「耳鳴りの9割は治る」は本当か―NHK『ためしてガッテン』で紹介された最新治療法と対策

「耳鳴りの9割は治る」は本当か――NHK『ためしてガッテン』で紹介された最新治療法と対策

著者は、NHK「ためしてガッテン」で紹介された医療情報を無条件に受け入れる立場ではありません。なぜなら、この番組はあくまで「生活情報バラエティ番組」であり、そこで伝えられる内容は「医療エンタメ」と位置づける方が自然だと考えるからです。さらに、放送を参考にして実際に試した方法で体調上の悩みが改善したことは一度もなく、その経験も理由の一つとなっています。

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同番組では耳鳴りに関する特集が二度放送されました。2015年3月4日の回では『補聴器による改善の可能性』が紹介され、2020年4月1日の回では『脳に働きかける自宅でできる新発想治療』が取り上げられました。その放送によって、「耳鳴りの9割は治る」という印象を視聴者に与えた面もあるかもしれません。

耳鳴りに悩む人にとっては、「もし本当にそれで治るなら苦労はしない」と思いつつも、つい期待を抱いてしまう内容に感じられるでしょう。では、番組で紹介された治し方は実際にどの程度適切なのでしょうか。本稿では番組を一方的に否定するのではなく、その内容を肯定的に捉えつつ、最新の知見も交えて解説し、耳鳴り改善に役立つ前向きな視点を提示することを目的としています。

耳鳴りの現状と「治らない」という従来の常識

まず、耳鳴りとは外部に音源がないのに音が聞こえる現象です。実際には何も鳴っていない静かな場所でも、本人には「キーン」や「ザー」といった音が聞こえてしまいます。また、高齢者を中心に非常に多くの人が耳鳴りに悩んでおり、日本では推計で数百万人が症状を抱えるとされています。

しかし長年、耳鳴りは原因不明効果的な治療法がないと考えられてきました。耳鼻咽喉科を受診しても「年を取ると誰でもなるのでうまく付き合うしかない」と説明されることが多く、有効な治療が提示されない状況が続いていたのです。そのため、患者はただ我慢するしかなく、耳鳴りによる精神的な負担も大きくなっていました。

また耳鳴り自体は命に関わる病気ではないため、従来は深刻に捉えられず研究も停滞しがちでした。その結果、医療の優先順位も低く、抜本的な対策が講じられないままだったのです。つまり、多くの人が「耳鳴りは治らないもの」と半ば諦め、日常生活の質の低下を受け入れていたのです。

■1. 耳鳴りとはどんな症状か

耳鳴りは、自分の耳や頭の中で音が鳴っているように感じる症状です。例えば、虫の鳴くような高い音や機械が動作しているような低い音が、断続的または持続的に聞こえることがあります。また、耳鳴りの感じ方や頻度は人それぞれで、一日中鳴る人もいれば、ときおり発生する程度の人もいます。

耳鳴りには大きく分けて2種類あり、自分にしか聞こえない主観的なものと、他人にも確認できる客観的なものがあります。しかし後者の客観的耳鳴は非常に稀であり、ほとんどの耳鳴りは本人にしか聞こえない主観的耳鳴です。

[1] 主観的耳鳴: 本人にしか感じない幻の音

  • 外部に音がないのに本人にだけ聞こえる音。耳鳴り患者のほとんどが経験する代表的なタイプ。
  • 原因は難聴やストレスなど多岐にわたり、音の高さや大きさも人によって様々。高音の「キーン」や低音の「ブーン」など様々な音が報告されます。

つまり、主観的耳鳴りは周囲には聞こえない「幻の音」であり、多くの場合、耳や脳の内部要因によって引き起こされます。なお、主観的耳鳴りは耳鳴り全体の大多数を占めています。

[2] 客観的耳鳴: 他人にも確認できる稀なケース

  • 耳鳴り音が実際に物理的な音として存在し、他人にも聴診器などで確認できるタイプ。
  • 血管の拍動や筋肉のけいれんによる音が原因で起こり、一部の耳の疾患で極めて稀にみられます。

なお、客観的耳鳴りはごく稀ですが、他人にも聞こえる場合は血管異常など特定の病気が背景にある可能性があります。そのため、客観的耳鳴りが疑われる場合には、専門医による精密検査で原因を調べることが重要です。

■2. 耳鳴り患者の数とその背景

現在、耳鳴りに悩む人は世界的にも非常に多く、国際的な調査では成人の約14%が耳鳴りを経験すると報告されています【文献2】。日本でも総人口の約10%が慢性的な耳鳴り症状を抱えると推計され、その数は1,000万人以上に上ります。

しかし、年齢だけが原因ではありません。実際には耳鳴り患者の約9割に何らかの難聴がみられ【文献3】、騒音曝露やストレスなどが引き金となって耳鳴りが発症・悪化することが分かっています。

[1] 有病率: 耳鳴りに悩む人の割合

  • 人口のおよそ1割前後が慢性的な耳鳴りに苦しんでいると推定されています。例えば欧州12か国の調査では成人の約14.7%が耳鳴りを経験すると報告されました【文献2】。
  • 日本でも総人口の約10%程度が耳鳴りの症状を抱えるとの推計があり、人数にすると約1,200万人にも上るとされています。

つまり、耳鳴りは決して珍しい症状ではなく、中高年を中心に非常に多くの人が悩んでいることがわかります。特に中高年層に多いことが特徴で、社会的にも看過できない問題です。

[2] 主な要因: 難聴、騒音、ストレスなど

  • 難聴(聴力低下):耳鳴り患者の約9割に難聴があり【文献3】、加齢や騒音曝露による聴力低下が耳鳴りの主要な要因です。
  • ストレス・疲労:精神的ストレスや過労が耳鳴りを悪化させることがあります。ストレスにより自律神経が乱れると耳鳴りの感じ方が強まり、悪循環に陥りやすくなります。
  • その他の要因:中耳炎など耳の病気、耳垢の詰まり、顎関節の問題、あるいは血圧の変動や薬剤の副作用など、さまざまな要因が耳鳴りを引き起こす場合があります。

つまり、耳鳴りの発症には複数の要因が関与しており、難聴を土台として生活習慣や健康状態が重なることで症状が現れたり悪化したりするのです。したがって、耳鳴りの予防や治療には、こうした複数の要因を総合的に考慮した対策が必要となります。

■3. 「治らない」とされてきた理由

多くの耳鳴り患者はこれまで、有効な治療法がないまま我慢を強いられてきました。例えば医師から「年齢のせいだから慣れるしかない」と告げられ、希望を失ってしまうケースも少なくありません。その結果、常に消えない耳鳴りに対する絶望感や不安感が募り、精神的な苦痛が増大していました。

また、「治らない」という思い込みは患者の心に大きな負担を与え、耳鳴りの音に対する恐怖や注目を強めることで症状をさらに悪化させる悪循環を招いていました。その結果、耳鳴りの苦痛はまさにますます増大していたのです。

[1] 医療現場での対応: 慣れるよう促されるのみ

  • 従来、耳鼻科を受診しても「年齢のせいだからうまく付き合うしかない」と説明されることが多く、有効な治療法は提供されませんでした。
  • 耳鳴りの原因が特定できない場合も多く、医師側も対症療法や経過観察にとどめることが一般的でした。

その結果、多くの患者は適切な治療や支援を得られず、ただ我慢するしかない状況が続いていたのです。

[2] 患者への影響: 希望を失い精神的負担に

  • 「治らない」と考えて耳鳴り自体を諦めてしまい、生活の質(QOL)の低下を受け入れる患者も少なくありませんでした。
  • 常に止まらない耳鳴りに対する絶望感や不安感から、不眠や抑うつ状態に陥るケースも見られました。

つまり、治療法がないという思い込みは患者の心理に深刻な影響を及ぼし、耳鳴りの苦痛を一層増大させていたのです。



耳鳴りがもたらす苦痛と生活への影響

耳鳴りは単なる耳の不快感にとどまらず、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼします。そのため、慢性的な耳鳴りに悩まされることで、本人の生活の質は大きく低下します。また、耳鳴りに長く悩まされ続けることで心身の疲弊も進みます。

例えば、耳鳴りの音が常に鳴っていると集中力が削がれ、仕事や家事に支障をきたします。また、就寝時に静かになると耳鳴りが一層気になり、不眠症状を引き起こすこともあります。

さらに、耳鳴りによるストレスや不安が蓄積すると、気分が落ち込み、うつ病の一因となる可能性も指摘されています【文献3】。つまり、耳鳴りは放置するとメンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼしかねないのです。

■1. 耳鳴りによるストレスと苦痛

四六時中鳴り続ける耳鳴りの音は、本人に大きなストレスと苦痛をもたらします。音から逃れられない状況が精神的負担となり、イライラ感や疲労感が積み重なってしまいます。

また、耳鳴りは静かな環境で特に目立つため、リラックスしたい場面でも休まらず、次第に精神的に追い詰められていきます。このような状態が長く続くと、心身の疲弊に拍車がかかります。

[1] 絶え間ない耳鳴りが引き起こす苦痛

  • 常に耳鳴りの音が鳴り続けることで、頭が休まらず強い苦痛を感じます。音から逃れられない状況がストレスとなり、イライラ感や疲労感を募らせます。
  • 耳鳴りが静かな環境で特に目立つため、リラックスしたい場面でも休まらず、精神的に追い詰められることがあります。

耳鳴りの音は一時的に止むことが少なく、常に頭の中で鳴り響くため、大きな苦痛とストレスを生みます。

[2] ストレスが症状を悪化させる悪循環

  • 耳鳴りによるストレスや不安が高まると、自律神経のバランスが乱れて耳鳴りの感じ方が強まり、症状がさらに悪化します。
  • 耳鳴りの悪化によって一層ストレスを感じるようになるため、ストレスと耳鳴りが互いに増幅し合う「負のループ」に陥りがちです。

ストレスと耳鳴りは密接に関連しており、ストレスが増すほど耳鳴りが悪化し、耳鳴りが悪化するとさらにストレスを感じるという悪循環が生じます。

■2. 集中力や睡眠への悪影響

耳鳴りは集中力を著しく低下させます。静かな環境で耳鳴りが気になると注意がそれてしまい、仕事や勉強に支障を来すことがあります。会話中も耳鳴りが気になると人の話に集中できず、コミュニケーションに影響が出ることもあります。

さらに、耳鳴りは睡眠にも大きな支障を及ぼします。夜、周囲が静かになると耳鳴りだけが際立って眠れなくなり、不眠に陥りがちです。睡眠不足が続くと日中の疲労感や倦怠感が増し、耳鳴りへの耐性も下がってしまいます。

[1] 集中力の低下と作業効率への支障

  • 静かなオフィスや自習中に耳鳴りが気になると、注意がそちらに奪われ作業に集中できなくなります。複数のことを同時に処理する能力も低下し、仕事や勉強の効率が落ちます。
  • 会議や会話中に耳鳴りが響くと、人の話に集中できず聞き漏らしが生じることがあります。その結果、コミュニケーションに支障を来す場合もあります。

耳鳴りによって集中力が削がれると、日常生活や仕事・学業におけるパフォーマンス低下は避けられません。

[2] 睡眠障害と蓄積する疲労

  • 耳鳴りの音が就寝時に気になって寝付けないことがあります。特に夜間の静けさの中では耳鳴りが一層際立ち、不眠症状を引き起こしやすくなります。
  • 睡眠不足が続くと日中の疲労感や倦怠感が増し、さらにストレス耐性が低下します。睡眠の質が悪化することで耳鳴りへの対処力も弱まり、悪循環に陥ります。

耳鳴りによる睡眠障害は翌日の体調や集中力にも影響を及ぼし、慢性的な疲労とストレスの蓄積を招きます。

■3. 不安・抑うつなどメンタルへの影響

耳鳴りが長期化すると、「この音は一生消えないのでは」という強い不安感に襲われます。耳鳴りに意識が集中しすぎて、他のことが手につかなくなる恐怖感を抱く人もいます。

さらに、耳鳴りによるストレスが続くことで気分が落ち込み、趣味を楽しめないなど抑うつ的な状態になることもあります。人付き合いや外出を避けるようになり、社会的に孤立してしまうケースも見られます。

[1] 不安感・恐怖感の増大

  • 耳鳴りが続くことで「この音は一生消えないのではないか」という強い不安感に襲われます。耳鳴りに意識が集中しすぎて、他のことが手につかなくなる恐怖感を抱く人もいます。
  • 「重大な病気の前触れではないか」と心配になり、常に落ち着かない状態が続くこともあります。こうした過度の不安は、日常生活の喜びや意欲を奪ってしまいます。

耳鳴りそのものへの不安や恐怖が大きくなると、精神的な余裕が失われ、生活全体の質が低下してしまいます。

[2] 抑うつ状態や社会的孤立のリスク

  • 耳鳴りによるストレスが長期化すると、気分の落ち込みや興味の喪失など抑うつ症状が現れることがあります。耳鳴り患者は健常者に比べうつ病を併発する割合が高いとも報告されています【文献3】。
  • 音の苦痛から人付き合いや外出を避けるようになり、社会的に孤立してしまう場合もあります。一人で悩みを抱え込むことで、精神的負担がさらに増大します。

耳鳴りはメンタルヘルスにも深刻な影響を及ぼし、適切な対処がされない場合、うつ状態や社会的孤立を招く恐れがあります。



解明された原因と耳鳴り治療の新たな展開

近年、耳鳴りのメカニズムに関する研究が飛躍的に進歩しました。その結果、耳鳴りの原因の多くが難聴と脳の過剰反応に起因することが明らかになったのです。

その研究成果を基に、新しい治療法も開発されています。補聴器を用いた「聴覚リハビリテーション」や脳の認知を変える認知行動療法など、耳鳴りに対する画期的なアプローチが登場しました。

つまり、耳鳴りはもはや「治らない症状」ではなく、適切な治療によって改善が期待できる時代になりました。実際、先駆的な治療を行う専門外来では約9割の患者に症状改善が見られたと報告されています【文献1】。

■1. 耳鳴りのメカニズム解明: 難聴と脳過敏の関与

耳鳴りの原因として、加齢や騒音による難聴が深く関与していることが分かっています。難聴によって本来聞こえるはずの音が脳に届かなくなると、脳は不足した音を補おうとして神経活動を過剰に高め、その結果、実際には無い音が聞こえてしまうのです。

この仮説は「耳鳴りは耳の疾患ではなく脳の過剰反応である」という新たな理解につながりました。耳鳴り患者の大半に難聴がある事実も、脳の反応仮説を裏付けています【文献3】。

[1] 難聴による脳の過剰反応が耳鳴りを発生

  • 加齢や騒音で生じた難聴により、本来聞こえるべき音の信号が脳に届かなくなります。すると脳は不足した音を補おうとして神経活動を過敏にし、実際にはない音を感じてしまいます。
  • この仮説は「耳鳴りは耳の病気ではなく脳の疾患である」という考え方で、近年の研究により支持されています。難聴のある患者ほど耳鳴りが起こりやすいという事実が、その証拠です【文献3】。

耳鳴りの主要因は難聴に伴う脳の異常興奮であり、音の欠損を埋めようとする脳の働きが「キーン」という幻の音を生み出していると考えられます。

[2] 耳鳴りは「脳の疾患」という新たな理解

  • 従来は原因不明とされた耳鳴りですが、「脳が聞こえにくくなった音域を補おうとする反応」であると捉えることで、治療の方向性が見えてきました。
  • 耳鳴りを耳そのものの問題ではなく、脳の認知・神経の問題として扱うことで、補聴器による聴覚刺激や認知行動療法による心理的アプローチなど、有効な対策が考案されています。

耳鳴りは脳の可塑性や認知機能と深く関係する現象であり、その解明が進んだことで具体的な治療戦略を立てることが可能になりました。

■2. 最新治療法: 補聴器リハビリと画期的アプローチ

NHKでも紹介された済生会宇都宮病院の「宇都宮方式聴覚リハビリテーション」は、補聴器を使って脳に十分な音刺激を与えることで耳鳴りを軽減させる画期的な治療法です【文献1】。難聴で聞こえなくなっていた音を補聴器で補うことで、脳の過剰反応を鎮め、時間とともに耳鳴りを感じにくくしていきます。

実際、この方法を15年以上にわたり実践した結果、約9割の患者で「耳鳴りの苦痛が軽くなった」という改善が報告されています【文献1】。この高い改善率により、宇都宮病院の耳鳴り専門外来は予約が1年以上待ちになるほど全国から注目を集めました。

[1] 補聴器による聴覚リハビリの効果

  • 補聴器で失われた聴力を補うことで、脳に音刺激が戻り、異常な神経興奮が次第に落ち着きます。その結果、耳鳴りの音が小さく感じられるようになります。
  • 一日中補聴器を装用して十分な音を脳に届ける必要がありますが、継続することで数ヶ月~1年ほどで耳鳴りの大幅な軽減が期待できます【文献1】。実際に、補聴器をつけた瞬間から「耳鳴りが軽くなった」と感じる患者もいます。

補聴器を用いたリハビリ治療は、耳鳴りの原因である難聴に直接対処する理にかなった方法です。その継続により脳の過敏な反応が正常化し、多くの患者で耳鳴りの改善が報告されています。

[2] 専門外来での実績が示す希望

  • 済生会宇都宮病院では、補聴器リハビリを中心とした耳鳴り専門外来で数多くの患者を治療してきました。15年間で約6000人が治療を受け、そのうち約9割で症状の改善が見られています【文献1】。
  • この成功により、「耳鳴りは治らない」という常識が覆されました。ただし、同病院の専門外来は予約待ちが約1年にもなっており、国内ではまだ限られた施設でしか受けられないのが現状です。

宇都宮方式の成果は耳鳴り患者に大きな希望を与え、「耳鳴りの9割は治る」というメッセージの根拠となりました。一方で、この治療を受けられる専門医・施設の不足は今後の課題と言えます。

■3. 心理的アプローチ: 認知行動療法とカウンセリング

耳鳴りに対する心理的アプローチとして、認知行動療法(CBT)が有効であることが示されています【文献3】。耳鳴りに対する考え方や反応の仕方を訓練によって変えていくこの療法は、欧米のガイドラインでも推奨されています。

具体的には、耳鳴りの音に対する過度な恐怖心や注意を和らげることを目指します。専門家の指導の下、耳鳴りへの否定的な認知を修正し、「音はあるが危険ではない」と理解することで不安を軽減します。教育的カウンセリングにより「耳鳴りは命に関わらない」という正しい知識を持つことも重要です。

[1] 認知行動療法(CBT)による認知の書き換え

  • 耳鳴りに対する否定的な考え(「一生このまま」「何も楽しめない」等)を徐々に建設的な思考に置き換えていきます。セラピストの指導の下、日記をつけて思考パターンを振り返り、歪んだ認知を修正していきます。
  • 「耳鳴りが聞こえても大丈夫」と自分に言い聞かせる練習を重ね、耳鳴りへの恐怖や注目を減らします。これにより、耳鳴りの音がしても過剰に意識しなくなり、日常生活で気になりにくくなります。

認知行動療法では、耳鳴りに対する認知と反応を変えることで「音はあるが気にしない」という状態を目指します。耳鳴りそのものを消せなくても、心の持ちようを変えることで苦痛を大きく軽減できるのです。

[2] 教育的カウンセリングで不安を軽減

  • 医師や専門家が耳鳴りのメカニズムや経過について丁寧に説明します。「耳鳴りは命に関わらない」「適切な治療で改善する」といった正しい情報を伝えることで、患者の過度な不安を取り除きます。
  • 耳鳴りへの誤った思い込み(「脳の病気で手遅れだ」等)を解消し、「怖がらなくてよい」という安心感を持ってもらうことが目的です。安心感が生まれると耳鳴りへの注意が和らぎ、結果として症状が軽減しやすくなります。

カウンセリングによって患者の不安や疑問に答えることで精神的負担を軽減し、その結果、耳鳴りへの過剰な意識が薄れて日常生活で気にならなくなることが期待できます。



自宅でできる耳鳴り改善のためのセルフケア

耳鳴りの治療は専門医の下で行うことが望ましいですが、日常生活でできるセルフケアも症状の緩和に役立ちます。適切なセルフケアを継続することで、耳鳴りへの対処力を高め、治療効果を促進することが期待できます。

そのため、静かな環境を避けて音を活用する工夫や、耳鳴りに対する理解を深めて不安を和らげることが重要です。また、ストレスを溜めない生活習慣も耳鳴り悪化の防止に大きな意味があります。

以下に、自宅で手軽に実践できる代表的な耳鳴り対策を3つ取り上げ、そのポイントを説明します。日々のセルフケアによって「耳鳴りと上手に付き合う」力を養い、症状の軽減を目指しましょう。

■1. 静寂を避け音で耳鳴りを和らげる

静かすぎる環境では耳鳴りの音ばかりが気になってしまいます。そのため、生活の中で適度に音を取り入れる工夫が有効です。周囲の音や音楽で耳鳴りを紛らわせることで、症状への意識を散らす効果が期待できます。

特に就寝時は完全な無音を避け、エアコンの微かな音や静かなBGMなどを流すと耳鳴りが気になりにくくなります。音による安心感が得られると、寝つきも良くなり睡眠不足の改善にもつながります。

[1] 周囲の音を活用して耳鳴りをマスキング

  • 静かな環境では耳鳴りが目立つため、生活の中で適度に音を流す工夫が有効です。例えば、就寝時にエアコンの送風音や静かな音楽をかけておくと、耳鳴りが相対的に気になりにくくなります。
  • ホワイトノイズ(雨音や川のせせらぎなど単調な音)を発生させる機器を用いる方法もあります。環境音で耳鳴りをマスキング(覆い隠す)することで、脳の注意を逸らし、症状を和らげます。

周囲の音を意識的に活用すれば、耳鳴りの音を感じにくくすることができます。ただし、音量は大きすぎず心地よい程度に保つことがポイントです。

[2] 良質な音環境作りで睡眠を改善

  • 寝室では時計の秒針音や換気扇の音など軽い環境音を残すようにします。完全な無音状態を避けることで、耳鳴りだけが際立つのを防ぎ、寝付きやすくなります。
  • 寝る前にリラックスできる音楽を小さな音で流すのも効果的です。心地よい音に意識を向けることで耳鳴りから注意を逸らし、安眠につなげます。

こうした工夫で睡眠時の耳鳴りによる苦痛を軽減し、睡眠不足による疲労悪化を防ぐことが期待できます。静けさを怖がらず、上手に環境音を取り入れましょう。

■2. 正しい知識で耳鳴りに向き合う

耳鳴りに対する正しい理解を持つことは、不安の軽減につながります。耳鳴りは不快な症状ではありますが、基本的に命に関わる危険なものではありません。将来重大な病気に発展する可能性もほとんどないため、過度に恐れる必要はないのです。

また、「耳鳴りは適切な治療で改善し得る」という事実も知っておきましょう。近年は効果的な治療法が登場し、多くの患者で症状が軽減しています。このような前向きな情報を知ることで、必要以上の絶望感を和らげることができます。

[1] 耳鳴りに関する正しい理解を持つ

  • 耳鳴りは不快ではありますが、基本的に命に関わる危険な症状ではありません。将来重篤な病気につながる可能性も極めて低いため、過度に恐れる必要はないと理解することが大切です。
  • 「耳鳴りは適切な治療で改善する」という事実も知っておきましょう。最新の治療法により多くの患者で症状が軽減していることを知れば、必要以上の絶望感を和らげることができます。

正しい知識を身につけることで、「耳鳴り=一生治らない」という思い込みを払拭できます。その結果、不安が軽減し、冷静に対処策を講じる余裕が生まれます。

[2] 耳鳴りに注意を向けすぎない工夫

  • 耳鳴りの音を常にチェックしたり、インターネットで症状を過度に調べたりすることは、かえって意識を耳鳴りに固定させてしまいます。情報収集は必要最低限に留め、普段はなるべく気にしないよう心がけましょう。
  • 耳鳴り以外のことに意識を向ける時間を増やします。趣味や仕事、家族との会話などに集中しているときには耳鳴りを忘れやすくなります。耳鳴りを生活の中心に置かない工夫が重要です。

他の活動に没頭する時間を意識的に作ることで、耳鳴りから注意を逸らす訓練になります。耳鳴り以外の世界に目を向ける習慣をつけましょう。

■3. ストレスを減らしリラックスする

ストレスを溜めない生活習慣は耳鳴りの悪化予防に有効です。日頃からリラックスできる時間を設け、心身の緊張をほぐすことで耳鳴りの感じ方を和らげる効果が期待できます。

適度な運動や趣味に打ち込むことも、耳鳴りによるストレス軽減につながります。体を動かしたり好きなことに没頭したりすることで気分転換となり、耳鳴りへの意識を逸らすことができます。

[1] リラクゼーション法で自律神経を整える

  • 深呼吸やストレッチなどの簡単なリラクゼーション法を日常に取り入れましょう。ゆっくり息を吸って吐く腹式呼吸を1日数回行うと、緊張が和らぎ自律神経のバランスが整います。
  • ぬるめ(約38〜40℃)のお湯にゆったり浸かる入浴も効果的です。体が温まりリラックスすることで交感神経の興奮が鎮まり、耳鳴りの感じ方が軽減しやすくなります。

リラクゼーションを習慣に取り入れることで、ストレスによる耳鳴り悪化を防ぐことができます。心身の緊張を解きほぐし、耳鳴りに対する過敏な反応を和らげる助けとなります。

[2] 適度な運動や趣味でストレス発散

  • 軽い有酸素運動(散歩やヨガなど)を生活に取り入れると、ストレス発散と睡眠改善に役立ちます。体を動かすことで気分転換になり、耳鳴りへの意識も一時的に薄れます。
  • 趣味や好きな活動に没頭する時間を作ることも大切です。映画鑑賞や読書、手芸など何でも構いません。何かに集中している間は耳鳴りを忘れやすくなるため、精神的な負担が軽減します。

適度な運動や趣味による気分転換は、耳鳴りによるストレスを軽くする効果があります。自分なりのリフレッシュ方法を見つけて継続することが、症状と上手に付き合うコツと言えるでしょう。



適切な治療に踏み出すために知っておくべきこと

耳鳴りの改善には、専門的な治療に踏み出すことが大切です。効果的な治療法が存在する現在、我慢し続けるのではなく一歩を踏み出すことで、つらい症状から解放される可能性が高まります。

そのためには、早めに耳鼻咽喉科を受診して正確な診断を受けることが重要です。難聴の程度に応じた補聴器の適合や、必要に応じて専門外来での治療も検討しましょう。

さらに、治療には数ヶ月以上の継続が必要な場合もありますが、諦めず前向きに取り組む姿勢が何より重要です。適切な治療と根気強い努力によって、耳鳴りは改善し「気にならない」状態にまで持っていくことができます。

■1. 耳鼻科専門医への相談が第一歩

耳鳴りが続く場合は、まず耳鼻咽喉科の専門医に相談することが改善への第一歩です。専門医の診察を受ければ、聴力検査などで難聴の有無や他の疾患の可能性を評価してもらえます。

また、必要に応じてCTやMRIなどの検査が行われ、耳鳴りの背後にある原因を詳しく調べてもらえます。専門医により適切な診断が下れば、それに基づく最適な治療方針を立てることができます。

[1] 正確な検査と診断を受ける

  • 耳鳴りの原因を調べるため、まずは耳鼻咽喉科で聴力検査や耳の診察を受けましょう。難聴の有無や程度を把握することで、その後の治療方針が明確になります。
  • まれに耳鳴りの裏に別の疾患(中耳炎、聴神経腫瘍など)が隠れていることもあります。専門医の診断を仰ぐことで、必要に応じた精密検査や適切な治療につなげることができます。

耳鳴りに悩んだら自己判断せず、まず専門医に相談することが重要です。正確な診断が、効果的な治療への第一歩となります。

[2] 補聴器や専門外来の活用を検討

  • 診断の結果、難聴が認められた場合は補聴器の使用を検討します。補聴器の適切なフィッティングは専門の耳鼻科医や認定補聴器技能者に依頼し、最適な設定で装用することが肝心です。
  • 近隣に耳鳴り専門外来や高度な聴覚リハビリを行う医療機関がある場合は、紹介状を書いてもらい受診してみましょう。最新治療を積極的に取り入れている施設では、より専門的なアプローチが受けられる可能性があります。

補聴器や専門外来の活用により、自分一人では対処しきれない耳鳴りにも適切な手立てが講じられます。専門的なサポートを受けることで、改善への道筋がより確かなものとなるでしょう。

■2. 早期の対処と継続が鍵

耳鳴りは、早期に対処を開始するほど改善しやすい傾向があります。症状が出始めた段階で適切な治療に取り組むことで、脳が耳鳴りに慣れて固定化してしまう前に症状を軽減できる可能性が高まります。

特に突発的に始まった耳鳴りや、突発性難聴を伴う耳鳴りは緊急の治療が必要です。このような場合は一刻も早く耳鼻科を受診し、薬物療法など適切な処置を受けることが大切です。

[1] 放置せず早めに対策を開始

  • 耳鳴りは放っておいて自然に消えるケースもありますが、長引く場合は早めに治療に着手する方が改善しやすい傾向があります。症状が出始めた初期の段階で対処することで、脳が耳鳴りに慣れて固定化してしまう前に改善に向かわせることが可能です。
  • 特に急に始まった耳鳴りや、突発性難聴を伴う耳鳴りは緊急の治療が必要です。こうした場合は一刻も早く耳鼻科を受診し、適切な薬物療法や処置を受けることが重要になります。

耳鳴りが気になり始めたら我慢せず、できるだけ早い段階で専門医のアドバイスを求めましょう。早期対処によって、耳鳴りが慢性化する前に軽減できる可能性が高まります。

[2] 根気強く治療を続けることの重要性

  • 耳鳴りの治療効果が現れるまでには時間がかかる場合があります。補聴器リハビリ認知行動療法では、数ヶ月から1年以上継続して取り組むことで徐々に症状が改善していくケースが多いです。
  • 途中で「やっぱり治らない」と投げ出さず、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。経過を記録し、小さな改善でも確認することでモチベーションを保ち、長期的な取り組みを支えます。

治療を根気強く続けることで、耳鳴りの感じ方は少しずつ変化していきます。焦らず継続する姿勢が、最終的に「耳鳴りが気にならない」状態への近道となるでしょう。

■3. 前向きな姿勢とサポートの活用

耳鳴りの改善には「良くなる」と信じて前向きに取り組む姿勢が欠かせません。多くの改善例が報告されている今、自分もきっと良くなるはずだという希望を持つことで、治療やセルフケアに積極的に臨む意欲が湧いてきます。

さらに、一人で抱え込まず周囲のサポートを得ることも重要です。家族や友人に悩みを打ち明けて理解を求めたり、必要に応じて専門のカウンセラーや患者会に相談したりすることで、孤独や不安が和らぎます。

[1] 改善を信じて前向きに取り組む

  • 「耳鳴りは良くなる」という希望を持って治療に臨むことが大切です。実際に多くの改善例が報告されているため、自分も良くなる可能性が高いと信じることで、積極的に治療やセルフケアに取り組む意欲がわきます。
  • 耳鳴りに支配されず、「必ず克服できる」という前向きなマインドセットを維持しましょう。ネガティブな感情にとらわれすぎないことで、ストレスが軽減し、治療の効果も出やすくなります。

前向きな姿勢で治療に臨むことは、脳の適応力を高める意味でも重要です。希望を持ち続けることで、耳鳴りに対する心の負担が軽くなり、結果として症状の改善につながりやすくなります。

[2] 家族や専門家のサポートを得る

  • 耳鳴りの苦しさは一人で抱え込まず、家族や友人に理解と協力を求めましょう。身近な人に話を聞いてもらうだけでも精神的な負担が軽減しますし、周囲の理解があると治療にも専念しやすくなります。
  • 必要に応じてカウンセラーや患者支援団体のサポートを活用することも有用です。耳鳴りの悩みを共有できる場に参加すると、自分だけではないと安心でき、克服に向けた情報交換や励まし合いが得られます。

周囲のサポートを得ることで、耳鳴りに対する孤独感や不安感は大きく和らぎます。専門家や同じ悩みを持つ人々との繋がりを持ちながら進めることで、より心強く治療に取り組むことができるでしょう。



まとめ

耳鳴りは非常に多くの人が抱える症状であり、従来は「治らない」と考えられてきました。しかし、近年の研究によって難聴と脳の過剰反応という原因が解明され、適切な治療を行えば改善が可能なことが明らかになっています。

実際、補聴器を用いた聴覚リハビリテーションなど新しい治療法により、多くの患者が耳鳴りの軽減を実感しています。かつては成す術がなく苦しむしかなかった耳鳴りですが、現在では専門的な治療を受けることで「耳鳴りが気にならない」状態を目指せる時代となりました。

もっとも、治療の目標は耳鳴りの完全消失(完治)ではなく、日常生活で支障がない程度まで症状を和らげることにあります。耳鳴り自体が残っていても、本人がそれを意識せず快適に過ごせるようになれば、大きなQOL向上と言えるでしょう。

そのため、医療機関での専門治療に加え、日常生活でのセルフケアや前向きな姿勢も不可欠です。補聴器や認知行動療法によるアプローチに、環境音の活用やストレス管理といった対策を組み合わせることで、耳鳴りへの総合的な対処が可能になります。

「耳鳴りの9割は治る」という言葉は決して誇張ではなく、適切な手段を取れば大半の患者で症状が改善することを意味しています。諦めずに専門家の助けと自身の工夫を続けることで、耳鳴りに悩まない日常を取り戻せる可能性が十分にあるのです。



専門用語一覧

  • 耳鳴り:外に音がないのに「音が聞こえる」と感じる症状。虫の声や機械音など様々な音として自分の耳や頭の中で鳴り響く。原因は難聴やストレスなど多岐にわたる。
  • 難聴:聴力が低下し音が聞こえにくくなる状態。加齢(老人性難聴)や大音量曝露、耳の疾患などが主な原因。耳鳴り患者の大半に難聴が見られる。
  • 補聴器リハビリテーション:補聴器を用いて難聴を補い、脳に十分な音刺激を与えることで耳鳴りの改善を図る治療法。宇都宮病院の新田清一医師が提唱し、多くの患者で高い改善効果を挙げている。
  • 認知行動療法(CBT):思考パターンと行動を修正する心理療法。耳鳴りに対する否定的な認知を変えることで不安やストレスを軽減し、症状を気にしないよう訓練する治療法。
  • マスキング:マスク(覆い隠すの意)から派生した用語。耳鳴りの音を他の環境音やホワイトノイズで隠し、相対的に感じにくくする対処法。



参考文献一覧

  1. Suzuki N, Shinden S, Oishi N, et al. Effectiveness of hearing aids in treating patients with chronic tinnitus with average hearing levels of <30 dBHL and no inconvenience due to hearing loss. Acta Otolaryngol. 2021;141:773–779.
  2. Jarach CM, Lugo A, Scala M, et al. Global prevalence and incidence of tinnitus: a systematic review and meta-analysis. JAMA Neurol. 2022;79:888–900.
  3. Langguth B, Kreuzer PM, Kleinjung T, et al. Tinnitus: causes and clinical management. Lancet Neurol. 2013;12:920–930.



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執筆者

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
  • 特定非営利活動法人日本免疫学会:正会員
  • 日本バイオマテリアル学会:正会員
  • 公益社団法人高分子学会:正会員
  • X認証アカウント:@kazu197508

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