耳鳴りで「キーン」という高音が鳴る原因と対処法を詳しく解説

耳鳴りで「キーン」という高音が鳴る原因と対処法を詳しく解説

耳鳴りとは、実際には音がしていないにもかかわらず自分にだけ「音」が聞こえる現象を指します。例えば静かな場所で突然「キーン」という高い音が頭の中に響くことがあり、このような耳鳴りに悩む人は決して少なくありません。しかし、耳鳴りは周囲から理解されにくい症状であるため、本人にとって大きな不安やストレスの種となり得ます。

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実際、耳鳴りは高齢者や大音量に晒された人々に多く見られ、人口の約10〜15%が何らかの耳鳴りを経験すると報告されています【文献1】。一方で、そのうち日常生活に支障を来すほど深刻な耳鳴りに悩む人は全体の1〜2%程度に限られるとされ【文献1】、命に関わる重大な病気のサインであることは稀です。しかし、慢性的な耳鳴りが続く場合には、睡眠障害や注意力低下など生活の質(QOL)の低下を招くことがあり、軽視はできません。

そのため、耳鳴りがなぜ生じるのかという原因を正しく理解し、適切に対処することが重要です。特に「キーン」という高音の耳鳴りは、耳鳴りの中でもよく訴えられるタイプであり、その背後には耳や神経のさまざまな要因が関与しています。本記事では、耳鳴りの仕組みや代表的な原因、そして症状を和らげるための治療法対処策について、最新の研究知見を基に解説します。

耳鳴りとは何か?症状と特徴

耳鳴りは、医学的には「他に音源がないのに音を感じる知覚現象」と定義され、音の種類や感じ方は人によってさまざまです。その音はしばしば「キーン」という高音や「ジー」という虫の羽音のような音などで表現され、片耳または両耳、あるいは頭内で聞こえることもあります。また、音が常に鳴り続ける場合もあれば、断続的に生じる場合もあり、その感じ方には個人差があります。

しかし、耳鳴りの大半は患者本人にしか聞こえない主観的な症状であり、外見上は分かりにくいものです。そのため周囲の人には想像しにくく、理解を得られないことも少なくありません。また耳鳴りは病気というより症状の一つであり、何らかの基礎疾患や要因によって引き起こされている可能性があります。このように、耳鳴りは一見地味な症状ながら、背景には複雑な原因が潜んでいることが特徴です。

耳鳴りの音質にもいくつかのパターンがあります。特に高音域の「キーン」という金属音に近い音は、内耳の高周波数領域の聴力低下と関連していると考えられています。一方で、低音域の「ブーン」という唸るような音は、中耳や耳管の状態、血流の乱れなどが関与するケースもあります。このように耳鳴りの音の高さや性質によって、ある程度その原因や発生部位を推測できることも知られています。

■1. 耳鳴りの主な症状と基本特徴

耳鳴りに共通する基本的な特徴として、「外部に音源が存在しないのに音が聞こえる」という点が挙げられます。その音は患者によって様々ですが、高音の電子音のような「キーン」や低音の「ブーン」といった表現が典型的です。また、耳鳴りは大半が自分にしか聞こえない主観的症状であり、他人には認識できません。そのため、本人にとっては確かに聞こえているにもかかわらず、周囲からは理解されにくいことがしばしばあります。

さらに耳鳴りは、その時々で強さや頻度が変動する可能性があります。例えば疲労時や静寂な環境で耳鳴りが強く感じられ、逆に気が紛れている時や騒がしい場所では目立たなくなることがあります。そのため「普段は気にならない程度だが、夜寝る前になると耳鳴りが気になる」といった訴えもよく聞かれます。つまり、耳鳴りの感じ方は精神的・環境的要因にも影響を受けやすいという特徴があります。

[1] 耳鳴りの基本的特徴

耳鳴りに関する典型的な特徴を以下にまとめます。これらはいずれも耳鳴り患者に広く共通して見られる要素であり、症状の理解に役立ちます。例えば、以下の特徴は耳鳴りがどのように知覚されるかを端的に示しており、症状評価の際の指標となります。

  • 幻聴様の音感:実際には存在しない音が「鳴っている」ように感じる。
  • 主観性:ほとんどの耳鳴りは本人だけに聞こえ、他人には検知できない。
  • 音の多様性:高音の金属音、低音の唸り音、虫の羽音など表現される音質は様々。
  • 継続時間の差異:常に鳴り続ける場合もあれば、一時的に治まりまた再発する場合もある。

以上のように、耳鳴りは音の性質や現れ方に個人差が大きい症状です。特に主観的な症状であるため客観的な評価が難しく、治療においては患者自身の感じ方や表現を丁寧に聞き取ることが重要になります。耳鳴りの種類や持続時間の違いは、その原因や重症度を考える上でも手掛かりとなり得るため、医療者はこれらの特徴を総合的に判断して診療に当たります。

[2] 耳鳴りの具体的な音の例

患者が訴える耳鳴りの音は多種多様ですが、とりわけ頻繁に報告される典型的な音のパターンがあります。耳鳴りの音の種類は、しばしばその原因や部位を推測する手がかりにもなります。以下にその例を挙げます。

  • 高音の金属音:「キーン」「ピー」という電子音のような高い音。
  • 低音の唸り音:「ブーン」「ゴー」というこもった重低音。
  • 羽音・蝉の声:「ジー」「ミーン」という虫や蝉が鳴いているような音。
  • 脈拍に同期する音:「ドクンドクン」という心拍に一致した音(拍動性耳鳴り)。

このように表現される耳鳴りの音は多彩ですが、特に「キーン」という高音は高齢者や騒音曝露者に多く、内耳の高周波数領域の障害に起因する場合が多いとされています。一方、脈拍に同期するタイプの音は血管の拍動や筋肉の痙攣による客観的な耳鳴りの可能性があり、この場合は耳鼻科での精密検査が推奨されます。

■2. 主観的耳鳴りと客観的耳鳴り

耳鳴りは大きく分けて、本人にしか聞こえない「主観的(自覚的)耳鳴り」と、まれに他人にも音として確認できる「客観的(他覚的)耳鳴り」に分類されます。前者(主観的耳鳴り)が症例の大部分を占め、後者(客観的耳鳴り)は非常に稀です。それぞれ原因や治療のアプローチが異なるため、この分類は臨床上重要になります。

一般的な「キーン」という耳鳴りは主観的耳鳴りに分類され、これは耳や神経系の内部信号の異常によって生じます。一方、心臓の鼓動に連動して「ザーザー」や「ドクドク」と響く拍動性の耳鳴りは客観的耳鳴りの典型例であり、血管の異常や筋肉の痙攣など物理的な音源が体内に存在する場合に起こります。

[1] 主観的耳鳴り

耳鳴り患者のほとんどは主観的耳鳴りに該当します。このタイプでは外部には一切音が出ていないにもかかわらず、本人だけが異常な音を感じるのが特徴です。主観的耳鳴りは内耳から脳に至る聴覚経路の異常興奮によって起こると考えられ、難聴に伴って生じるケースが多く見られます。

  • 原因の多様性:加齢や騒音暴露による感音難聴突発性難聴メニエール病など内耳の障害が主な要因。
  • 診断の困難さ:客観的な測定手段がなく、症状の評価や原因特定が難しい。

しかし、主観的耳鳴りは根本的な原因解明が難しい場合が多く、症状を完全に消す有効な治療法も確立されていません。そのため、主に対症療法や適応を促す治療が中心となります。つまり、患者は耳鳴りと共存しながら生活の質を維持する方法を模索する必要があります。

[2] 客観的耳鳴り

客観的耳鳴りは全体のごく一部に過ぎません。このタイプでは実際に身体内部で音が発生しており、場合によっては他人にも聴診器などを用いて確認できることがあります。拍動性の耳鳴りが代表例で、心拍に合わせた音が聞こえる場合には血管の奇形や動脈硬化による血流雑音が原因の可能性があります。

  • 血管性の耳鳴り:高血圧や動脈硬化、血管腫瘍などにより血流が乱れ、「ザーッ」という音として聞こえる。
  • 筋・骨格系の異常:顎関節症や首の筋緊張などに伴う耳鳴り。顎を動かすと「キシキシ」音がする、首を圧迫すると音が変わる等の特徴がみられる。

客観的耳鳴りは原因となる身体疾患の治療によって症状が改善する可能性があります。一方、患者の大多数を占める主観的耳鳴りでは明確な治療法が存在しないことが多く、症状と共存しながら生活の質を維持するための対応策が重要になります。

■3. 耳鳴りの種類と分類

さらに、耳鳴りはその音の性質や発生メカニズムによってさらに細かく分類することができます。音の高さ(高音域か低音域か)、一側性か両側性か、持続的か間欠的かなど、多角的な視点で症状を捉えることが重要です。

例えば、高音域の耳鳴りは加齢や騒音曝露による内耳の有毛細胞損傷と関連することが多く、片耳または両耳で起こりやすい傾向があります。一方、低音域の耳鳴りは耳管機能の異常やメニエール病などの内耳疾患で見られることがあり、耳閉感(耳が詰まった感じ)を伴うケースもあります。また、片耳だけに生じる耳鳴りは聴神経腫瘍など片側の耳の問題を示唆する場合があり、両耳で生じる場合は全身的な要因や加齢が背景にあることも少なくありません。

耳鳴りの継続期間も診断の手がかりになります。発症から6ヶ月未満のものは「急性耳鳴り」、6ヶ月以上止まらない耳鳴りは「慢性耳鳴り」と分類されます【文献2】。急性耳鳴りの中には時間経過とともに自然に軽快するものもありますが、慢性化した耳鳴りは脳内で固定化された神経回路の異常活動が関与すると考えられ、長期にわたり症状が持続する傾向があります。

  • 高音域の耳鳴り:高周波数の「キーン」「ピー」という音が中心。
  • 低音域の耳鳴り:低周波数の「ブーン」「ゴー」という音が中心。
  • 片耳性の耳鳴り:片側の耳だけに症状が現れる耳鳴り。
  • 両耳性の耳鳴り:両方の耳に同時に生じる耳鳴り。
  • 急性耳鳴り:発症後6ヶ月未満の比較的新しい耳鳴り。
  • 慢性耳鳴り:6ヶ月以上持続している慢性的な耳鳴り。

このような分類によって耳鳴りの特徴を整理することで、原因の推定や適切な対処方針の検討に役立ちます。例えば、高音域で両耳に生じる慢性耳鳴りであれば加齢性難聴が疑われ、一方、片耳だけの急性の耳鳴りであれば突発性難聴や外リンパ瘻などの可能性を考慮する必要があります。耳鳴りの性質を詳細に分類して把握することは、診断と治療の第一歩となるのです。



耳鳴りの原因とメカニズム

耳鳴りは症状として現れる裏に、多種多様な原因が存在します。耳鳴りそのものは病名ではなく何らかの異常のサインであり、人によって引き金となる要因は異なります。特に、耳や聴覚系の異常が耳鳴りを引き起こす代表的な原因ですが、それ以外にも血液循環の問題や生活習慣、ストレスなど様々な要因が絡み合って症状が現れる場合があります。

中でも最も一般的な原因は、内耳にある有毛細胞の損傷による難聴です。例えば加齢による聴力低下(老人性難聴)や、大音量の音に晒されることで起こる騒音性難聴では、耳の奥の有毛細胞が減少・変性し、その結果として耳鳴りが生じます【文献3】。その他にも、突発性難聴メニエール病といった内耳疾患では急激な聴力低下と共に耳鳴りが発生することが知られています。これら耳の異常に起因する耳鳴りは、高音域の「キーン」という音として感じられることが多い傾向があります。

一方で、耳以外の要因によって耳鳴りが誘発・増悪するケースもあります。例えば高血圧や動脈硬化による血流の乱れが原因で耳鳴りが起こる場合や、顎関節や首の筋肉の緊張が関連する耳鳴りも報告されています。また、特定の薬剤(アスピリン大量投与や一部の抗生物質など)の副作用として耳鳴りが出現することがあり、過度のストレスや疲労がきっかけで耳鳴りが始まる例も少なくありません。つまり、耳鳴りの背後には耳そのものの疾患だけでなく、全身状態や生活上の要因が影響している場合があるのです。

■1. 耳鳴りを引き起こす耳の異常

耳鳴りの原因としてまず注目されるのは、耳自体の器質的な異常です。特に内耳の感音器である有毛細胞へのダメージは、耳鳴り発生の主要なメカニズムと考えられています。また中耳や外耳の問題によって間接的に耳鳴りが生じるケースもあります。耳の中のどの部位に異常があるかによって、耳鳴りの音質や伴う症状(難聴の有無、耳の詰まり感など)に違いが現れます。

内耳の障害による耳鳴りは高音域の鋭い響きとして感じられることが多く、中耳や外耳の問題による耳鳴りは低音域のこもった音や耳閉感を伴うことがしばしばあります。以下では、内耳由来の耳鳴りと中耳・外耳由来の耳鳴りに分けて主な原因を見ていきます。

[1] 内耳の障害と耳鳴り

内耳の有毛細胞が損傷・脱落すると、脳に送られる聴覚信号が不足し、その埋め合わせとして異常な神経活動が起こるため耳鳴りが生じると考えられます。内耳障害による耳鳴りは感音難聴を伴うことが多く、難聴が高度になるほど強い耳鳴りに悩まされる傾向があります。

  • 加齢性難聴:加齢により蝸牛の有毛細胞が徐々に減少し、高音域から聴力が低下する難聴。左右両耳に生じることが多く、「キーン」という高音の耳鳴りを伴いやすい。
  • 騒音性難聴:大きな音への曝露(爆発音、騒音作業、音楽コンサートなど)によって内耳が損傷されて起こる難聴。高音域の聴力低下とともに高音の耳鳴りが生じる。ヘッドホンの大音量使用も原因となる。
  • 突発性難聴:ある日突然に片耳の感音難聴が発症する原因不明の疾患。多くの場合、耳鳴り(高音・ザーという音)や耳の閉塞感、めまいを伴う。治療が遅れると聴力の回復が困難になるため早期受診が重要。
  • メニエール病:内耳のリンパ液増加による発作性のめまいと難聴の病気。発作の前後に低音の耳鳴り(「ボー」という音)や耳閉感が出現する。難聴と耳鳴りはめまい発作と連動して悪化・軽快を繰り返す。

内耳由来の耳鳴りは、上記のように聴力低下を伴っていることが特徴です。そのため、治療においては難聴自体への対処(薬物治療や補聴器装用など)が耳鳴り軽減につながる場合があります。また突発性難聴メニエール病では早期の専門治療が予後を左右するため、耳鳴りと共に明らかな聴力低下がある場合は速やかな受診が推奨されます。

[2] 中耳・外耳の問題と耳鳴り

音を伝える中耳や、音を外部から導く外耳のトラブルも耳鳴りの原因となり得ます。これらの部位の異常では主に伝音難聴(音の伝わりの障害)が生じ、その結果として耳鳴りが二次的に発生することがあります。中耳・外耳由来の耳鳴りは低音域のゴーという音や耳閉感を伴うことが多い点が特徴です。

  • 中耳炎・耳管機能不全:中耳に液体が溜まる滲出性中耳炎や耳管の開閉異常により、耳が詰まった感じとともに低音の耳鳴りが生じる。嚥下やあくびで症状が変化することがある。
  • 耳硬化症:中耳の骨(アブミ骨)が固着する病気で、伝音難聴とともに耳鳴りを呈する。若年~中年層に発症しやすく、進行すると手術が検討される。
  • 外耳道閉塞:耳垢栓塞(耳あかの詰まり)や外耳道の腫瘍によって外耳道が塞がると、自分の声や体内の音がこもって聞こえ、耳鳴りやこもった雑音を感じる。原因の除去で症状は改善する。
  • 鼓膜穿孔:鼓膜が破れると音の伝達効率が落ち、シーッという雑音や風が抜けるような耳鳴りを自覚する。原因によっては自然治癒せず手術が必要。

中耳・外耳に起因する耳鳴りは、原因となる病変を治療・改善することで症状の緩和が期待できます。例えば耳垢によるものであれば除去により耳鳴りは消失し、中耳炎であれば薬物治療で液体を除去することで症状が軽減します。ただし、長期間放置された中耳・外耳の疾患では耳鳴りが慢性化することもあるため、早めの対応が望ましいでしょう。

■2. 耳鳴りを引き起こす全身要因

耳や聴覚系に明らかな異常がない場合でも、全身的な要因によって耳鳴りがもたらされることがあります。身体の他の部分の問題が耳鳴りとして現れるケースでは、一見耳と無関係な要素が関与しているため原因の特定が難しいこともあります。しかし、全身状態の改善や基礎疾患の治療によって耳鳴りが軽減・消失する場合もあり、注意が必要です。

代表的な全身要因としては、血液循環系の異常と筋骨格系の問題が挙げられます。高血圧や動脈硬化、血管腫瘍などにより血管内の血流が乱れると、その拍動が耳鳴り(特に脈打つような音)として認識されることがあります。また、顎関節症や首・肩の凝りによって生じる神経筋の緊張は、聴覚中枢に異常信号を送り込み耳鳴りを誘発する可能性があります。さらに、特定の薬剤や日常的なストレスも耳鳴りの発現や悪化に寄与し得る要因です。

[1] 血管・神経系の要因

血管の異常や神経系の要因による耳鳴りは、耳鳴り音が体の生理的リズムと関係している点が特徴です。例えば、動脈や静脈の異常で発生する拍動性の耳鳴りでは、心拍に同期した「ドクンドクン」や「ジョー」という音が聞こえます。また、首を回したり顎を動かしたりすると耳鳴りの音が変化する場合、首や顎周辺の神経・筋肉が関連する耳鳴りが疑われます。

  • 循環器系の異常:高血圧症や動脈硬化、血管奇形などにより血流が乱れて発生する耳鳴り。心拍音に連動した規則的な「ザーザー」という音が聞こえる。
  • 筋・骨格系の異常:顎関節症や首の筋緊張などに伴う耳鳴り。顎を動かすと「キシキシ」音がする、首を圧迫すると音が変わる等の特徴がみられる。

これらのケースでは、耳鼻科のみならず循環器内科や整形外科的アプローチが必要になることがあります。血管性の耳鳴りであれば血圧管理や血管の治療により症状が改善する可能性がありますし、筋・骨格系の問題であれば咬合治療や理学療法によって耳鳴りの軽減が期待できます。体全体の状態を整えることが耳鳴り対策につながる場合もあるのです。

[2] 薬剤・ストレスなどの要因

内耳や血管・神経の問題以外にも、薬剤や生活習慣・心理的ストレスといった要因が耳鳴りに影響を与えることがあります。耳に有害な薬剤を使用した場合や、極度の緊張状態が続いた場合に耳鳴りが生じた例は珍しくありません。これらは一見耳と直接関係がないように思えますが、聴覚を司る機構に間接的なダメージや誤作動を引き起こすことで症状を誘発します。

  • 薬剤性難聴:アスピリンの大量摂取、アミノグリコシド系抗生物質、抗がん剤(シスプラチンなど)といった薬剤の副作用で内耳が障害され、耳鳴りや難聴を起こす。
  • ストレス・疲労:精神的ストレスや過労が自律神経のバランスを乱し、内耳の血流低下や神経過敏を招いて耳鳴りの一因となる。休息やストレス緩和で症状が改善することもある。

薬剤による耳鳴りは、原因薬の中止や変更によって改善が期待できます。また、ストレスが関与する耳鳴りの場合は、ストレス源の除去やリラクゼーションによって症状が和らぐことがあります。例えばある研究では、新規に発症した耳鳴り患者の約75%において心理的ストレスが引き金となっていたと報告されています【文献2】。このように、生活習慣や精神面のケアも耳鳴り対策では重要な位置を占めます。

■3. 耳鳴りの神経メカニズム

耳鳴りは一度生じると、単に耳の中だけでなく脳内の神経活動によって維持・増幅されることが明らかになっています。言い換えれば、耳鳴りは聴覚情報処理系の異常興奮による「脳の症状」としての側面を持つのです。この神経学的メカニズムを理解することで、なぜ耳鳴りが慢性化しやすいのか、なぜストレスで悪化するのかといった疑問に対する手がかりが得られます。

通常、内耳からの音刺激が途絶えると脳は静寂を感じるはずですが、難聴などで十分な刺激が伝わらなくなると脳は感度を上げて微小な信号も拾おうとします。この過剰な補正によって神経が自発的に異常信号を発し始め、それが耳鳴りとして知覚されると考えられています。また、一度耳鳴りが固定化すると聴覚野だけでなく情動や注意に関わる脳領域も巻き込まれ、脳内ネットワークが再編成されます。その結果、音に対する過敏状態が持続し、音がないのに音が鳴っている状態が慢性的に続いてしまうのです。

[1] 聴覚入力の欠如と過剰補正

難聴により本来あるべき聴覚信号が脳に届かなくなると、脳は「聞こえない」状態を補おうとして聴覚系の感度を異常に高めます。その結果、普段は無視される神経のノイズまでも増幅され、あたかも音が鳴っているかのように錯覚されます。これはラジオのボリュームを上げすぎた際にかえって雑音が目立つ状態に例えられます。

  • 中枢神経の利得上昇:聴覚信号が減少すると脳内で感度調整機構が働き、神経活動の全体的なレベルが上がる。
  • 過剰な神経発火:感度上昇に伴い、本来は無音であるはずの周波数帯域の神経まで自発的に発火し始める。

このような中枢の過剰補正により、実際には存在しない音が知覚される素地が形成されます。耳鳴りはこの段階ではまだ脳が静寂に適応しようとして起きる現象ともいえますが、問題はこの神経活動が慢性的に固定化してしまう場合です。一度パターン化された異常興奮は、脳が元の状態に戻った後も「癖」として残り、刺激がなくても勝手に音を感じ続けることにつながります。

[2] 脳内ネットワークの再編と持続

耳鳴りが長期化すると、脳内では聴覚野だけでなく複数のネットワークが関与するようになります。例えば、耳鳴りの音に常に注意が向いてしまう状態では、注意・認知を司る前頭前野や頭頂葉のネットワークが耳鳴り信号に結び付けられています。また、耳鳴りによる苦痛や不眠が続くと、扁桃体や海馬といった情動・記憶を担う領域も活性化し、耳鳴りに対する情動反応(不安や苛立ち)が強化されます。

  • 可塑的変化:慢性的な耳鳴り刺激により、聴覚野の神経回路が再編成される。例えば、失われた聴力帯域の神経細胞が隣接する周波数帯域の応答を肩代わりするなどの変化が起こる。
  • 情動・認知系の巻き込み:耳鳴り信号に対する不安や注意集中が続くことで、扁桃体や前頭前野などの非聴覚系が関与し、耳鳴りへの情動的反応や認知的評価が強化される。

このように脳内ネットワークが再編成されてしまうと、もはや耳鳴りは単なる聴覚の症状ではなく、脳全体の反応パターンとして定着します。これが耳鳴りが慢性化し、治療が難しくなる一因と考えられます。そのため、耳鳴り治療では音そのものへのアプローチだけでなく、脳の過剰な興奮や情動反応を和らげる治療(カウンセリングや薬物療法など)が有効となる場合があります。



耳鳴りの治療法と対処法

現在、耳鳴りを完全に消し去る万能な治療法は存在しません。しかし、耳鳴りに悩む患者の症状を和らげ、生活の質を向上させるために様々なアプローチが取られています。耳鳴りの治療は、大きく分けて医学的治療と心理的支援・セルフケアの二つの柱があります。症状の程度や原因に応じてこれらを組み合わせながら、患者ごとに最適な対策を講じることが重要です。

医学的な治療法には、まず難聴の改善や音への適応を促す手段が挙げられます。具体的には補聴器の装用や音響療法(サウンドセラピー)によって、外部から適切な音刺激を与えて耳鳴りを相対的に目立たなくする方法が広く用いられています。また、耳鳴りによる精神的苦痛を軽減するため、認知行動療法(CBT)などの心理療法を併用することも効果的とされています【文献3】。薬物治療に関しては、耳鳴り自体を止める特効薬はないものの、不安や不眠に対する対症療法的な薬剤が用いられることがあります。

一方、患者自身が行うセルフケアや生活習慣の工夫も耳鳴り対策では大切です。耳鳴り症状はストレスや疲労により悪化し得るため、規則正しい生活やリラクゼーションを心がけることで症状の緩和が期待できます。カフェインやアルコールなど耳鳴りを増悪させる可能性のある刺激の摂取を控え、十分な睡眠と休養を取ることも基本的な対処法となります。さらに、周囲の環境にホワイトノイズや自然音を取り入れて耳鳴りから注意をそらす工夫も有用です。

■1. 医学的治療とカウンセリング

耳鳴りに対する専門的な治療としては、聴覚補助やカウンセリングを組み合わせたアプローチが一般的です。耳鳴りそのものを消すことが難しい場合でも、患者の感じ方を和らげ日常生活に適応させることを目標に種々の療法が行われます。

特に聴力低下を伴う耳鳴りでは、補聴器の使用が有益です。補聴器によって周囲の環境音が聞こえやすくなると、相対的に耳鳴りの音が目立ちにくくなる効果があります。また、耳鳴り専用の音響療法機器(マスカー)で心地よい音を流し、脳の注意を耳鳴りから逸らす治療も行われます。一方、耳鳴りによる不安感やストレスに対しては、専門家によるカウンセリングや認知行動療法が有効です。耳鳴りに対する考え方や反応を訓練し、症状との付き合い方を学ぶことでQOLの改善が期待できます。

[1] 補聴器・音響療法

耳鳴り患者の多くに認められる難聴に対して補聴器を装用することで、周囲の音環境を豊かにし耳鳴りを相対的に軽減させる効果が期待できます。また、ホワイトノイズなどを用いた音響療法(サウンドセラピー)は、耳鳴りの音に慣れさせて脳の過敏な反応を和らげる目的で行われます。

  • 補聴器の使用:聴力低下がある場合に装用し、外界の音を増幅することで耳鳴りを感じにくくする。
  • マスキング療法:自然音やホワイトノイズを流して耳鳴り音を覆い隠し、患者の主観的負担を軽減する。

補聴器や音響療法は根治的な治療ではありませんが、正しく活用することで耳鳴りとの共存が容易になります。特に、難聴によって静寂時に耳鳴りが増幅されていた患者にとっては、補聴器で生活音が戻ることで耳鳴りが気になりにくくなる効果が報告されています。また、就寝前にリラックスできる音を聞くことで入眠を助けるなど、音を使った工夫次第で耳鳴りの感じ方をコントロールしやすくなります。

[2] 心理療法とカウンセリング

耳鳴りによる不安やストレスが強い場合、心理的アプローチを取り入れることが有用です。専門カウンセラーや臨床心理士によるカウンセリングでは、患者が感じている不安や苛立ちを傾聴し、症状への受け止め方をポジティブに変えていくサポートが行われます。認知行動療法(CBT)では耳鳴りに対する認知の歪みを修正し、適応的な対処スキルを身につける訓練をします。

  • 支持的カウンセリング:患者の気持ちに寄り添い、耳鳴りへの理解と受容を促す面談療法。
  • 認知行動療法(CBT):耳鳴りに対するネガティブな思考パターンを修正し、ストレス反応を緩和する訓練を行う。

これらの心理的アプローチにより、耳鳴りそのものの大きさが変わらなくとも、患者が感じる苦痛を軽減することができます【文献3】。実際、音響療法と心理療法を組み合わせた包括的なリハビリテーションにより、多くの患者で耳鳴りへの耐性が高まり日常生活への支障が軽減したとの報告があります【文献3】。耳鳴りは心と密接に関わる症状であるため、精神面のケアを含めた総合的な治療が重要なのです。

■2. 生活習慣の改善とセルフケア

耳鳴り症状と上手に付き合っていくためには、患者自身による日々のセルフケアも欠かせません。生活習慣を見直し、症状を悪化させる要因を減らすことで、耳鳴りの感じ方をコントロールしやすくなります。また、自ら積極的に対処法を実践することで「自分でも症状に働きかけられる」という安心感が生まれ、精神的負担の軽減にもつながります。

ストレスや疲労が耳鳴りを悪化させることは先述の通りですが、逆に言えばストレスケアや十分な休養は症状緩和に寄与します。適度な運動や入浴などリラクゼーションを取り入れる、睡眠衛生を整える、過度な残業や夜更かしを避けるといった規則正しい生活習慣は、耳鳴り対策の基本となります。さらに、静かな環境では耳鳴りが目立つため、環境音を工夫して耳鳴りをマスキングするセルフケアも有効です。

[1] 騒音対策と音環境の工夫

完全な静寂は耳鳴りを強調してしまうため、適度に環境音を取り入れて耳鳴りを紛らわせることが有用です。日常生活ではテレビやラジオを小音量で流したり、自然音を録音した音源をバックグラウンドで再生したりすることで、耳鳴りへの意識を分散させる効果が期待できます。

  • ホワイトノイズ活用:扇風機や空気清浄機の音など単調な環境音を活かし、静寂を避ける。
  • 快適な音の選択:小川のせせらぎ波の音など、自分がリラックスできる音を就寝前に流して耳鳴りを和らげる。

音環境を整える工夫によって、耳鳴りの音が脳に与えるインパクトを減らすことができます。特に就寝環境では、快適な音を取り入れることで入眠がスムーズになり、夜間に耳鳴りへ意識が向きにくくなります。一方で、大音量の音楽を長時間聴くことや騒音環境に身を置くことは内耳への負担となり耳鳴り悪化につながる可能性があるため、避けるべきです。自分にとって心地よい音環境を見つけることが、長期的な耳鳴り管理に役立ちます。

[2] ストレス管理とリラクゼーション

耳鳴り症状を安定させるには、ストレスを溜め込まない生活を心がけることが大切です。ストレスや緊張が高まると自律神経のバランスが乱れ、耳鳴りが悪化することがあるためです。日常的にリラクゼーション法を取り入れて心身の緊張をほぐすことで、耳鳴りへの過敏な反応を和らげる効果が期待できます。

  • 生活リズムの改善:規則正しい生活と十分な睡眠・休養を確保し、疲労やストレスの蓄積を防ぐ。
  • リラクゼーション法:深呼吸法やヨガ、マインドフルネス瞑想などを実践して心身のリラックスを図る。

これらのセルフケアを継続することで、耳鳴りに対するストレス反応をコントロールしやすくなります。実際、生活習慣の改善とストレス管理に取り組んだ患者では、耳鳴りの音自体は消えなくとも気になりにくくなったとの声が多く聞かれます。耳鳴りとの長い付き合いにおいて、自分自身でできる対策を身につけることは症状悪化の防止につながり、ひいては治療効果の維持にも寄与するでしょう。

■3. 新たな治療法の展望

耳鳴り治療の分野では、近年新しいアプローチの研究が進んでいます。未だ確立された治療薬はありませんが、耳鳴りの神経メカニズムに働きかける薬剤や電気刺激による治療装置など、将来的な治療法として期待される技術が登場しています。

薬物療法の分野では、脳内の過剰な興奮を抑える薬剤や聴覚伝達を調節する薬剤の有効性を検証する臨床試験が行われています。例えば、興奮性神経伝達を抑制する抗てんかん薬やNMDA受容体拮抗薬が一部の患者で耳鳴り軽減に効果を示したとの報告があります。ただし、これらはまだ研究段階であり、広く使われる標準治療には至っていません。

デバイス治療の分野では、耳や舌など複数の感覚に同時に刺激を与えて脳の過剰興奮をリセットする「バイモーダル刺激療法」などが注目されています。実際、欧州で開発されたLenireという装置がこのバイモーダル治療により耳鳴り症状を緩和する効果を示し、2023年には米国FDAの承認を受けました。このような神経調節デバイスや反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)など、新しい技術は耳鳴り治療の選択肢を今後広げていく可能性があります。

[1] 薬物療法の新展開

現在も研究が続けられている耳鳴り治療薬としては、中枢神経の興奮を抑える薬剤が挙げられます。例えば、グルタミン酸神経伝達を調節するNMDA受容体拮抗薬や、耳鳴り患者に高頻度でみられる抑うつ・不安を改善する抗うつ薬・抗不安薬の効果が検討されています。

  • NMDA受容体拮抗薬:過剰な神経興奮を抑制し、耳鳴りの神経活動を鎮める可能性がある薬剤。現時点では試験的使用段階。
  • 神経伝達調整薬:脳内の神経伝達物質バランスを整える薬剤群で、耳鳴りに付随する不眠や不安を緩和する目的で使用検討されている。

これらの薬物療法の有効性についてはさらなるエビデンスが必要ですが、将来的には耳鳴りの原因メカニズムに応じたオーダーメイドの薬物治療が可能になることが期待されています。新薬開発には時間を要しますが、基礎研究の進展に伴い耳鳴りの神経学的理解が深まることで、有望な治療薬が登場する可能性は十分にあるでしょう。

[2] デバイス・神経刺激療法

近年登場したデバイスを用いた耳鳴り治療も注目されています。前述のバイモーダル刺激療法では、音刺激と舌や皮膚への電気刺激を同期させて与えることで、脳内の聴覚回路に変化をもたらし耳鳴りを軽減させる狙いがあります。これは神経可塑性を利用したアプローチで、従来の薬や音響療法とは異なる観点から耳鳴りに挑むものです。

  • バイモーダル刺激デバイス:耳と舌に同時に刺激を与える装置。数ヶ月の使用で耳鳴りの音量や苦痛度が減ったとする臨床結果が報告されている。
  • 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):頭部に磁気刺激を繰り返し与えて脳の神経活動を調整する治療法。一部の耳鳴り患者で症状軽減の効果が示唆されている。

これら新しい治療法はまだ広く普及してはいませんが、今後の研究と改良によって耳鳴り治療の主流となる可能性を秘めています。特に従来治療で効果が乏しかった難治性の耳鳴りに対して、新規デバイスや刺激法が症状改善の糸口を提供するかもしれません。患者にとっても「治せる耳鳴り」への希望が見えてきており、今後の研究動向が期待されます。



まとめ

耳鳴りは一見すると単に「耳が鳴る」というだけの症状ですが、その原因は耳の中の微細な変化から脳全体の神経活動にまで及ぶ複雑な現象であり、放置すれば生活の質に深刻な影響を与えかねません。本記事で述べた通り、耳鳴りの背景には内耳の有毛細胞損傷や聴覚神経の過剰な興奮といった生理学的要因が存在し、加齢、騒音曝露、ストレスなど多様な誘因が絡んでいます。「キーン」という高音の耳鳴りは特に内耳の高周波数領域の難聴と関連する場合が多く、現代社会では高齢者のみならず若年層でも大音量の音響環境によって耳鳴りを抱える人が増えています。

耳鳴り自体は命に関わる症状ではないものの、その慢性化は睡眠障害や情動障害を通じて患者の人生に暗い影を落とします。耳鳴りに悩む人の中には、持続する音への対処に疲弊し社会生活から距離を置いてしまうケースや、絶望感から精神的危機に陥るケースもあります。耳鳴りは患者本人にしか感じられない主観的体験であるため、周囲の理解や支援が得られにくいという問題も見逃せません。したがって、耳鳴りの治療・支援には医学的アプローチだけでなく、心理社会的なサポート体制の構築が不可欠です。

幸いなことに、耳鳴りへの対策は近年着実に進歩しています。補聴器や音響療法といった従来からの方法により多くの患者が症状の軽減を実感しており、認知行動療法など心理的手法との組み合わせで耳鳴りとの付き合い方を身につける成功例も増えています【文献3】。さらに、革新的なデバイス療法や薬物療法の研究が進みつつあり、将来的には耳鳴りを根本から抑制する治療法が実用化される可能性も十分あります。現時点では完治が難しい耳鳴りですが、患者一人ひとりが自分に合った対処法を見いだし、専門家と協力しながら症状と向き合っていくことで、耳鳴りによる苦痛は大きく軽減できるでしょう。耳鳴り治療の最前線に立つ医療者も最新の知見を踏まえたケアを提供し、患者のQoL向上を目指して尽力していく必要があります。



専門用語一覧

  • 感音難聴(かんおんなんちょう):内耳や聴神経の障害により音の感知自体が低下する難聴。高音域から聞こえづらくなることが多く、補聴器で改善する可能性がある。
  • 伝音難聴(でんおんなんちょう):外耳・中耳の音伝導の障害で生じる難聴。音が届きにくくなるタイプの難聴で、中耳炎や耳硬化症などが原因。
  • 有毛細胞(ゆうもうさいぼう):内耳の蝸牛に存在する音を感知する細胞。音の振動を電気信号に変換する役割を持ち、損傷すると難聴や耳鳴りが生じる。
  • 突発性難聴(とっぱつせいなんちょう):突然発症する原因不明の感音難聴。片耳が急に聞こえなくなり、耳鳴りやめまいを伴う。早期の治療開始が予後に重要。
  • メニエール病:内耳のリンパ液が増加することで起こるめまい発作を主症状とする疾患。発作時には片耳の難聴や耳鳴り(低音)が悪化し、耳閉感を伴う。
  • 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう):聴神経を包む細胞にできる良性の脳腫瘍(前庭神経鞘腫)。発症初期から片方の耳に難聴や耳鳴り、ふわふわとした浮遊性のめまいが現れ、時間と共に少しずつ大きくなることがある。
  • 耳硬化症(じこうかしょう):中耳のアブミ骨が固着して可動性を失う病気。若年〜中年に発症し、伝音難聴と耳鳴りを呈する。外科的手術による治療が検討される。
  • 補聴器(ほちょうき):難聴に対して音を増幅し、聞こえを補助するための装置。適切に装用することで環境音が聞こえやすくなり、耳鳴りが相対的に気になりにくくなる。
  • マスキング療法:耳鳴りの音を隠す目的でホワイトノイズや自然音を流す治療法。マスカーと呼ばれる装置や環境音で耳鳴りを覆い、患者の主観的負担を軽減する。
  • 認知行動療法(CBT):心理療法の一種。耳鳴りに対する否定的な認知(捉え方)を修正し、ストレス反応を軽減する訓練を行うことで症状への対処力を高める。
  • バイモーダル刺激療法:耳鳴り治療の新手法。音刺激と身体(舌や皮膚)への電気刺激を組み合わせて与え、脳の聴覚回路を再調整することで耳鳴りの軽減を図る。
  • 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):磁気刺激で大脳皮質の神経活動を調整する治療法。うつ病治療で確立されている手法で、耳鳴り患者にも試験的に適用され、症状軽減の可能性が研究されている。



参考文献一覧

  1. Jarach C.M., Lugo A., Scala M., van den Brandt P.A., Cederroth C.R., Odone A., et al. Global Prevalence and Incidence of Tinnitus: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Neurol. 2022; 79(9): 888–900.
  2. Han B.I., Lee H.W., Kim T.Y., Lim J.S., Shin K.S. Tinnitus: characteristics, causes, mechanisms, and treatments. J Clin Neurol. 2009; 5(1): 11–19.
  3. Baguley D., McFerran D., Hall D. Tinnitus. Lancet. 2013; 382(9904): 1600–1607.
  4. Maihoub S., Mavrogeni P., Molnár V., Molnár A. Tinnitus and Its Comorbidities: A Comprehensive Analysis of Their Relationships. J Clin Med. 2025; 14(4): 1285.



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執筆者

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
  • 特定非営利活動法人日本免疫学会:正会員
  • 日本バイオマテリアル学会:正会員
  • 公益社団法人高分子学会:正会員
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