
院内調剤用試薬「PCP-FD®」とは|次世代PRP療法応用
■1. PRP療法とは
PRP療法は、「Platelet-Rich Plasma」の略称で、多血小板血漿療法とも呼ばれる再生医療の一種で、血小板と血漿中、場合によっては白血球に含まれる有効成分を利用して患部の自然治癒力を高め、細胞の修復や再生、患部の炎症を低減します。
血小板と白血球に含まれる主たる有効成分は、成長因子と呼ばれる細胞の増殖や分化を促す機能性タンパク質・機能性ペプチドです。そして、血漿中に含まれる有効成分は、多種多様な成長因子に加え、抗酸化物質やホルモン、ビタミン類、ミネラル類などです。
PRP療法は、スポーツ再生医療として欧米で広く普及しています。日本では、スポーツ再生医療はもちろん、変形性膝関節症や半月板損傷、テニス肘、五十肩などの関節症から、難治性潰瘍や褥瘡、重度火傷、薄毛治療といった皮膚症状、不妊治療などにも応用され、症例数が伸びています。
(1) PRP療法の一般的な適用疾患
- 関節の疾患(膝、肘、股関節、肩などの関節症状)【第2種再生医療等】
- 靭帯・腱・筋肉の損傷や炎症 【第3種再生医療等】
- 難治性潰瘍や褥瘡(床ずれ)【第3種再生医療等】
- 重度の火傷や日焼け 【第3種再生医療等】
- 発毛・薄毛の治療【第3種再生医療等】
- 皮膚や粘膜の老化による症状 【第3種再生医療等】
- 不妊治療 【第2種再生医療等】 etc.
(2) 成長因子とは
通常、再生医療といえば、1つの疾患に対して1種類の細胞を使用すると思われがちで、確かにそういう傾向があります。このような中、PRP療法が多種多様な疾患・疾病に応用されるのは、治療メカニズムが血球や血漿そのものに由来するのではなく、成長因子に由来するためです。
成長因子は、増殖因子やグロースファクターとも呼ばれる機能性タンパク質・機能性ペプチドで、例えば、細胞の活性化(細胞の増殖・分化の促進)、傷の修復(組織再生の促進)、成長ホルモンの分泌促進、代謝調整、老化の抑制など、身体内でマルチタスクをこなす重要な成分です。
(3) PRP療法の種類
このようにPRP療法は、その名称こそ「Platelet(血小板が)-Rich(豊富に含まれる) Plasma(血漿」となっていますが、治療メカニズムにおいて活躍するの血小板ではなく成長因子です。患部に血小板を投与し、この血小板が崩壊する過程で少しずつ放出する成長因子が、疾病に奏効するのです。
成長因子が少しずつ放出される低濃度薬液よりも、成長因子が豊富に含まれる高濃度薬液の方が治療効果に優れることは、非常に想像しやすい真実です。このため、患者さんから採血した血液から投与薬液を調整する過程で行う成長因子を高める工夫の仕方によって、PRP療法はいくつかの種類に分類されます。
(4) 代表的なPRP療法
・P-PRP(Pure PRP)とは
P-PRPとは、「Pure(純粋な)-PRP」の略称で、血小板と血漿のみを用いるシンプルなPRP療法です。本稿で紹介するPRPの中で成長因子濃度はミニマムですが、患部への作用がマイルドであるため、一部の医師から高い支持を得ています。
・LP-PRP(Leukocyte-Poor PRP)とは
LP-PRPとは、「Leukocyte(白血球)-Poor(少量の)-PRP」の略称で、血小板と血漿に加え、少量の白血球を含ませたPRP療法です。白血球を取り込むことで、白血球内に含まれる成長因子も利用することができ、高濃度の投与薬液を調製しやすくなります。
・LR-PRP(Leukocyte-Rich PRP)とは
LR-PRPは、「Leukocyte(白血球)-Rich(多量の)-PRP」の略称で、血小板と血漿に加え、積極的に白血球を含ませたPRP療法です。LP-PRPよりも高濃度の投与薬液を調製しやすいことから、2025年現在、日本国内で最も汎用的に提供されているPRP療法です。
■2. 次世代PRP療法とは
次世代PRP療法とは、P-PRPやLP-PRP、LR-RPPに対して段違いに投与薬液中の成長因子濃度を高濃度化したPRP療法で、「段違い」→「次元が違う」という視点から次世代PRP療法と呼ばれています。
投与薬液中の成長因子濃度を高めるため、さまざまな手法が用いられており、その中にはメリットとデメリットの両面を持つものもあります。そのため、従来のPRP療法のように明確な分類が難しいですが、本稿では特に代表的な2種類の次世代PRPを例として紹介します。
(1) 代表的な次世代PRP
・PFC(Platelet-Derived Factor Concentrate)とは
PFCとは、「Platelet(血小板)-Derived Factor(派生因子)-Concentrate(濃縮物)」の略称で、血小板や白血球から抽出した成長因子のみを用いる次世代PRPです。
PFCの調製方法は次の通りです。
患者さんから採血した血液から血小板と白血球のみ分離し、血漿は破棄します。そして血小板と白血球を生理的食塩水に再分散して破砕し、血球内の成長因子を生理的食塩水中に抽出します。最後に、抜け殻の血球残骸を除去して投与薬液を完成させます。
PFCの患者さん視点でのメリットは、投与後に血球成分が崩壊することによって放出される成長因子を治療に用いるのではなく、予め血球成分から成長因子を抽出しておくことで、投与薬液中のPDGF-BB(血小板由来成長因子)濃度を、LR-PRPを基準に4~5倍程度まで高められる点にあります。
PFCの医療機関にとってのメリットは、投与薬液から細胞を完全に除去することで、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療安全確保法)」の適用対象外となるため、医師法に基づく院内処方の特権と患者さんの同意のみで施術が可能となります(煩雑な申請手続きが不要となり、医療機関の負担が大幅に軽減されます)。
PFCのデメリットは、血漿を生理的食塩水に置き換えることで、血漿中に含まれる多様な成長因子や有効成分が活用できなくなる点です。血漿が持つ再生促進効果が大幅に制限されるため、治療の効果が十分に得られず、治療成績の低下として明確に表れる可能性があります。
・APS™(Autologous Protein Solution)とは
APS™は、「Autologous(自己由来の)-Protein(タンパク質)-Solution(溶液)」の略称で、ジンマー・バイオメット社が提供するPRP調製キットの商標です。APS™の特徴は、LR-PRPを基準に2倍程度の採血量を確保し、特殊な技法を用いて血漿を抜き出し、投与薬液中の血球成分濃度を約2倍量に高める点にあります。
APS™のメリットは、投与薬液中の血球成分を高濃度にすることで、患部に投与した際の成長因子の濃度をLR-PRPの約2~5倍に高められる点です。さらに、治療効果の持続時間が長くなるため、より安定した効果が期待できます。
APS™のデメリットは、投与薬液中の血漿の量がごくわずかであるため、血漿に含まれる再生促進成分の働きが大幅に制限されてしまう点です。そのため、治療対象となる疾患によっては、LR-PRPと比べて効果を実感しにくいという声が、患者や医師の双方から挙がっています。
院内調剤試薬「PCP-FD®」とは
PCP-FD®は、由風BIOメディカルが独自に開発した院内調剤用の試薬です。次世代PRPとしてだけでなく、海外で臨床研究が進められている血小板溶解液HPL(Human platelet lysate)の上位互換やエクソソームとしての応用も期待できる点が特徴です。
この試薬は、LR-PRPとPFCの長所を組み合わせており、血球成分由来の濃縮された成長因子に加え、血漿に含まれるさまざまな成長因子や有効成分を高濃度に含んでいます。特に、PCP-FD®に含まれるPDGF-BBの濃度は、LR-PRPの約15倍と非常に高いのが特徴です。
そのため、院内で適切に調剤することで、さまざまな疾患に対して高い治療効果を期待できるのが大きな強みです。さらに、調剤後の投与薬液には細胞が含まれないため、「再生医療安全確保法」の適用対象外となります。
これにより、医療機関の負担を軽減すると同時に、患者さんにとっても治療の選択肢が広がるというメリットがあります。
血小板溶解液HPLの再生医療応用についてはこちらの文献をご一読ください。
■1. PCP-FD®を院内調剤試薬とした治療実績
(1) 次世代PRPとしての応用例
・51歳 医師の事例
と右膝前十字靭帯損傷(断絶)の治療-300x295.png)
- 対象疾患:
- 右膝内側側副靭帯損傷(断絶)
- 右膝前十字靭帯損傷(断絶)
- APS™を日常的に投与している医師が手術不可避と判断した症例
- 治療方法:
- 関節外への注射投与を2回(間隔1週間)
- 関節内への注射投与を1回
- 治療成績:
- 図は、薬液投与前(左)と最終投与1か月後(右)のMRI画像。前十字靭帯は浮腫状であるものの十分に改善しており、内側側副靭帯は重度の断裂を示すwave signが大幅に改善した。理学的所見においても前十字靭帯の不安定性はなく、内側側副靭帯の不安定性も改善した。この結果、手術回避となった。
・33歳 看護師の事例
- 対象疾患:
- 左膝蓋腱炎(慢性)
- 右内側側副靱帯付着部炎(慢性)
- 治療方法:
- 関節外への注射投与を1回(左膝と右膝それぞれ)
- 治療成績:
- 投与後3日目から疼痛が和らぎ、4日目以降は痛みが消失した。
・49歳 経営者の事例

- 対象疾患:
- L4/5脊柱管狭窄症
- 図はMRI
- タリージェの服用、神経根ブロックにおいても改善が見られなかった事例
- 治療方法:
- 脊柱管硬膜外への注射投与を1回
- 治療成績:
- 臀部のしびれが体感で1/4、足甲のしびれが体感で1/2になった。
(2) 血小板溶解液HPLとしての応用事例
・37歳 看護師の事例
- 対象疾患:
- 親知らずの抜歯待ちで耐えがたい歯痛
- 酷い生理痛
- 治療方法:
- 経鼻投与(点鼻投与)を1日一回で1週間
- 治療成績:
- 歯痛、生理痛ともに消失。副次効果として化粧のノリが顕著に良くなったと実感。
・49歳 経営者の事例
- 対象疾患:
- 高血圧(上164下109)
- 治療方法:
- 経鼻投与(点鼻投与)を1日一回で1週間
- 治療成績:
- 高血圧の改善(上120下74)。副次効果として集中力の大幅向上を実感。
・37歳 経営者の事例
- 対象疾患:
- 慢性頭痛、睡眠障害
- 治療方法:
- 経鼻投与(点鼻投与)を1日一回で1週間
- 治療成績:
- 頭痛と睡眠の質が大幅改善。副次効果として肌艶・頭髪の質の向上を実感。
本稿の内容につきまして、お気軽にお問い合わせください。但し、真摯なご相談には誠実に対応いたしますが、興味本位やいたずら、嫌がらせ目的のお問い合わせには対応できませんので、ご理解のほどお願いいたします。
■2. 院内調剤試薬「PCP-FD®」の記事一覧
(1) 次世代PRP応用
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PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)療法の治療メカニズム
PRP療法は、血小板に含まれる成長因子を利用し、炎症を抑え組織の修復を促す再生医療で、FDAも効果を認めています。日本では整形外科や皮膚科で注目され、特に変形性膝関節症の治療に期待されています。PRPの成長因子が炎症を抑え、関節液の正常化や軟骨の修復を促進。実際に治療を受けた患者からは、痛みの軽減や生活の質向上が報告されています。特にPCP-FD®を次世代PRP用の院内調剤試薬として用いた場合、より高い治療効果を発揮します。 -
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)の発毛・薄毛治療
PRP療法は、血小板に含まれる成長因子を利用し、発毛や薄毛治療に応用される再生医療です。整形外科や皮膚科で用いられてきましたが、美容医療でも注目され、AGAやFAGA治療に活用されています。PRPは毛包を活性化し、発毛を促進するため、毛包が残る薄毛に効果的です。さらに、院内調剤試薬のPCP-FD®を用いた次世代PRPでは、より高い治療効果が期待できます。 -
【脊柱管狭窄症】原因と予防法を徹底解説!再生医療による治療法も
脊柱管狭窄症は、加齢や姿勢の悪化、運動不足などが原因で発症し、神経の圧迫による痛みやしびれを伴います。予防には正しい姿勢、適度な運動、体重管理が重要です。治療法として、従来の保存療法や手術に加え、再生医療が注目されています。侵襲でダウンタイムが少なく、症状改善が期待できます。 -
【腰部脊柱管狭窄症】ストレッチでは痺れも痛みも取れない理由と効果的な治療法とは?
腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管の狭窄による神経圧迫が原因で、ストレッチのみでは改善が難しい疾患です。効果的な治療には、薬物療法や体幹トレーニング、適度な運動が推奨されます。さらに、PCP-FD®を試薬として用いた次世代PRP療法が新たな選択肢として注目され、症状緩和や機能回復が期待されています。 -
【脊柱管狭窄症】手術が必要なケースと成功率・回復までの流れ
脊柱管狭窄症の手術は、保存療法で改善しない場合や歩行困難、排尿・排便障害が進行した際に検討されます。主な手術法には椎弓切除術、内視鏡手術、固定術、人工椎間板置換術があり、成功率は80〜90%と高いものの、長期のリハビリが重要です。術後の回復には適切な運動とケアが不可欠で、医師と相談しながら最適な治療を選択することが大切です。 -
【脊柱管狭窄症】手術の種類・成功率・再発率・ダウンタイム・後遺症・費用まで徹底解説
脊柱管狭窄症の手術は、症状が重い場合に検討され、術式によって 成功率・再発率・ダウンタイムが異なります。椎弓切除術や内視鏡手術は回復が早く、固定術は安定性が向上するが可動域が制限されます。手術費用は保険適用で20万〜80万円、自由診療では数百万のケースも。リハビリが重要で、専門医と相談しながら最適な治療法を選びましょう。
(2) 血小板溶解液HPL応用
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認知症・アルツハイマー病・パーキンソン病などの新たな治療法:血小板由来成分の可能性
PCP-FD®は、血小板由来成分を高濃度で含む院内調剤用試薬で、認知症、痴呆症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの治療法として期待されています。成長因子や抗酸化物質が神経保護、炎症抑制、血管新生を促し、疾患の進行を抑制。さらにシナプス機能維持や血流改善の効果により、予防法としても有望視されています。 -
将来展望|血小板由来成分を活用した脳卒中および外傷性脳損傷の治療法
血小板由来成分を活用した再生医療は、脳卒中や外傷性脳損傷の治療法として期待されている。特にPCP-FD®は、成長因子や抗酸化物質、細胞外小胞を高濃度に含む院内調剤用試薬であり、神経保護・修復・血管新生を促進に寄与する可能性があります。日本の独自規制の下、安全性を確保しながら臨床応用が進むことを期待しています。 -
パーキンソン病とは?原因やなりやすい性格、初期症状を解説
パーキンソン病はドーパミン神経細胞の減少による進行性の神経変性疾患で、几帳面で真面目な性格の人がなりやすいとされる。原因には遺伝的要因や環境因子が関与し、初期症状として手の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばりがある。再生医療を用いた治療法が注目されており、神経細胞の修復を促す可能性が期待される。根本治療を目指し、研究が進められている。 -
パーキンソン病とは?寿命や治療薬、治った人の事例、有名人について解説
パーキンソン病はドーパミン不足による運動障害を伴う神経性疾患であり、治療薬やDBSにより症状の改善が期待できる。寿命は適切な治療で一般の人と大差ありません。根治療法として再生医療も期待されています。現在、完治した人はいないが、マイケル・J・フォックスやモハメド・アリなどの有名人が闘病し、病気の認知向上に貢献しています。 -
血小板由来成分が神経性慢性疼痛、免疫力向上、集中力向上に与える影響
PCP-FD®は、HPLを高濃度に含む院内調剤試薬で、神経性慢性疼痛の緩和、免疫力向上、集中力向上に高い効果が期待されています。成長因子や抗炎症因子が、神経修復、炎症抑制、血管新生を促進し、疼痛の軽減や免疫バランスの調整、集中力の向上をサポートします。現在、再生医療の新たな治療アプローチとして社会実装が進んでいます。
(3) エクソソーム応用
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エクソソーム化粧品の選び方|再生医療の視点から見る有効成分とは?
エクソソーム化粧品は、再生医療を応用した最先端スキンケアとして注目されています。本稿では、エクソソームの働きや有効成分を解説し、おすすめ製品をランキングで紹介。選び方のポイントや安全性、自分に合ったエクソソーム化粧品を見極めるための情報を提供します。最新の美容トレンドを取り入れ、効果的なスキンケアを実践しましょう! -
エクソソーム療法の医療応用の安全性は?再生医療での効果とリスクを解説
エクソソーム療法は、再生医療における新たな医療技術として注目され、組織修復や抗炎症作用が期待されています。幹細胞由来エクソソームをはじめ神経損傷や心疾患への治療効果が研究され一定の成果を得ているものの、安全性やリスクの評価が不十分です。品質のばらつきや長期的な影響も不明であり、未承認治療特有のデメリットが懸念されます。 -
エクソソーム点滴とは?効果・安全性・副作用・メリット・デメリットを徹底解説!
エクソソーム点滴は、美容や健康維持を目的に使用されるが、効果や安全性に関する科学的根拠は十分でない。副作用としてアレルギー反応や免疫異常のリスクがあり、品質管理にもばらつきがある。肌の若返りや組織修復が期待できるメリットに対し、高額で長期的影響が不明確な点がデメリット。クリニックの信頼性を慎重に確認することが重要。 -
エクソソームで若返りは可能?効果のメカニズムとリスクを徹底解説
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■次世代PRP試薬「PCP-FD®」のお問い合わせ
- 製造 機関:由風BIOメディカル沖縄再生医療センター
- 施設 番号:FA7230002
- 施設管理者:博士(工学)中濵数理
- 住 所:沖縄県うるま市字州崎5-1
- 電話 番号:098-923-0037
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