PRP療法(多血小板血漿療法)|次世代PRP「PCP-FD」とは

PRP療法(多血小板血漿療法)|次世代PRP「PCP-FD」とは

PRP療法とは、「Platelet-Rich Plasma(血小板-豊富な-血漿)」の略称で、日本語で多血小板血漿療法とも呼ばれます。血小板とは、赤血球や白血球と並ぶ重要な血球成分で、主に出血を止める役割を担っています。血漿とは、血液のうち血球成分を除いた溶液で、タンパク質、脂質、ホルモン、ビタミンを含み、体の各部位に栄養を運び、老廃物を運び出す役割を担っています。

PRP療法とは、血小板や血漿由来の成長因子を利用して、身体の自然治癒力をサポートする再生医療として、ヨーロッパやアメリカでは頻繁に行われている治療法です。成長因子とは、身体内において、特定の細胞の増殖や分化(細胞が特定の役割を持つ細胞へと変化していくこと)を促進するタンパク質の総称で、グロースファクターや増殖因子、細胞増殖因子と呼ばれることもあります。

成長因子は、身体内で多種多様な役割を担っています。イメージしやすい具体例を挙げます。

  • 細胞の活性化に関わり、細胞の増殖や分化に関わります
  • 傷の修復に関わります
  • 成長ホルモンの分泌に関わります
  • 代謝の調節に関わります
  • 老化の抑制に関わります
  • 血行を促進します

PRP療法の治療メカニズムは、一般的な再生医療と異なり、「細胞に由来する治療メカニズム」ではなく「成長因子に由来する治療メカニズム」であるため、PRP療法は、様々な疾病の治癒に寄与します。例えば、従来、PRP療法は、半月板損傷やテニス肘などに対するスポーツ再生医療が有名でしたが、現在は、不妊治療や皮膚症状への適用、発毛など多様なエビデンスが見出されており、より幅広い症例への応用が期待されています。

なお、本項の次世代PRPとは、従来のPRP療法よりも成長因子濃度を高めたPRPや、医療機関視点での取り扱いのしやすさを改善したPRPを用いる再生医療を指します。

■PRP療法の適用症例

PRP療法は、血小板そのものの効果ではなく、血小板や血漿に含まれる成長因子に由来する治療メカニズムであることから、個別の細胞種に由来する治療メカニズムによる一般的な再生医療よりも多種多様な症例に適用することができます。PRP療法がしばしば用いられる疾病の具体例を挙げます。

■疾病の具体例
  • 膝、肘、股関節、肩等の関節症状(第2種再生医療等)
  • 靭帯、腱、筋肉の損傷や炎症(第3種再生医療等)
  • 難治性潰瘍や褥瘡(第3種再生医療等)
  • 重度火傷や重度日焼け(第3種再生医療等)
  • 発毛・薄毛(第3種再生医療等)
  • 粘膜を含む皮膚の老化にともなう症状(第3種再生医療等)
  • 不妊治療(第2種再生医療)etc.

日本国内で実施されるPRP療法は、潜在患者数が国内約3000万人ともいわれる変形性膝関節症への適用や、半月板損傷やテニス肘等のスポーツ再生医療としての適用、変形性股関節症や五十肩を含む変形性肩関節症のような整形外科領域の疾病にしばしば適用されます。

また、難治性潰瘍(糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、静脈うっ滞性潰瘍、膠原病・血管炎性潰瘍等の総称)や褥瘡(床ずれ)をはじめとする皮膚症状に対してのエビデンスに優れるため、皮膚科領域の疾病や形成外科領域の疾病、美容皮膚科領域の症例にもよく適用されます。

PRP療法の不妊治療への適用について意外に感じるかもしれません。しかし、卵巣(子宮の両側にある親指大の臓器)に直接PRPを注入することで、卵胞(卵子が入っている袋状の構造体)周辺の血管新生が促進され、卵巣機能(卵子の成熟と排卵・女性ホルモンの生成・妊娠や生理のコントロール等)が改善され、採卵数の増加や卵子(受精卵を作る細胞で、精子と出会い赤ちゃんの元になる)の質が向上すると考えられています。

■PRP療法の治療メカニズム

PRP療法の治療メカニズムは、主に、血小板由来成長因子(PDGF-aa, ab, bb)、形質転換形成因子(TGF-β1, β2)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)という4種類の成長因子の複雑な関係性によって成立しています(非常に複雑でわかり難いため、変形性膝関節症と発毛・薄毛治療に関する治療メカニズムは、別途に説明しています)。

■血小板由来成長因子(PDGF-aa, ab, bb)の役割

細胞の増殖を促し、血管形成を促進します。

上皮形成を促進します。上皮とは、身体の体表面や体腔(たいこう:身体内の体壁と内臓との間のすきま)器官などの表面を覆っている細胞層、それらに由来する腺です。例えば、皮膚の表皮や粘膜の表面の層、唾液腺や膵臓などの外分泌腺も上皮組織の一種です。

肉芽組織形成を促進します。肉芽組織とは、軟部組織の損傷が治癒する過程で発生する増殖力の高い結合組織で、毛細血管と線維芽細胞からできています。線維芽細胞とは、真皮に存在する結合組織の固有細胞で、身体内に揖傷が加わると揖傷部に遊走し、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生を始め、細胞と細胞外マトリックスの相互作用等を制御し、損傷治癒の過程で重要な働きをします。また、骨の細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、平滑筋細胞などへと分化することができる細胞です。

■形質転換形成因子(TGF-β1, β2)の役割

細胞外マトリックス形成を促進します。細胞外マトリックスとは、すべての組織や臓器に存在する非細胞性の構成成分で、細胞と細胞の間を満たし、生体組織を支持する役割を担っています(主成分であるコラーゲンです)。細胞にとって物理的な足場となるだけでなく、組織の形態形成や分化、恒常性の維持に寄与します。

骨細胞の形成を調整します。

■繊維芽細胞増殖因子(FGF)の役割

内皮細胞および繊維芽細胞の増殖を促進します。内皮細胞とは、血管の最内層を覆う細胞で、血液中や血管内への物質の調節や血管の健康状態(血管緊張性の調節・血管内血栓形成の防止・動脈硬化の予防等)維持に重要な役割を担っています。

血管形成を促進します。

■血管内皮成長因子(VEGF)の役割

血管形成を促進します。

■PRP療法の種類

PRP療法(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、医療機関毎に様々な名称で提供されていることがあります。これらの区別が非常にわかりにくいため、本項では、代表的なPRPと次世代PRPについて、原料となる細胞種や細胞加工の方法ごとに下記通り整理しています。

■P-PRP(Pure PRP)とは

「Pure(純粋な)-PRP」の略称で、血小板と血漿のみを用いるPRP療法です。

■LP-PRP(Leukocyte-Poor PRP)とは

「Leukocyte(白血球)-Poor(少量の)-PRP」の略称で、血小板と血漿に加え、少量の白血球を用いるPRP療法です。PRPに白血球を取り込むことで、白血球中に含有される成長因子をも治療に利用します。

■LR-PRP(Leukocyte-Richr PRP)とは

「Leukocyte(白血球)-Richr(多量の)-PRP」の略称で、血漿と血小板に加え、積極的に白血球を用いるPRP療法です。PRPに白血球を取り込むことで、白血球中に含有される成長因子をも治療に利用します。2024年現在、最も一般的に提供されているPRP療法です。

■PFC(Platelet-Derived Factor Concentrate)とは

「Platelet(血小板)-Derived Factor(派生因子)-Concentrate(濃縮物)」の略称で、血小板と白血球から抽出された成長因子のみを用いる次世代PRP療法です。先ず、血液から血小板と白血球を分取し、これを生理的食塩水中に分散させます。次に、分散させた血小板と白血球から成長因子を抽出し、抽出後の細胞残骸を除去して治療に用います。細胞や細胞残骸を含まないPFCは、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療安全確保法)」に該当しないため、再生医療提供計画の届出や許可が必須でなくなることから、医療機関視点での取り扱いのしやすさが改善されており、本項では次世代PRPに分類しています。

■APS™(Autologous Protein Solution)とは

「Autologous(自己由来の)-Protein(タンパク質)-Solution(溶液)」の略称で、APS™は、ジンマー・バイオメット社が提供するPRP調製キットの商標です。血小板と白血球、血漿を用いる点はLR-PRPと同様ですが、採血量をLR-PRPの約2倍量とし、これをLR-PRPと同体積程度まで濃縮(2倍濃縮)することにより、実行成長因子濃度を2~5倍程度に高めている点が特徴です。従来のPRP療法よりも成長因子濃度を高めたPRPであることから、本項ではAPS™を次世代PRPに分類しています。

■PRP療法および次世代PRPの比較

PRP療法と次世代PRPについて、その効果の違いや参考価格帯等を図表にまとめています(適用症例を膝関節症に仮定し、保険診療で提供されるヒアルロン酸の関節注射と比較する形でまとめています)。

次世代PRP「PCP-FD」とは

PCP-FDは、「Platelet(血小板)-Concentrate(濃縮液)-Plasma(血漿)-FD(フリーズドライ:凍結乾燥)の略称で、当社独自の次世代PRPです。特殊な細胞加工技術によって、血漿中に血小板と白血球に由来する成長因子を高濃度で抽出し、成長因子の血漿溶液から細胞残骸を取り除いて後に凍結乾燥して製造します(投与時は生理的食塩水に溶解させます)。

細胞や細胞残骸を含まないPCP-FDは、再生医療安全確保法に該当しないため、再生医療提供計画の届出や許可が必須でなくなります(届出や許可を得ることもできます)。凍結乾燥状態であるため、室温にて半年間保存できる点も含め、医療機関視点での取り扱いのしやすさが大幅に改善されています。従来の次世代PRP療法よりもさらに成長因子濃度を高めている点も特徴です。

また、関節注射においては、生理的食塩水に当社指定の医薬品グレード試薬を加えてから投与することで、患部でのスキャフォールド形成促進効果や有効成分保持効果を期待できます。なお、スキャフォールドとは、体内での再生誘導のための細胞の周辺環境の足場、細胞機能の活性化のための足場などを意味する学術用語です。

PCP-FDは、清浄度を高度に確保した細胞培養加工施設で製造され、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験を経て出荷されるため、安全性も十分に確保されています。

■PCP-FDとその他PRPの比較

LR-PRP、次世代PRP①(PFC)、次世代PRP②(LR-PRPの2倍濃縮PRP)と、PCP-FDの成長因子濃度を比較した検証データを紹介します。LR-PRPのPDGF-bb濃度を1として相対濃度を比較すると、PCP-FDでは15倍もの値を示していることがわかります。

その他、PCP-FDには、TGFやFGF、EGF(上皮成長因子)、HGF(ヘパトサイトグロースファクター)、IGF(インスリン様成長因子)、KGF(ケラチン細胞増殖因子)等の多種多様な成長因子が高濃度で含有されていることが検証されています。一方、LR-PRPでは、FGFとKGFが、PFCではHGFとIGF、KGFが、2倍濃縮PRPではKGFが検出されていません(data not shown)。

PCP-FDに細胞や細胞残骸が含まれないことの検証データを紹介します(PRP中に含まれる含有物を動的光散乱という方法でそのサイズとサイズ分布を測定している事例です)。LR-PRPは、血小板に相当する2~4μm付近に分布が観察されるのに対し、PCPではこの分布が観察されず、細胞や細胞残骸が十分に除去されていることがわかります。

PRP療法および次世代PRPについて、その効果の違いや参考価格帯等を図表にまとめています(適用症例を膝関節症に仮定し、保険診療で提供されるヒアルロン酸の関節注射と比較する形でまとめています)。

■PCP-FDに関するお問い合わせ

当社では、LR-PRP、PFC、PCP-FDを扱っています(LR-PRPの場合は、冷蔵状態、凍結状態、凍結乾燥状態の何れかでの出荷、PFCの場合は、冷蔵状態、凍結状態の何れかでの出荷となります)。PRP療法(多血小板療法)に関するお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」もしくは「098-923-0037」からお願いします。

また、沖縄県内外に関わらず、医療機関様に対しては医療技術としての照会対応を、患者様に対しては正看護師同席での医療相談をお受けしております。患者様に対しては、次世代PRPであるPCP-FDを提供可能な医療機関を沖縄県外に関わらず紹介することも可能です。

最後にPCP-FDは、PCP-FZ(凍結状態)として調製することで、自家血小板由来エクソソームとしてのご利用をご検討いただくことができます。自家血小板由来エクソソームに関するお問い合わせは、医療機関様もしくは医療機関相当機関様からのみ受け付けしてります(患者様におかれましては本件の医療相談等をお受けできず申し訳ございません)。

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