再生医療解説|ヒト血小板溶解液系の点鼻投与が首ヘルニアの症状改善に寄与する作用機序

再生医療解説|ヒト血小板溶解液系の点鼻投与が頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)の症状改善に寄与する作用機序

当社へ報告されている自由診療下の臨床所見「頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)の症状改善」を踏まえ、ヒト血小板溶解液の想定作用機序を、既存の学術知見に基づきに整理します。

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頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)の病態

頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)は、突出した髄核が神経根や脊髄を圧迫し、首や肩・腕の痛み、しびれ、筋力低下などを引き起こします。

神経根の「機械的な圧迫」に加えて、髄核由来の炎症物質(腫瘍壊死因子αなど)が神経根後根神経節に炎症と過敏化を起こし、痛みを長引かせることが知られています【文献9】【文献11】【文献12】【文献13】。

さらに、圧迫部の微小循環(細い血管の血流)が乱れてむくみが生じ、神経線維が傷みやすい状態になります【文献9】【文献10】。



ヒト血小板溶解液系の定義

本稿の「ヒト血小板溶解液(Human Platelet Lysate:HPL)系」とは、HPLを中心に、その中に含まれる細胞外小胞エクソソームを含む)や血小板由来微小粒子、上流素材に相当する多血小板血漿(Platelet‑Rich Plasma:PRP)までを一括して扱う総称として定義します

血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様成長因子‑1(IGF‑1)、脳由来神経栄養因子(BDNF)などの成長因子が含まれ、これらは治癒過程において重要な役割を担います【文献5】。

加えて、血小板由来の細胞外小胞miRNA(例:miR‑126)を運び、内皮細胞の遺伝子発現を調整して血管の安定化や新生を促します【文献6】【文献8】。

また、細胞外小胞にはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素が内包され得ることが示されており、酸化ストレスの低減に直接つながる可能性があります【文献15】【文献16】。

点鼻投与で届く先

点鼻投与は、嗅神経・三叉神経に沿う経路や鼻腔—髄液腔の連続性を活用して、血液脳関門の制約を相対的に避けながら中枢へ成分を届ける方法です【文献1】。

細胞外小胞を点鼻すると、脳内に広く分布し、短時間で神経細胞やミクログリアに取り込まれることがわかっています【文献4】。さらに、脊髄損傷モデルのラットやサルで、点鼻した小胞が頸髄を含む中枢に作用して機能回復を後押しする報告もあります【文献2】【文献3】。

これらの先行研究は、点鼻ルートで頸髄・神経根に連なる中枢神経系へ到達できることを示唆しています【文献1】【文献2】。



想定作用機序の全体像

頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)で問題になる事象を列挙します。

  1. 神経根後根神経節の炎症と過敏化
  2. 微小循環の乱れと酸化ストレス
  3. 脊髄後角のグリア反応と感作(痛みの増幅)

これらの事象に対して、ヒト血小板溶解液系の点鼻投与は多層で同時に働くと考えられます。因果のつながりが分かるよう順を追って説明します。

■1.神経根・後根神経節の炎症を下げる

髄核に含まれるTNF‑αやIL‑1βは、神経根後根神経節で炎症と過敏化を引き起こし、放散痛やしびれの原因になります【文献11】【文献12】【文献13】。

これに対し、ヒト血小板溶解液系の細胞外小胞miRNA(例:miR‑146a群)やタンパク質群を運び、IRAK1/TRAF6—NF‑κBといった炎症経路の過剰な働きを抑える方向に作用することが示されています【文献18】【文献19】。

その結果、神経根周囲の炎症性サイトカインの渦が弱まり、痛みの元信号が減少しやすくなります【文献18】【文献19】。

■2.微小循環の立て直しとむくみの軽減

神経根は髄液に浸されつつ、根動脈ネットワークから血流の供給を受けていますが、圧迫で血流が不安定になるとむくみが広がります【文献9】【文献10】。

これに対し、ヒト血小板溶解液系に豊富に含まれるmiR‑126は、内皮細胞の炎症性接着分子を下げ、血管の安定化と新生を促す作用があります【文献6】【文献8】。

こうして内皮保護が進むと、神経根の栄養と酸素の供給ムラが整い、むくみが引きやすくなります【文献6】【文献9】。

■3.酸化ストレスの抑制(抗酸化酵素の直接効果)

圧迫と炎症が続くと、神経根後根神経節では活性酸素(ROS)が増え、痛みの閾値を下げる方向に働きます【文献11】。

これに対し、細胞外小胞SODカタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素を運搬し、局所でROSを直接的に分解します【文献15】【文献16】。

この分解作用によって痛みの発生源が鎮火されると、微小循環の回復と炎症抑制が同時に達成され、好ましい相乗効果が生まれます【文献15】。

■4.脊髄後角のグリア反応と感作の鎮静

長引く末梢入力は脊髄後角のミクログリア・アストロサイトを活性化し、痛みを増幅します(中枢性感作)【文献19】。

これに対し、細胞外小胞は後角のグリアに取り込まれやすく、M1優位(炎症側)→M2優位(修復側)への偏りを是正することで、神経炎症と過敏化を下げる方向に働くことが多数の研究で示されています【文献19】【文献20】。

即ち、これらの先行研究は、点鼻ルートで投与した小胞が頸髄を含む中枢に届いて機能回復をサポートするという考察を支持しています【文献2】【文献3】。

■5.神経保護と修復(IGF‑1・BDNFなどの協調)

IGF‑1は軸索と髄鞘の保護・再生を助け、PDGFは髄鞘を作る前駆細胞(OPC)の増殖に関与します【文献5】。BDNFは用量・部位依存の注意が必要ですが、適切な文脈では神経回路の再構築や学習依存の可塑性を支えます【文献3】【文献5】。

これらの神経栄養の底上げと、上記1〜4の炎症・酸化ストレス・微小循環・感作の是正が重なると、痛みの閾値が上がる方向に回路が再構成されます【文献3】【文献5】。



作用の時間軸

臨床報告を鑑みるに、以下の順序で効果が積み重なっていくと考えるのが妥当です。

■1. 数時間〜数日

  1. 点鼻後、小胞は中枢に分布し、神経細胞やミクログリアに取り込まれます【文献4】。
  2. 抗酸化酵素と炎症調整miRNAの働きで、ROS低下と炎症沈静が先行し、痛みの元信号が弱まります【文献15】【文献18】。

この段階は、症状の「燃え広がり」を止める期間です。

■2. 数週

  1. miR‑126を軸に内皮保護—微小循環の整備が進み、むくみが引いて神経根の栄養状態が安定します【文献6】【文献8】【文献9】。
  2. 脊髄後角ではグリア反応が落ち着き、感作の解除が始まります【文献19】【文献20】。

この段階は、症状緩和に向けた「土台」を整える期間です。

■3. 数か月

  1. IGF‑1・PDGF・BDNFなどによる神経保護・回路再編が進み、再発しにくい状態へ向かいます【文献3】【文献5】。
  2. この段階は、組織再編の質を上げて定着させる期間です。

上記の各段階は独立ではなく、相互に補強し合います。初期の鎮火が速いほど、後の再編が効率よく進みます【文献6】【文献19】。

■4. 症状の変化

  1. まず夜間痛や放散痛のピークが過ぎ、頸部のこわばりが和らぎやすくなります(炎症・酸化ストレスの沈静)【文献11】【文献15】。

  2. ついで、しびれの持続時間が短くなり、長時間の同一姿勢での悪化が減ります(微小循環の整備)【文献9】。

  3. 最後に、握力や細かな手作業の持久が改善し、再発の起点が減ります(神経保護・回路再編)【文献3】【文献5】。



まとめ

ヒト血小板溶解液系の点鼻投与は、下記複数のテコを同時に動かし、頸椎椎間板ヘルニア(首ヘルニア)に伴う痛みの原因連鎖を上流から順に断ち切っていく作用機序であると想定されます。【文献5】【文献6】【文献15】【文献19】。

  1. 神経根後根神経節の炎症鎮静
  2. 微小循環の立て直し
  3. 抗酸化酵素によるROSの直接分解
  4. 脊髄後角のグリア反応の鎮静
  5. IGF‑1BDNFなどによる保護と再編

点鼻という到達性の高いルートと、血小板由来の多成分・多機能という特性の組み合わせが、臨床報告の広範での症状改善と整合します【文献1】【文献2】【文献3】。



専門用語一覧

  • ヒト血小板溶解液(HPL):血小板を溶かして得た液体で、成長因子や細胞外小胞などを含む総称。PRPや血小板小胞も本稿では一括して「ヒト血小板溶解液系」として扱います【文献5】。
  • 細胞外小胞(エクソソームを含む):直径30〜200nmほどの膜小胞。タンパク質やmiRNA、酵素を運び、受け手細胞の働きを変えます【文献15】。
  • miRNA(マイクロRNA):遺伝子の働きを細かく調整する小さなRNA。miR‑126は血管安定化、miR‑146aは炎症経路の鎮静に関与します【文献6】【文献18】。
  • 抗酸化酵素(SOD・カタラーゼ・グルタチオンペルオキシダーゼ):活性酸素を分解し、細胞を酸化ストレスから守る酵素群。細胞外小胞内に含まれ得ます【文献15】【文献16】。
  • 神経根/後根神経節(DRG):脊髄から出入りする神経の付け根と、感覚神経の細胞体が集まる節。ヘルニアではここが炎症・過敏化しやすくなります【文献11】【文献12】。
  • 中枢性感作:脊髄後角などで痛みを増幅する状態。グリアの炎症性変化が関与します【文献19】。
  • 微小循環:毛細血管レベルの血流。内皮細胞の状態が決め手になります【文献9】。
  • IGF‑1/BDNF:神経の生存・修復や回路の再編を支えるたんぱく質。用量・場面で作用が異なるため、回路の再編を支える文脈で理解します【文献3】【文献5】。
  • 点鼻投与の中枢到達:鼻腔から嗅神経・三叉神経経路や髄液への移行で脳・頸髄へ届く経路。細胞外小胞の到達が実験で示されています【文献1】【文献2】【文献4】。



参考文献一覧

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執筆者

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
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