師自身が研究計画を立て、実施し、結果を評価します。以下に、医師主導型臨床の主要なポイントを説明します。
- 研究主体:医師が研究の主体となり、臨床研究や治験を実施します。研究計画やデザインの立案、データの収集・解析などすべてのプロセスを医師が主導します。
- 目的:医薬品や医療機器の有効性および安全性を評価し、科学的根拠を提供することを目的とします。特に、企業主導の治験ではカバーされにくい独自の研究ニーズに応えることができます。
■治験
治験とは、新しい医薬品や医療機器の有効性(効果)や安全性(副作用)を科学的に確認するための臨床試験のことを指します。治験は、薬が人に対して実際に役立つかどうかを確かめるために行われ、厚生労働省の承認を得るための重要なステップです。
- フェーズ1(第1相):
少数の健康なボランティアに対して行われ、薬の安全性や体内での動きを確認します(毒性・容認性の確認)。 - フェーズ2(第2相):
少数の患者に対して行われ、薬の有効性と副作用を評価します。 - フェーズ3(第3相):
大規模な患者を対象に行われ、薬の効果と安全性をさらに詳しく調べ、最終的な承認を得るためのデータを集めます。
■がんのガイドライン推奨療法
がん治療において最も効果的で安全な治療方法を提供するための指針です。科学的根拠に基づいて作成され、医療従事者はこれらガイドラインに沿って患者に対して最適な治療を提供します。例えば、乳がん治療に関するガイドラインでは、病期(ステージ)や腫瘍のタイプに応じて、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法などの組み合わせが推奨されます。
- エビデンスに基づく:
ガイドラインは、多くの研究結果や臨床試験のデータを基にしており、治療の有効性と安全性が科学的に証明されたものです。 - 標準治療:
標準治療とは、多くの患者に対して最適な治療法として推奨される方法です。これには、手術、化学療法、放射線療法などが含まれます。 - 診療ガイドライン:
診療ガイドラインは、特定のがんに対する治療の流れや選択肢を明確に示した文書であり、医師が治療方針を決定する際の参考となります。 - ガイドラインの作成と活用:
ガイドラインは、専門家グループによって作成され、定期的に見直されます。最新の研究結果や技術の進歩を反映させるために、更新が行われます。 - 活用方法:
医師はガイドラインを参考にして、患者の病状や個別の状況に応じた最適な治療法を選択します。患者も、自分の治療方針について理解を深めるために、ガイドラインの内容を知っておくことが重要です。
- 抗がん剤:
抗がん剤とは、がん細胞の増殖や転移を抑えるための薬剤です。主に化学療法(ケモセラピー)として使用され、がん細胞を直接攻撃したり、その成長を妨げたりします。抗がん剤は、体内に入ると血液に乗って全身を巡り、がん細胞に到達して攻撃を行います。これにより、がんの進行を抑えたり、再発や転移を防ぐ効果があります。一部の抗がん剤は、天然に存在する植物を原料として製造され、細胞分裂を阻害することでがん細胞の増殖を抑えます。抗がん剤治療は、通常3〜4週間を1サイクルとして行われ、がんの進行具合に応じて複数のサイクルが繰り返されます。治療は外来で行われることもあり、点滴や内服薬として投与されます。抗がん剤治療には、副作用が伴うことが多いです。一般的な副作用には、吐き気、嘔吐、脱毛、貧血、免疫力の低下などが挙げられます。これらの副作用は治療の進行に影響を与える可能性があるため、医師と密にコミュニケーションを取りながら治療を進めることが重要です。抗がん剤は、がん治療の重要な手段の一つであり、がんの種類や患者の状態に応じて適切に選択されます。 - 分子標的薬:
分子標的薬とは、抗がん剤の一種で、がん細胞に特異的に発現する分子や遺伝子をターゲットにして、その機能を抑えることでがん細胞の増殖や分裂を阻害する薬剤です。分子標的薬は、がん細胞の特徴的な分子や遺伝子に結合することで、その働きを阻害します。これにより、がん細胞に特異的に効果を発揮し、正常な細胞への影響を最小限に抑えることができます。がん遺伝子によって産生されるタンパク質などを標的とし、その働きを抑制することでがん細胞の増殖を抑えます。また、「がん周囲の環境を整える因子」を標的にすることで、がん細胞が増殖しにくい環境を作り出します。分子標的薬は、がん細胞に特異的に作用するため、副作用が比較的少ないとされ、従来の抗がん剤治療に比べて、特定のがんに対して非常に高い効果を発揮することがあります。現在、乳がん、肺がん、大腸がんなど、様々ながんの治療において分子標的薬が使用されています。分子標的薬は、がん治療における重要な選択肢の一つであり、個々のがん患者に対するパーソナライズド医療を実現するために重要な役割を果たしています。 - 免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ等):
免疫チェックポイント阻害剤とは、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬剤です。この薬は、免疫細胞であるT細胞ががん細胞を攻撃する力を高めることで、がん治療に利用されます。免疫細胞の表面には、異物(がん細胞など)を攻撃するかどうかを判断するためのチェックポイントが存在します。このチェックポイントが正常に機能することで、自己免疫疾患を防ぎます。免疫チェックポイント阻害剤は、このチェックポイントの働きを阻害することで、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。免疫チェックポイント阻害剤は、他の治療法では効果が得られにくいがんに対しても有効であることが確認されています。特に、進行したがんや再発したがんに対して効果的です。免疫系を活性化するため、治療効果が長期間持続する場合があります。免疫チェックポイント阻害剤には副作用もあります。免疫系を活性化することで、正常な細胞も攻撃されることがあり、自己免疫疾患のリスクが増加する場合があります。免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療において非常に重要な役割を果たしており、多くの患者にとって有望な治療法となっています。 - ベストサポーティブケア:
ベストサポーティブケアとは、がんに対する積極的な治療(手術や化学療法など)を行わず、症状の緩和を目的とした治療を提供することを指します。痛み、呼吸困難、吐き気など、がんによる苦痛や不快な症状を和らげることを主な目的とし、患者の生活の質(QOL)を維持・向上させるためのケアを行い、症状緩和に専念します。これらのケアには、身体的な症状だけでなく、精神的、社会的、そしてスピリチュアルなサポートも含まれます。患者の意向を尊重し、痛みや苦痛を軽減することで、より良い生活を送ることを目指します。
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■非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは、肺がんの中で最も一般的なタイプで、全肺がんの約85%を占めます。非小細胞肺がんには以下の主要な組織型があります。
- 腺がん:
最も一般的な非小細胞肺がんで、肺の外側や肺胞に近い部分に発生します。 - 扁平上皮がん:
気道の内側を覆う細胞から発生し、中央部分に多く見られます。 - 大細胞がん:
大型の細胞から成るがんで、急速に成長し、全体の約10%を占めます
■頭頸部がん
頭頸部がんとは、頭部および頸部の各部位に発生するがんの総称です。具体的には、口腔、咽頭、喉頭、鼻腔、副鼻腔、唾液腺、そして耳や喉の一部に発生するがんが含まれます。
-
特徴:
頭頸部がんは、従来の耳鼻咽喉科や口腔外科の領域が中心となり、これらの部位にがんが生じることを指します。がんの進行により、話す、飲む、呼吸するなどの日常生活に影響を及ぼすことがあります。 - 原因:
頭頸部がんの主な原因には、喫煙、飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染などが挙げられます。これらの要因が組み合わさることで、がんの発生リスクが高まります。
■生存期間中央値
生存期間中央値(Median Survival Time, MST)とは、治療を受けた集団において、50%の患者が生存している期間を示す指標です。具体的には、治療開始後に集団の半数が生存している時点の期間を指します。
- 治療効果の評価:
生存期間中央値は、新しい治療法の効果を評価する際に重要な指標として用いられます。これにより、治療の有効性を客観的に比較することができます。 - 患者への説明:
医師が患者に対して治療の予後や期待される生存期間を説明する際にも使用されます。生存期間中央値を理解することで、患者は自分の病状をより正確に把握することができます。
■がんの進行停止
がんの進行停止とは、がん細胞の増殖が停止し、がんの大きさや広がりが変化しない状態を指します。この状態では、がんが進行せず、安定した状態が維持されます。がんの進行停止は、定期的な検査(画像検査や腫瘍マーカーの測定)によって確認されます。これにより、がんの大きさや広がりが変化していないことが確認されます。がんの進行停止は患者の生活の質を向上させ、治療の選択肢を広げるために重要な概念です。治療や生活習慣の改善を通じて、この状態を目指すことが治療の一環となります。
■部分寛解
部分寛解(partial response)は、がん治療の効果判定の一つで、治療によって腫瘍の大きさが減少し、症状が改善された状態を指します。これは、完全にがんが消滅した状態ではないものの、腫瘍の縮小や症状の軽減が確認され、治療が一定の効果を示したことを意味します 。
- 腫瘍の縮小:
腫瘍の大きさが50%以上減少した場合を部分寛解とすることが一般的です。 - 症状の改善:
がんによる症状が明らかに軽減され、患者の生活の質が向上した状態を指します。
■完全寛解
完全寛解は、がん治療の結果として、がんによる症状がすべて消失し、検査でも異常が見られなくなった状態を指します。但し、完全寛解は治療の一つの大きな目標ですが、継続的な経過観察と検査が必要となります。具体的には、次のような特徴があります。
- 症状の消失:
がんによる痛みや体調不良などの症状がすべてなくなります。 - 検査結果の正常化:
血液検査や画像検査などでがんの兆候が見つからない状態になります。 - 完全寛解と治癒の違い:
完全寛解はがんの兆候が見られなくなった状態を指しますが、治癒(完治)とは異なり、がん細胞が完全に消滅したわけではないため、再発の可能性があります 。
■QOL
がん治療におけるQOL(Quality of Life:生活の質)とは、がん患者が治療を受けながら、可能な限り快適で自分らしい生活を送ることを目的とした総合的な概念です。例えば、がん治療に伴う副作用(痛み、吐き気、疲労など)の管理や軽減などが挙げられます。QOLの向上は、患者が治療中でも生活の質を高く保ち、治療効果を最大化するための重要な要素です。
■がん免疫治療(がん免疫療法)
がん免疫療法は、患者の免疫システムを利用してがん細胞を攻撃する治療法で、例えば免疫チェックポイント阻害剤や患者自身の免疫細胞を培養・強化して再投与する免疫細胞療法などが挙げられます。免疫療法はがん細胞だけを狙い撃ちするため、副作用が少ないとされ、従来の治療法で効果がなかったがんに対しても有効な場合があります。ただし、効果が証明された免疫療法は一部に限られ、治療法ごとに適応するがんの種類が異なります。
■リンパ細胞(リンパ球)
リンパ細胞は、免疫系の重要な構成要素であり、体内に侵入した異物(抗原)を認識して排除する役割を持つ白血球の一種です。リンパ細胞は血液やリンパ液を通じて全身を巡回し、異物が侵入した場合には迅速に反応して免疫応答を引き起こします。これにより、体内の健康を維持する役割を果たしています
- 樹状細胞:
樹状細胞は、免疫系の重要な構成要素で、抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種です。以下にその特徴と役割を説明します。その名前の通り、樹木の枝のような突起を持つ細胞で、他の細胞と広範囲に接触しやすくなっています。樹状細胞は、体内に侵入した異物(抗原)を捕捉し、分解します。その後、抗原の情報を他の免疫細胞(特にT細胞)に提示し、免疫反応を引き起こします。 - 自然免疫系:
自然免疫系とは、体内に元々備わっている免疫防御の仕組みで、病原体が体内に侵入した際、最初に働く防御機構で、病原体が体内で増殖する前に速やかに排除することで、感染の拡大を防ぎます。自然免疫系の細胞は、侵入してきた病原体や異常な自己細胞を受容体を介して感知し、貪食(細胞内に取り込み分解)や殺菌作用を示します。また、自然免疫系は病原体を捕捉して他の免疫細胞に提示し、獲得免疫を誘導する役割も果たします。 - NK細胞(ナチュラルキラー細胞):
- 獲得免疫系:
獲得免疫系とは、体内に侵入した特定の病原体に対して適応し、記憶することで、再度同じ病原体が侵入した際に素早く効果的に対処する免疫システムです。即ち、獲得免疫は特定の抗原(病原体や異物)に対して特異的に反応し、一度侵入した病原体の情報を記憶して再度同じ病原体が侵入したときに迅速かつ強力に反応します。獲得免疫系は、自然免疫系を補完し、特定の病原体に対する長期的な防御を提供する重要な役割を果たします。 - 抗腫瘍作用:
IFN-γはがん細胞に対して直接的な攻撃を行い、がんの増殖を抑制します。 - 細胞増殖抑制:
IFN-γは細胞の増殖を抑制することで、腫瘍の成長を遅らせます。 - NK細胞の活性化:
自然殺傷細胞(NK細胞)を活性化し、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃します。 - マクロファージの活性化:
他のインターフェロンとは異なり、マクロファージを活性化する能力があります。 - MHC分子の発現増加:
主にMHCクラスIおよびクラスII分子の発現を増加させることで、抗原提示能力を向上させ、免疫応答を強化します。 - グランザイムB:
複数のカスパーゼを限定分解し、最終的にDNAの断片化と核の凝縮を引き起こします。 - グランザイムK:
ミトコンドリアに作用してアポトーシス促進蛋白(シトクロムCやEndoGなど)の放出を促進します。 - 成長と発育:
血管新生は胎児の発育や成長中に頻繁に起こります。 - 傷の治癒:
怪我や手術後の傷が治癒する過程で新しい血管が形成されます。 - がんの成長:
がん細胞は酸素や栄養を得るために血管新生を促進し、腫瘍の成長を助けます。 - 長期間持続:
免疫記憶は数ヶ月から数年、場合によっては一生涯続くことがあります。 - 特異的反応:
記憶された病原体に対して特異的に反応し、他の病原体には影響を及ぼしません。 - 迅速な応答:
初回感染時よりも迅速に免疫応答を開始します。 - 受容体の活性化:
細胞表面の受容体がリガンド(シグナル分子)と結合して活性化されます。 - セカンドメッセンジャーの生成:
受容体の活性化が細胞内の酵素を活性化し、セカンドメッセンジャー(例えばcAMP)の生成を誘導します。 - プロテインキナーゼの活性化:
セカンドメッセンジャーがプロテインキナーゼを活性化し、さらなるシグナルを増幅します。 - 標的分子の修飾:
最終的に、特定の標的分子(転写因子など)が修飾され、細胞の反応が引き起こされます
感染細胞や腫瘍細胞を直接攻撃する能力を持つリンパ球です。NK細胞は特定の抗原を必要とせず、即座に異常細胞を攻撃できる特性があります。
■抗原(がん抗原)
がん抗原とは、がん細胞の表面に存在する特定のタンパク質や分子のことを指します。これらの抗原は、正常な細胞には見られないもので、免疫システムががん細胞を識別し攻撃するための目印となります。がん抗原には、腫瘍特異抗原(TSA)と腫瘍関連抗原(TAA)があります。TSAはがん細胞に特異的に発現する抗原で、TAAはがん細胞および一部の正常細胞に発現する抗原です。がん抗原の研究は、がんの診断やがん免疫療法のような新しい治療法の進展に大きく寄与しています。
■抗体
抗体とは、免疫システムの一部として働くタンパク質で、病原体や異物に対して特異的に結合し、これを排除する役割を持ちます。
■免疫チェックポイント
免疫チェックポイントは、免疫細胞が正常な細胞と異物を区別するために使う制御機構の一つです。具体的には、T細胞の表面に存在する受容体が、異物を攻撃するかどうかの指示を受け取ります。このシステムにより、免疫細胞が自己免疫反応を防ぎ、体を守る役割を果たします。しかし、がん細胞はこの免疫チェックポイントを利用して免疫から逃れることがあります。免疫チェックポイント阻害薬は、これを解除し、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬剤です。
■アジュバント効果
アジュバント効果とは、ワクチンや薬剤の効果を高めるために用いられる補助物質がもたらす作用を指します。アジュバントは、ラテン語の「助ける」という意味を持つ “adjuvare” に由来し、ワクチンと一緒に投与されることで免疫反応を強化する役割を果たします 。具体的には、アジュバントは抗原の取り込みを促進し、自然免疫受容体を刺激することで、樹状細胞などの抗原提示細胞を活性化します。これにより、体内の免疫系がより効果的に病原体を認識し、排除できるようになります。
■INF-γ(インターフェロンガンマ)
インターフェロンガンマ(IFN-γ)は、主にT細胞やNK細胞から分泌されるサイトカインで、免疫応答において重要な役割を果たします。具体的には、以下のような働きを持っています。
■パーフォリン効果
パーフォリンは、NK細胞やキラーT細胞が分泌するタンパク質です。このタンパク質は、標的となる細胞の膜に穴を開ける働きを持ちます。これにより、細胞内にグランザイムという酵素が注入され、標的細胞にアポトーシス(プログラムされた細胞死)を引き起こすことができます。このメカニズムは、感染細胞やがん細胞の除去において重要な役割を果たしています 。
■グランザイム効果
グランザイムは、NK細胞やキラーT細胞が標的細胞を殺傷するために分泌する一群のセリンプロテアーゼです。これらの酵素は、標的細胞に侵入してカスパーゼを活性化し、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導することで、がん細胞や感染細胞を除去する働きを持ちます。
■血管新生
血管新生(angiogenesis)とは、既存の血管から新たな血管が形成される生理現象を指します。これは、成長、修復、炎症応答など、体内で重要な役割を果たします。具体的には、以下のような場面で見られます。
がん治療においては、血管新生を阻害することが、がんの成長を抑えるための有効な手段として研究されています
■免疫記憶
免疫記憶とは、免疫系が過去に遭遇した病原体や異物を記憶し、再度同じ病原体に遭遇した際に迅速かつ効果的に反応する能力のことを指します。この現象により、同じ感染症に対してより強力で迅速な免疫応答が可能になります。免疫記憶には以下の特徴があります。
免疫記憶は主にメモリーT細胞とメモリーB細胞によって担われています。これらの細胞は初回感染後に形成され、再感染時に迅速に活性化されます。ワクチン接種もこの免疫記憶の仕組みを利用しており、病原体に対する防御を強化します
■細胞間のシグナル伝達カスケード
細胞間のシグナル伝達カスケードとは、細胞外からの刺激やシグナルを受け取り、それを細胞内で増幅し、特定の細胞内標的に導く一連の反応の連鎖を指します。このプロセスは、細胞の機能変化、遺伝子の転写調節、細胞成長や分化、アポトーシス(細胞死)など、さまざまな生理的反応を引き起こすために重要です。主なシグナル伝達カスケードの一例として、Ras/Raf/MEK/ERK (MAPK) カスケードがあります。このカスケードは、細胞の成長や分化、細胞骨格の再編成に関与しています。ERK1およびERK2は、シグナル伝達カスケードを介して細胞の成長や分化に影響を与えます。シグナル伝達カスケードの一般的な流れは以下の通りです。
■αガラクトシルセラミド
αガラクトシルセラミド(α-GalCer)は、スフィンゴ糖脂質の一種であり、主にNKT細胞を活性化するために使用されます。NKT細胞は、免疫システムの一部として重要な役割を果たし、サイトカインの産生を誘導します。この物質は、海綿の一種であるAgelas mauritianusの抽出物から発見され、がん免疫療法などにおいて抗腫瘍効果が期待されています。α-GalCerは、抗原提示細胞の一種であるCD1d分子に結合し、NKT細胞の活性化を促進します。これにより、NKT細胞がサイトカインを大量に分泌し、がん細胞の攻撃を強化します。このプロセスは、がん治療やその他の免疫関連疾患の治療において非常に有望な方法とされています
■ケモカイン
ケモカインは、主に白血球の遊走を誘導するサイトカインの一種です。これらのタンパク質は、体内の炎症部位や特定の細胞から分泌され、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現します。ケモカインは細胞遊走活性を主機能とし、生体内での細胞の移動や局在を制御します。現在、ヒトでは40種以上のケモカインが報告されており、それぞれが異なる細胞から構成的あるいは誘導性に産生されています。ケモカインは特定の白血球細胞表面の受容体に結合し、特定部位への誘因や体内での移動を引き起こすことで、免疫応答や炎症反応に重要な役割を果たします。