
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)による発毛・薄毛治療
PRPはPlatelet-Rich Plasmの略称であり、多血小板血漿療法と言われます。「血小板」という文言が示すように、患者さんから採取した血液成分から血小板を血漿とともに分取・濃縮し、これを患部に投与する再生医療です。血小板そのものに治療効果があるわけではなく、その作用メカニズムは、血小板中に含まれる成長因子という有用タンパク質に由来するものです。
整形外科領域でのPRPは、スポーツ再生医療として有名で、腱や靭帯、筋肉損傷、関節症等に適用します。また、難治性潰瘍や褥瘡、重度火傷等への高い治療効果が報告されて以降は、皮膚科領域や形成外科領域でも用いられるようになっています。美容医療においてもPRPの応用事例は多く、皮膚老化症状(シワ等)や発毛・薄毛治療等は有名な症例です。
■PRPによる発毛・薄毛治療に関するお問い合わせ
当社は、次世代PRPとしてPCP-FDという独自技術を扱っています。PCP-FDに関するお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」もしくは「098-923-0037」からお願いします。沖縄県内外に関わらず、医療機関様に対しては医療技術としての照会対応を、患者様に対しては正看護師同席での医療相談をお受けしております。患者様に対しては、PCP-FDを提供可能な医療機関を沖縄県外に関わらず紹介することも可能です。
また、当社は、医薬部外品製造販売業許可と化粧品製造販売業許可を取得しているため、PCP-FDとミノキシジルあるいはピディオキシジルとを所定量調製した「発毛・薄毛治療に特化した」タイプのPCP-FDも提供可能です。この特化型PCP-FDは、近年、AGA(Androgenetic Alopecia:男性型脱毛症)やFAGA(Female Androgenetic Alopecia:女性男性型脱毛症)に関連する医療機関様や婦人科領域の医療機関様からのお問い合わせが増えてきています。
なお、ミノキシジルとは、血管拡張作用によって頭皮の血行を促進し、毛包に直接作用して発毛効果を発揮する医薬部外品成分で男性ホルモンに作用する治療薬ではないため、女性の薄毛にも効果があります。また、ピディオキシジルとは、ミノキシジル誘導体(ミノキシジルの性質を変えない程度に成分の分子を置き換えた成分)の1種で、ミノキシジルよりも吸収されやすく、副作用の恐れもほとんどない化粧品成分です。
■PRP関連コンテンツ
■PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)の発毛メカニズム
PRPによる発毛・薄毛治療の臨床的効果について、多くの学術論文が報告されていますが、生化学的・分子生物学的な発毛メカニズムにまで踏み込んだ学術論文はほとんどありません。
- PRPによる発毛・薄毛治療の臨床的効果に関する学術論文の事例
The British Journal of Dermatology. 2013 Sep;169(3):690 - PRPによる発毛・薄毛治療の生化学的・分子生物学的な発毛メカニズムに関する学術論文の事例
聖マリアンナ医科大学学術誌. 2018 Vol;46(3):137
このページでは、このような背景にあってPRPによる発毛・育毛治療の生化学的・分子生物学的な発毛メカイズムが詳細に報告されている聖マリアンナ医科大学の「多血小板血漿 (PRP) のヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響と育毛への効果」という学術論文をレビューする形式で、PRP発毛の治療メカニズムを説明します。
■学術論文の方法:
培養毛乳頭細胞にPRPあるいはエクソソーム除去PRPを添加し、一定時間培養後に発毛関連遺伝子群である線維芽細胞成長因子(FGF-2:Fibroblast Growth Factor)と血管内皮細胞増殖因子 (VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)、骨形成タンパク質 (BMP-2:Bone Morphogenetic Protein)、Wnt5aの遺伝子発現をPCR法で測定した。
■学術論文の結果:
PRPにより、Wnt5a、BMP-2、FGF-2、VEGFの遺伝子発現が即時的に増加し、Win5a、FGF-2の遺伝子発現が持続的に保持されている結果が得られた。
■学術論文の考察:
毛乳頭細胞への発毛関連遺伝子群の発毛増強が退行期の毛包の活性化を促した(毛包に作用し育毛に関与すした)。
■学術論文からわかること:
PRPによる発毛・薄毛治療は、施術によって「停滞していた毛包全体の機能に活を入れ(スイッチを入れ)、施術後も「毛包全体が良好な環境に維持される」治療です。1クールの施術が完了後、健全な毛包状態が恒常化され、症状が再発しにくくなります。但し、PRPは「毛包が完全萎縮した頭皮(毛包が完全に死んでしまっている状態)」に対する発毛効果は期待できません。毛包が遺残していることが重要で、血小板に含有される各種成長因子が遺残毛包の毛乳頭部分における発毛関連物質の発現量や発現期間を調節することで、育毛に関与していく再生医療です。
■PRP発毛に関する用語
■毛乳頭(もうにゅうとう:毛乳頭細胞):
毛乳頭とは、毛の発生や成長の根源となる部分で、毛の根元にある毛球の下端に位置する細胞の塊です。毛細血管から運ばれてくる栄養分や酸素を取り入れたり、毛母細胞への栄養分や酸素の受け渡しを制御したりする役割があります。
■毛母細胞(もうぼさいぼう):
毛母細胞は、毛根の中心部にある細胞です。髪の毛を成長させる役割を担っており、具体的には「毛母細胞が分裂を繰り返すことで、髪の毛が徐々に成長する」、「メラノサイトからメラニン色素を受け取り、髪の毛を黒くする」などが挙げられます。毛母細胞を活性化することで発毛が促進されるため、毛母細胞に栄養分や酸素の受け渡しを担う毛乳頭との関連性が重要です。
■バルジ:
バルジとは、毛根の中ほどにあるふくらんだ部分で、毛乳頭に対して発毛の指令を出す役割を担う幹細胞の一種である毛包幹細胞が存在します。
■幹細胞(毛包幹細胞):
毛包幹細胞は、毛包の根元にあるバルジ領域に存在します。この毛包幹細胞が分裂して新しい髪の原料となる角化細胞を供給します。また、毛包そのものの再生や、周囲の皮膚や神経に損傷ができたときに、損傷部を再生する役割も担います。
■皮脂腺(脂腺):
皮脂腺は、皮脂を分泌する器官です。皮脂は頭皮や毛包を覆い、その保護と保湿を促進します。発毛においては、皮脂が毛穴を滑らかにし、毛の成長を支援する役割があります。
■立毛筋(りつもうきん):
立毛筋とは、毛に付着する不随意筋で、毛包幹細胞が立毛筋と密接に関与するという研究報告があります。発毛治療や薄毛治療においては、頭皮マッサージなどのセルフケアで立毛筋を刺激することが推奨されています。
■FGF-2(Fibroblast Growth Factor-2:線維芽細胞成長因子):
バルジ領域にある毛包幹細胞を活性化し、毛包幹細胞の増殖・分化を促進するタンパク質です。頭皮毛細血管の再生を促すため、血行が改善され、毛乳頭に栄養が十分に届くようになります。さらに、間葉系幹細胞である毛乳頭細胞と他の毛包構成細胞との相互作用を強化する作用があり、毛包全体として良好な状態を恒常化します。
■VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor:血管内皮細胞増殖因子):
間葉系幹細胞である毛乳頭細胞から分泌されるタンパク質で、毛乳頭細胞の増殖と活性化を促し、これによりヘアサイクルの成長期を延長します。また、血管新生と血管拡張を促すため、血行が改善され、毛乳頭に栄養が十分に届くようになります(ミノキシジルもVEGFの分泌促進による作用メカニズムであり、この部分はPRPと類似している点です)。
■BMP-2(Bone Morphogenetic Protein-2:骨形成タンパク質):
毛包内に存在する幹細胞を活性化させ、幹細胞が分裂と増殖を開始するスイッチを押し、毛髪の成長を促進するタンパク質です(バルジ領域にある毛包幹細胞と間葉系幹細胞である毛乳頭細胞の相互作用を促進し、これにより毛包の再生を促します)。さらに毛包の炎症を抑える機能を有し、細胞の毛包の状態を良化します。
■Wnt5a:
細胞内シグナル伝達を活性化し、毛包の再生や発毛を促進するタンパク質です。また、細胞間相互作用を強化し、さらに毛包の炎症を抑える機能を有するため、細胞の生存や増殖を促進するとともに、毛包の状態を良化します。
■エクソソーム:
エクソソームとは、身体中のあらゆる細胞から産出されている小胞(しょうほう)です。この小胞は脂質の膜に包まれた袋状の構造をしており、その中には、DNAやmRNA、タンパク質等の生体物質が含まれており、細胞間のコミュニケーションや組織間の情報伝達に重要な役割を果たしていると考えられています。
■成長因子:
成長因子とは、身体内で特定の細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の総称で、「細胞再生因子」や「増殖因子」、「グロスファクター」とも呼ばれます。例えば、成長ホルモンの分泌に関与したり、怪我や疾病の治癒に関与したり、化粧品成分として肌本来の力を目覚めさせ、コンディションを整えたり等、多種多様な用途のある有用タンパク質です。