ためしてガッテンで紹介された過活動膀胱改善法の医学的検証

ためしてガッテンで紹介された過活動膀胱改善法の医学的検証

過活動膀胱は急に我慢できないほどの強い尿意が生じる尿意切迫感を主症状とし、頻尿や夜間頻尿を伴う排尿障害です。日本では40歳以上の男女の約12.4%がこの症状を有しており、加齢とともに有症状率は上昇します【文献1】。そのため、テレビ番組などで紹介される改善法に関心を持つ人は多く、NHK「ためしてガッテン(現・ガッテン!)」で放送された内容を参考にしている視聴者も少なくありません。

しかし、テレビ番組で紹介される健康情報は放送時間の制約上、内容が簡略化されることがあり、すべての視聴者に適用できるとは限りません。また、過活動膀胱の原因は多岐にわたるため、番組で紹介された方法が自分の症状に有効かどうかを判断するには、医学的な視点からの検証が必要となります。そのため、本記事ではためしてガッテンで放送された過活動膀胱改善法の内容を整理し、その医学的妥当性を検証します。

過活動膀胱は生活の質に大きな影響を与える疾患であり、有症状者の53%が日常生活に支障をきたしていると報告されています【文献1】。一方で、症状があっても医療機関を受診する人は23%にとどまっており、多くの人が適切な治療を受けていない現状があります。本記事の目的は、番組内容の正確な理解と医学的に推奨される対処法の両方を解説し、適切な判断に役立てていただくことにあります。

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ためしてガッテンで紹介された過活動膀胱と頻尿の改善法

NHK「ためしてガッテン(現・ガッテン!)」では、過活動膀胱や頻尿に関連するテーマが複数回にわたり放送されています。2016年10月19日の放送では「快尿!おしっこトラブル全部解決の5秒ワザ」として膀胱の柔軟性と骨盤底筋訓練が取り上げられ、2019年2月27日には「おしっこの悩み大改善SP」として骨盤底筋の重要性が紹介されました。また、2020年7月15日の放送では「夜、トイレに起きないための新秘策」として夜間頻尿と下肢のむくみの関係が解説されています。

これらの放送内容は多くの視聴者の関心を集め、番組で紹介された改善法を実践する人も増えています。しかし、過活動膀胱の原因は一様ではなく、神経疾患に起因するものから加齢による膀胱機能の変化、前立腺肥大症の合併など多岐にわたります。そのため、番組で紹介された方法がすべての人に効果を発揮するわけではなく、自分の症状の原因を正しく理解した上で適切な対処法を選択することが重要です。

本セクションでは、ためしてガッテンで放送された過活動膀胱および頻尿に関する主要な改善法を整理します。番組内容を正確に把握することで、後述する医学的検証との比較が可能となり、自身の状況に合った対処法を判断する際の基礎知識として活用できます。

■1. 骨盤底筋訓練による膀胱機能の改善

2016年および2019年の放送で中心的に取り上げられたのが骨盤底筋訓練です。骨盤底筋は膀胱や直腸を下から支える筋肉群であり、この筋肉が弱くなると膀胱の制御が困難になり、尿意切迫感や尿漏れが生じやすくなります。番組では、骨盤底筋を鍛えることで膀胱の安定性が向上し、過活動膀胱の症状改善につながると説明されています。

骨盤底筋訓練は行動療法の一種として位置づけられており、過活動膀胱に対する非薬物療法として臨床研究でも検討されています【文献5】。番組内では、この訓練を継続することで早い人では4週間程度で効果が現れ、3カ月でほとんどの人が改善を実感できると紹介されました。また、訓練は座った状態でも寝た状態でも実施可能であり、日常生活に取り入れやすい点も強調されています。

[1] 番組で紹介された骨盤底筋訓練の具体的方法

ためしてガッテンで紹介された骨盤底筋訓練は、肛門や膣を5秒間締めてから緩めるという動作を繰り返す方法です。この訓練は腹筋に力を入れずに実施することがポイントとされており、1日20回程度を目安に毎日継続することが推奨されています。

  • 肛門と膣を意識的に5秒間締め、その後ゆっくりと緩める動作を1セットとします。
  • 腹筋には力を入れず、骨盤底筋のみを収縮させることを意識します。
  • 座位、立位、仰臥位のいずれの姿勢でも実施可能であり、場所を選ばずに行えます。
  • 1日20回を目安とし、朝晩に分けて実施することで継続しやすくなります。

この訓練方法は、骨盤底筋の収縮と弛緩を繰り返すことで筋力を強化し、膀胱の不随意収縮を抑制する効果を狙ったものです。番組では、継続的な実施により膀胱周囲の血流が改善し、膀胱の柔軟性が向上することで尿意切迫感が軽減すると説明されています。ただし、効果を実感するまでには個人差があり、数週間から数カ月の継続が必要となる場合もあります。

[2] 骨盤底筋訓練の対象となる人

番組では、骨盤底筋訓練が特に効果を発揮しやすい対象として、加齢や出産により骨盤底筋が弱くなった人が挙げられています。女性は妊娠・出産を経験することで骨盤底筋に負担がかかりやすく、また男女ともに加齢に伴い筋力が低下するため、これらの要因による過活動膀胱症状には骨盤底筋訓練が有効とされています。

  • 出産を経験した女性で、産後に尿漏れや頻尿が生じるようになった人が該当します。
  • 加齢により骨盤底筋の筋力低下を自覚している中高年層が対象となります。
  • 軽度から中等度の過活動膀胱症状を有し、薬物療法の前に非薬物療法を試したい人に適しています。
  • 日常的に座位での作業が多く、骨盤底筋を使う機会が少ない生活習慣を持つ人も対象です。

骨盤底筋訓練は侵襲性がなく副作用の懸念も少ないため、過活動膀胱の初期対応として取り組みやすい方法です。しかし、神経疾患が原因の過活動膀胱や、前立腺肥大症を合併している男性の場合は、骨盤底筋訓練のみでは十分な効果が得られない可能性があり、医療機関での診断が必要となります。

■2. 夜間頻尿に対する下肢むくみ対策

2020年7月15日の放送では、夜間頻尿の原因として下肢のむくみが取り上げられました。日中に下肢に溜まった水分が、就寝時に横になることで心臓に戻り、腎臓で処理されて尿として排出されるため、夜間の排尿回数が増えるという機序が説明されています。この現象は夜間多尿と呼ばれ、過活動膀胱とは異なるメカニズムで生じますが、夜間頻尿という症状は共通しています。

番組では、夕方から就寝前にかけて下肢のむくみを解消することで、夜間の尿量を減らし、夜間頻尿を改善できると紹介されました。この方法は特に、夕方になると脚のむくみを感じる人や、日中よりも夜間の尿量が多い人に効果が期待できるとされています。むくみの有無は、すねを指で押して凹みが残るかどうかで確認できます。

[1] 番組で紹介されたむくみ解消法

ためしてガッテンでは、下肢のむくみを解消するための具体的な方法として、弾性ストッキングの着用と就寝前の足上げが紹介されました。これらの方法により、日中に下肢に貯留した水分を就寝前に心臓へ戻すことで、夜間の尿産生を抑制する効果が期待できます。

  • 弾性ストッキングを日中に着用することで、下肢への水分貯留を予防します。
  • 就寝の3〜4時間前に30分程度足を心臓より高い位置に上げ、むくみを解消します。
  • ふくらはぎのマッサージを行い、静脈還流を促進することも有効です。
  • 長時間の座位や立位を避け、適度に足を動かすことでむくみの発生を抑制します。

これらの方法は、下肢のむくみに起因する夜間多尿に対しては効果が期待できますが、過活動膀胱による夜間頻尿には直接的な効果がない点に注意が必要です。夜間頻尿の原因は夜間多尿、膀胱容量の減少、睡眠障害など複数存在するため、自分の夜間頻尿がどの原因によるものかを把握した上で対処法を選択することが重要です。

[2] むくみ対策が有効となる条件

番組で紹介されたむくみ対策は、すべての夜間頻尿に効果があるわけではなく、特定の条件を満たす場合に有効性が期待できます。夜間の尿量が1日総尿量の33%以上を占める場合は夜間多尿と定義され、この場合にむくみ対策が効果を発揮しやすいとされています。

  • 夕方になると靴がきつくなる、脚が重だるいなどのむくみ症状がある人に適しています。
  • 夜間の排尿量が昼間と比較して明らかに多い人が対象となります。
  • 心不全や腎臓病などの基礎疾患がなく、むくみの原因が姿勢や生活習慣による人に向いています。
  • 高血圧や塩分の過剰摂取により体内に水分が貯留しやすい状態にある人も該当します。

むくみ対策による夜間頻尿の改善を試みる場合は、排尿日誌をつけて夜間尿量と昼間尿量の比率を確認することが推奨されます。夜間多尿の基準を満たさない場合や、むくみがないにもかかわらず夜間頻尿がある場合は、過活動膀胱や前立腺肥大症など他の原因を考慮する必要があります。

■3. 膀胱の柔軟性を高める生活習慣

ためしてガッテンでは、膀胱の柔軟性が低下すると尿を十分に溜められなくなり、頻尿や尿意切迫感が生じやすくなると説明されています。膀胱の柔軟性は加齢や血流の低下により失われやすく、膀胱を温めて血流を改善することで柔軟性を取り戻せる可能性があると紹介されました。

また、番組では「念のためトイレ」と呼ばれる習慣が膀胱の柔軟性低下を招く原因として指摘されています。尿意を感じる前に頻繁にトイレへ行く習慣を続けると、膀胱が少量の尿しか溜められない状態に慣れてしまい、結果として頻尿が悪化するという悪循環が生じます。この習慣を改めることが過活動膀胱の改善につながると番組では解説されています。

[1] 膀胱を温めることの意義

番組内では、膀胱周囲の血流を改善するために体を冷やさないことが推奨されています。冷えにより膀胱の血流が低下すると膀胱壁が硬くなり、尿を溜める機能が低下するとされています。特に冬季や冷房の効いた環境では、下腹部を温めることで膀胱機能の維持に寄与する可能性があります。

  • 入浴により全身の血流を促進し、膀胱周囲の血行を改善します。
  • 下腹部や腰部を冷やさないよう、腹巻きやカイロの使用が推奨されます。
  • 冷たい飲み物の過剰摂取を避け、常温または温かい飲み物を選択します。
  • 適度な運動を行い、全身の血液循環を良好に保つことが有効です。

膀胱を温めることによる過活動膀胱改善効果については、番組内で紹介された内容に基づくものであり、大規模な臨床試験で検証されたエビデンスは限定的です。しかし、体を温めることは全身の血流改善に寄与し、健康維持の観点からも有益であるため、日常生活に取り入れやすい対策として位置づけられます。

[2] 念のためトイレ習慣の見直し

番組では、尿意がないにもかかわらず外出前などにトイレへ行く「念のためトイレ」の習慣が、過活動膀胱の発症や悪化に関与する可能性があると指摘されています。この習慣を続けることで膀胱が少量の尿で尿意を感じるようになり、頻尿が習慣化してしまうという機序が説明されています。

  • 尿意を感じてからトイレへ行くことを基本とし、予防的な排尿を控えます。
  • 尿意を感じても少し我慢してから排尿することで、膀胱容量の維持を図ります。
  • 排尿間隔を徐々に延長し、最終的に2〜3時間の間隔を目標とします。
  • 急な尿意を感じた際は、骨盤底筋を締めることで尿意を抑制する技術を習得します。

この習慣の見直しは膀胱訓練と呼ばれる行動療法の一種であり、過活動膀胱に対する非薬物療法として医学的にも推奨されています。ただし、尿意の我慢が困難な重症例や、前立腺肥大症により残尿が多い場合は膀胱訓練が適さないこともあるため、症状が強い場合は医療機関への相談が必要です。



番組内容の医学的検証と注意すべき点

ためしてガッテンで紹介された過活動膀胱の改善法は、骨盤底筋訓練やむくみ対策など、日常生活で実践しやすい内容が中心です。これらの方法は医学的根拠に基づく部分もありますが、番組の性質上、すべての視聴者に当てはまるわけではない点や、効果の限界について十分に説明されていない部分も存在します。本セクションでは、番組で紹介された各改善法を医学的観点から検証し、実践する際に注意すべき点を整理します。

過活動膀胱は国際禁制学会(ICS:International Continence Society)により「尿意切迫感を必須症状とし、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁の有無は問わない症状症候群」と定義されています。この定義に基づくと、過活動膀胱の診断には尿意切迫感の存在が必須であり、単なる頻尿や夜間頻尿のみでは過活動膀胱とは診断されません。番組では頻尿全般を対象として改善法が紹介されていますが、過活動膀胱と他の原因による頻尿では適切な対処法が異なる場合があります。

日本における過活動膀胱の疫学調査では、40歳以上の有症状率は12.4%であり、加齢とともに上昇して80歳以上では約37%に達することが報告されています【文献1】。また、有症状者の53%が生活の質に影響を受けているにもかかわらず、医療機関を受診した人は23%にとどまっています【文献1】。このように多くの人が医療機関を受診せずに自己対処を試みている現状があるため、番組内容の正確な理解と限界の把握は重要な意味を持ちます。

■1. 骨盤底筋訓練の有効性と限界

骨盤底筋訓練は過活動膀胱に対する行動療法として、国内外の診療ガイドラインで推奨されている治療法です。骨盤底筋を収縮させることで尿道閉鎖圧が上昇し、また排尿筋の不随意収縮を反射的に抑制する効果があるとされています。ためしてガッテンで紹介された訓練方法は、この医学的原理に基づいたものであり、適切に実施すれば一定の効果が期待できます。

臨床研究においても、骨盤底筋訓練の過活動膀胱に対する有効性は検証されています。骨盤底筋訓練、バイオフィードバック支援骨盤底筋訓練、電気刺激療法を比較した無作為化試験では、いずれの方法でも過活動膀胱症状の改善が認められ、主観的改善率は電気刺激療法で51.4%、バイオフィードバック支援骨盤底筋訓練で50.0%、骨盤底筋訓練単独で38.2%でした【文献5】。この結果から、骨盤底筋訓練は一定の効果を有するものの、全員に効果があるわけではないことが示されています。

[1] 番組で説明が不足していた点

ためしてガッテンでは骨盤底筋訓練の効果が強調されていましたが、効果発現までの期間や効果が得られない場合の対応については十分な説明がありませんでした。臨床研究の結果を踏まえると、骨盤底筋訓練単独での改善率は約38%であり、6割以上の人は訓練のみでは十分な改善が得られない可能性があります【文献5】。

  • 骨盤底筋訓練の効果発現には通常4〜12週間の継続が必要であり、即効性は期待できません。
  • 正しい筋肉を収縮させているかの確認が困難であり、誤った方法で訓練を続けている場合があります。
  • 重度の過活動膀胱や神経因性膀胱では、骨盤底筋訓練のみでは効果が不十分な場合が多いです。
  • 訓練を中止すると効果が減弱するため、長期的な継続が必要となります。

骨盤底筋訓練を3カ月程度継続しても効果が実感できない場合は、訓練方法が正しいかの確認や、他の治療法の検討が必要です。バイオフィードバック装置を用いた指導を受けることで正しい収縮方法を習得できる場合もあり、医療機関や専門の理学療法士への相談が推奨されます。また、骨盤底筋訓練と薬物療法の併用により、単独療法よりも高い効果が得られることも報告されています。

[2] 骨盤底筋訓練が適さない場合

骨盤底筋訓練はすべての過活動膀胱患者に適した治療法ではなく、特定の病態では効果が限定的であったり、他の治療を優先すべき場合があります。番組ではこの点についての説明が不足しており、視聴者が自分の状態に適しているかを判断する情報が十分に提供されていませんでした。

  • 脳血管障害やパーキンソン病などの神経疾患に起因する神経因性膀胱では、骨盤底筋訓練の効果は限定的です。
  • 前立腺肥大症を合併する男性では、排尿障害の治療が優先される場合があります。
  • 重度の骨盤臓器脱がある女性では、手術療法が必要となる場合があります。
  • 認知機能の低下により訓練の継続や正しい実施が困難な場合は、他の治療法が選択されます。

過活動膀胱の原因は多岐にわたるため、骨盤底筋訓練を開始する前に、膀胱炎や膀胱結石、膀胱腫瘍など他の疾患が除外されていることが重要です。尿意切迫感や頻尿の症状がある場合でも、血尿や排尿時痛を伴う場合は泌尿器科での精査が必要であり、自己判断で骨盤底筋訓練のみを行うことは適切ではありません。

■2. むくみ対策と夜間頻尿の関係

ためしてガッテンで紹介された下肢むくみ対策は、夜間多尿に起因する夜間頻尿に対しては理論的に有効な方法です。日中に下肢に貯留した水分が夜間に心臓へ還流し、腎臓で処理されて尿量が増加するという機序は医学的に認められており、弾性ストッキングの着用や足上げにより夜間尿量が減少することを示す研究も存在します。

しかし、夜間頻尿の原因は夜間多尿のみではありません。過活動膀胱による膀胱容量の減少、前立腺肥大症による残尿増加、睡眠時無呼吸症候群による夜間尿産生の増加、睡眠障害による覚醒後の排尿など、複数の要因が関与します。番組では夜間多尿に焦点が当てられていましたが、過活動膀胱による夜間頻尿には別のアプローチが必要となる場合があります。

[1] 夜間多尿と過活動膀胱の鑑別

夜間頻尿を改善するためには、その原因が夜間多尿なのか過活動膀胱による膀胱容量の減少なのかを鑑別することが重要です。排尿日誌を用いて1回排尿量と排尿回数を記録することで、夜間頻尿の原因をある程度推定することが可能です。

  • 夜間尿量が1日総尿量の33%以上を占める場合は夜間多尿と判断され、むくみ対策が有効な可能性があります。
  • 1回排尿量が少なく(150ml未満)、日中も頻尿がある場合は過活動膀胱が疑われます。
  • 夜間の排尿量が少ないにもかかわらず頻回に起きる場合は、睡眠障害の関与が考えられます。
  • 排尿後も残尿感がある男性では、前立腺肥大症による排尿障害が原因である可能性があります。

過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive Bladder Symptom Score)は、過活動膀胱の診断と重症度評価に用いられる質問票です【文献2】。OABSSは昼間頻尿、夜間頻尿尿意切迫感切迫性尿失禁の4項目で構成され、合計スコアが3点以上かつ尿意切迫感スコアが2点以上の場合に過活動膀胱と診断されます【文献2】。自分の夜間頻尿が過活動膀胱によるものかを判断する際には、このような評価ツールを活用することが有用です。

[2] むくみ対策の効果が期待できない場合

下肢にむくみがない場合や、夜間多尿の基準を満たさない場合は、番組で紹介されたむくみ対策を実施しても夜間頻尿の改善は期待できません。このような場合は、過活動膀胱や他の原因に対する治療を検討する必要があります。

  • 夕方に下肢のむくみがなく、夜間尿量も1日総尿量の33%未満の場合は、むくみ以外の原因を考慮します。
  • 日中から尿意切迫感や頻尿がある場合は、過活動膀胱に対する治療が必要となります。
  • いびきや日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査が推奨されます。
  • 夜間に何度も目が覚めてからトイレに行く場合は、睡眠障害の治療が優先される場合があります。

番組で紹介された方法を試しても夜間頻尿が改善しない場合は、泌尿器科を受診して原因の精査を受けることが重要です。夜間頻尿は生活の質を著しく低下させるだけでなく、夜間の転倒リスク増加や睡眠不足による日中の活動性低下など、二次的な健康被害をもたらす可能性があるため、適切な診断と治療が必要です。

■3. 番組情報を実践する際の総合的な注意点

ためしてガッテンは多くの視聴者に健康情報を提供する番組として長年にわたり放送されてきましたが、テレビ番組という特性上、情報が簡略化されていたり、個々の視聴者の状況に応じた対応が説明されていない場合があります。過活動膀胱に関する放送内容を実践する際には、いくつかの点に注意が必要です。

過活動膀胱の症状は膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍など他の疾患でも生じる可能性があるため、番組で紹介された方法を試す前に、これらの疾患が除外されていることが望ましいです。特に血尿、排尿時痛、発熱などの症状を伴う場合は、自己対処を行う前に医療機関での診察が必要です。また、番組で紹介された方法を一定期間試しても改善が見られない場合は、過活動膀胱以外の原因や、より積極的な治療が必要な状態である可能性を考慮すべきです。

[1] 医療機関への受診を検討すべき状況

番組で紹介された改善法は、軽度から中等度の過活動膀胱症状に対する初期対応としては適切ですが、症状が重い場合や改善が見られない場合は医療機関への受診が推奨されます。以下の状況に該当する場合は、自己対処を続けるよりも泌尿器科での診察を優先すべきです。

  • 尿意切迫感が強く、トイレに間に合わずに尿漏れを起こすことが頻繁にある場合です。
  • 骨盤底筋訓練やむくみ対策を3カ月以上継続しても症状の改善が見られない場合です。
  • 血尿や排尿時痛、残尿感など、頻尿以外の症状を伴う場合です。
  • 症状により外出を控えるなど、日常生活に著しい支障が生じている場合です。

医療機関では問診や尿検査、超音波検査などにより過活動膀胱の診断が行われ、他の疾患の除外も同時に実施されます。過活動膀胱と診断された場合は、行動療法に加えて薬物療法が検討されることが一般的であり、抗コリン薬β3受容体作動薬により症状の改善が期待できます。番組で紹介された方法で効果が不十分な場合でも、医学的な治療により症状をコントロールできる可能性は十分にあります。

[2] 自己診断の危険性

テレビ番組の情報のみに基づいて自己診断を行い、長期間にわたり不適切な対処を続けることには危険性があります。過活動膀胱と思い込んでいた症状が実は膀胱腫瘍や神経疾患の初期症状であった場合、発見が遅れることで治療の機会を逃す可能性があります。

  • 頻尿や尿意切迫感は膀胱腫瘍の症状として現れることがあり、特に血尿を伴う場合は精査が必要です。
  • 急に症状が出現した場合や進行性に悪化する場合は、神経疾患や感染症の可能性を考慮します。
  • 男性で排尿困難を伴う場合は、前立腺肥大症や前立腺癌の除外が必要です。
  • 糖尿病の既往がある場合は、糖尿病性膀胱障害の可能性も検討されます。

番組で紹介された改善法を試みることは、軽度の症状に対する初期対応としては問題ありませんが、症状が持続する場合や悪化する場合は、自己判断に固執せず医療機関を受診することが重要です。過活動膀胱は適切な診断と治療により多くの場合で症状の改善が可能な疾患であり、早期の受診が生活の質の向上につながります。



過活動膀胱に対する医学的に推奨される治療法

過活動膀胱の治療は、行動療法、薬物療法、難治性の場合の外科的治療という段階的なアプローチが基本となります。ためしてガッテンで紹介された骨盤底筋訓練やむくみ対策は行動療法の一部として位置づけられますが、医学的にはこれらに加えて膀胱訓練や生活指導が含まれ、さらに薬物療法との併用により高い治療効果が得られることが明らかになっています。本セクションでは、診療ガイドラインや臨床研究に基づく過活動膀胱の標準的な治療法を解説します。

過活動膀胱の診断には、過活動膀胱症状スコアが広く用いられています。OABSSは昼間頻尿、夜間頻尿尿意切迫感切迫性尿失禁の4症状をスコア化したもので、合計15点満点のうち3点以上かつ尿意切迫感が2点以上の場合に過活動膀胱と診断されます【文献2】。重症度は合計スコアにより、5点以下を軽症、6〜11点を中等症、12点以上を重症と分類し、治療方針の決定に活用されます【文献2】。

治療法の選択は症状の重症度や患者の希望、副作用のリスクなどを考慮して個別に決定されます。軽症例では行動療法のみで改善が得られる場合もありますが、中等症以上では薬物療法の併用が推奨されることが一般的です。また、薬物療法で十分な効果が得られない難治性過活動膀胱に対しては、ボツリヌス毒素膀胱内注入療法などの選択肢があります。

■1. 行動療法の実際と効果

行動療法は過活動膀胱治療の第一選択として位置づけられており、骨盤底筋訓練膀胱訓練、生活指導の3つが主な構成要素です。これらは侵襲性がなく副作用の懸念も少ないため、軽症例では行動療法のみで治療を開始し、効果が不十分な場合に薬物療法を追加するという段階的アプローチが採用されることが多いです。

行動療法の有効性は複数の臨床研究で検証されています。骨盤底筋訓練、バイオフィードバック支援骨盤底筋訓練、電気刺激療法を比較した無作為化試験では、103名の女性患者において電気刺激療法で51.4%、バイオフィードバック支援骨盤底筋訓練で50.0%、骨盤底筋訓練単独で38.2%の主観的改善率が報告されています【文献5】。また、King’s Health Questionnaireによる評価では、電気刺激療法とバイオフィードバック支援骨盤底筋訓練骨盤底筋訓練単独よりも有意に高い効果を示しました【文献5】。

[1] 膀胱訓練の方法と期待される効果

膀胱訓練は、尿意を感じてもすぐにトイレへ行かずに少しずつ排尿間隔を延長することで、膀胱容量を増加させる方法です。ためしてガッテンで紹介された「念のためトイレ」の習慣を改める方法は、この膀胱訓練の考え方に基づいています。

  1. 現在の排尿間隔を排尿日誌で把握し、基準となる間隔を設定します。
  2. 尿意を感じても骨盤底筋を締めて5〜10分間我慢し、その後に排尿します。
  3. 我慢できる時間を徐々に延長し、1週間ごとに15〜30分ずつ間隔を広げます。
  4. 最終的に排尿間隔が2〜3時間となることを目標として訓練を継続します。

膀胱訓練は膀胱の知覚閾値を上昇させ、少量の尿で尿意を感じる状態を改善する効果があります。訓練開始当初は尿意の我慢が困難に感じられることもありますが、継続することで徐々に膀胱容量が増加し、排尿回数の減少が期待できます。ただし、残尿量が多い場合や尿路感染症を繰り返す場合は膀胱訓練が適さないため、開始前に医療機関での評価を受けることが推奨されます。

[2] 生活指導の具体的内容

生活指導は過活動膀胱の症状を悪化させる因子を減らし、改善させる因子を増やすことを目的とした指導です。カフェインやアルコールの過剰摂取、水分の過剰または不足、肥満、便秘などが過活動膀胱の症状に影響することが知られており、これらの生活習慣の修正が推奨されます。

  • カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶の摂取を控えることで膀胱刺激を軽減します。
  • アルコールには利尿作用があるため、特に夕方以降の飲酒を控えることが推奨されます。
  • 水分摂取量は1日1.5〜2リットルを目安とし、過剰摂取と脱水の両方を避けます。
  • 肥満は腹圧上昇により膀胱を圧迫するため、適正体重の維持が症状改善に寄与します。

生活指導は単独での効果は限定的ですが、骨盤底筋訓練膀胱訓練、薬物療法と組み合わせることで治療効果を高めることが期待できます。特にカフェインの過剰摂取がある場合は、摂取量を減らすだけで頻尿症状が改善することも少なくありません。生活習慣の見直しは過活動膀胱の治療のみならず、全身の健康維持にも有益であるため、積極的に取り組むことが推奨されます。

■2. 薬物療法の種類と選択

行動療法で十分な効果が得られない場合や、症状が中等度以上の場合は薬物療法が検討されます。過活動膀胱に対する薬物療法には、抗コリン薬β3受容体作動薬の2種類が主に使用されており、それぞれ異なる作用機序により膀胱の過活動を抑制します。どちらの薬剤を選択するかは、患者の年齢、合併症、副作用のリスクなどを考慮して決定されます。

薬物療法は行動療法と併用することで、より高い効果が得られることが報告されています。薬物療法のみでも症状改善は期待できますが、行動療法を同時に行うことで薬剤の減量や中止が可能となる場合もあるため、両者を組み合わせたアプローチが推奨されます。また、薬物療法を開始した場合でも、効果判定には少なくとも4週間程度の継続が必要であり、即効性を期待して短期間で中止することは避けるべきです。

[1] 抗コリン薬の作用機序と副作用

抗コリン薬は膀胱平滑筋のムスカリン受容体を遮断することで、排尿筋の不随意収縮を抑制し、膀胱容量を増加させる薬剤です。ソリフェナシン、トルテロジン、フェソテロジン、イミダフェナシンなど複数の薬剤が使用可能であり、長年にわたり過活動膀胱治療の中心的な役割を担っています。

  • 抗コリン薬は膀胱平滑筋の収縮を抑制し、尿意切迫感や頻尿を改善します。
  • 口渇は最も頻度の高い副作用であり、薬剤や用量により発生頻度が異なります。
  • 便秘も比較的多い副作用であり、高齢者では特に注意が必要です。
  • 閉塞隅角緑内障の患者には禁忌であるため、緑内障の有無を確認した上で処方されます。

抗コリン薬の副作用は膀胱以外の臓器に存在するムスカリン受容体にも作用するために生じます。口渇は唾液腺のムスカリン受容体遮断、便秘は腸管のムスカリン受容体遮断により引き起こされます。近年では膀胱選択性の高い薬剤が開発されており、副作用の軽減が図られていますが、高齢者では認知機能への影響も懸念されるため、慎重な投与が求められます。

[2] β3受容体作動薬の特徴

β3受容体作動薬は膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激することで、膀胱を弛緩させて蓄尿機能を改善する薬剤です。ミラベグロンが代表的な薬剤であり、抗コリン薬とは異なる作用機序を有するため、抗コリン薬で効果不十分な場合や副作用が問題となる場合の選択肢となります。

  • β3受容体作動薬は膀胱を弛緩させることで膀胱容量を増加させ、頻尿を改善します。
  • 口渇や便秘などの抗コリン作用による副作用が少ないことが特徴です。
  • 高血圧や頻脈が副作用として報告されており、心血管疾患を有する患者では注意が必要です。
  • 抗コリン薬との併用により、単剤よりも高い効果が得られる場合があります。

ミラベグロンの有効性は大規模な第III相無作為化比較試験で検証されています。欧州・オーストラリアで実施された試験では、1,978名の患者がミラベグロン50mg、100mg、トルテロジン徐放錠4mg、プラセボに無作為に割り付けられ、12週間の治療が行われました【文献4】。その結果、ミラベグロン50mg群では24時間あたりの排尿回数が1.93回減少し、尿失禁回数も1.57回減少しており、いずれもプラセボと比較して統計学的に有意な改善が認められました【文献4】。治療関連有害事象の発生率は各群で同等であり、良好な忍容性が示されています【文献4】。

■3. 難治性過活動膀胱に対する治療選択肢

行動療法と薬物療法を十分に行っても効果が不十分な場合、または副作用により薬物療法が継続できない場合は、難治性過活動膀胱として追加の治療が検討されます。難治性過活動膀胱に対する治療選択肢としては、ボツリヌス毒素膀胱内注入療法、仙骨神経刺激療法、経皮的脛骨神経刺激療法などがあります。

これらの治療法は侵襲性が高い、または専門的な施設でのみ実施可能であるため、一般的には行動療法と薬物療法で効果が得られなかった場合の第三選択として位置づけられます。ただし、症状が重度で生活の質が著しく低下している場合や、薬物療法の副作用が許容できない場合は、より早い段階でこれらの治療が検討されることもあります。

[1] ボツリヌス毒素膀胱内注入療法

ボツリヌス毒素膀胱内注入療法は、A型ボツリヌス毒素(onabotulinumtoxinA)を膀胱壁に直接注入することで、排尿筋の過活動を抑制する治療法です。日本では2020年に過活動膀胱に対する保険適用が認められ、難治性過活動膀胱の治療選択肢として普及しています。

  • 膀胱鏡を用いて膀胱壁の複数箇所にボツリヌス毒素を注入する方法で実施されます。
  • 効果持続期間は6〜12カ月であり、効果が減弱した場合は再投与が可能です。
  • 尿閉や尿路感染症が主な副作用であり、自己導尿が必要となる場合があります。
  • 抗コリン薬β3受容体作動薬で効果不十分な患者が主な適応となります。

第III相無作為化プラセボ対照試験では、557名の患者を対象にonabotulinumtoxinA 100単位の膀胱内注入が評価されました【文献3】。その結果、onabotulinumtoxinA群では1日あたりの尿失禁回数がプラセボ群と比較して有意に減少し(-2.65回 vs -0.87回、p<0.001)、22.9%の患者が完全に禁制を達成しました【文献3】。また、治療効果尺度での陽性反応率は60.8%であり、プラセボ群の29.2%と比較して有意に高い結果でした【文献3】。最も多い有害事象は非複雑性尿路感染症であり、尿閉の発生率は5.4%でした【文献3】。

[2] その他の治療選択肢

ボツリヌス毒素膀胱内注入療法以外にも、難治性過活動膀胱に対する治療選択肢として仙骨神経刺激療法や経皮的脛骨神経刺激療法があります。これらはいずれも神経調節療法と呼ばれ、膀胱を制御する神経に電気刺激を与えることで症状を改善する方法です。

  • 仙骨神経刺激療法は仙骨部に電極を埋め込み、持続的な電気刺激を行う方法です。
  • 経皮的脛骨神経刺激療法は足首付近の脛骨神経を経皮的に刺激する低侵襲な方法です。
  • 手術療法として膀胱拡大術が行われることもありますが、適応は限定的です。
  • 治療法の選択は患者の状態や希望、施設の設備などを考慮して決定されます。

難治性過活動膀胱の治療は専門的な知識と設備を要するため、泌尿器科専門医のいる医療機関での診療が推奨されます。行動療法や一般的な薬物療法で効果が不十分な場合でも、これらの追加治療により症状の改善が期待できるため、諦めずに専門医に相談することが重要です。過活動膀胱は生活の質に大きく影響する疾患ですが、適切な診断と治療により多くの場合で症状のコントロールが可能です。



まとめ

本記事では、NHK「ためしてガッテン」で放送された過活動膀胱の改善法を整理し、その医学的妥当性を検証するとともに、診療ガイドラインや臨床研究に基づく標準的な治療法を解説しました。番組で紹介された骨盤底筋訓練やむくみ対策は、いずれも医学的根拠に基づく部分を含んでおり、適切な対象者に対しては一定の効果が期待できる方法です。しかし、番組の性質上、すべての視聴者に当てはまるわけではない点や効果の限界については十分に説明されておらず、自分の症状に適した方法かどうかを判断するには医学的な知識が必要となります。

過活動膀胱は尿意切迫感を必須症状とする症状症候群であり、日本では40歳以上の約12.4%がこの症状を有しています。加齢とともに有症状率は上昇し、80歳以上では約37%に達することが疫学調査で報告されています【文献1】。有症状者の半数以上が生活の質に影響を受けているにもかかわらず、医療機関を受診する人は23%にとどまっており、多くの人が適切な治療を受けていない現状があります【文献1】。このような背景から、テレビ番組で紹介される改善法に関心を持つ人が多いことは理解できますが、症状が持続する場合や悪化する場合は医療機関への受診が重要です。

番組で紹介された骨盤底筋訓練は、過活動膀胱に対する行動療法として医学的にも推奨されている方法です。臨床研究では骨盤底筋訓練単独で約38%の主観的改善率が報告されており、バイオフィードバックや電気刺激療法を併用することでさらに高い効果が得られることが示されています【文献5】。ただし、効果発現には数週間から数カ月の継続が必要であり、神経疾患に起因する過活動膀胱や重度の症状には効果が限定的である点を理解しておく必要があります。また、夜間頻尿に対するむくみ対策は、夜間多尿が原因である場合には有効ですが、過活動膀胱による膀胱容量の減少が原因の場合には効果が期待できないため、自分の症状の原因を正しく把握することが重要です。

過活動膀胱の診断には過活動膀胱症状スコアが用いられ、昼間頻尿、夜間頻尿尿意切迫感切迫性尿失禁の4症状をスコア化して評価します【文献2】。OABSSは診断のみならず重症度の評価や治療効果の判定にも活用され、患者自身がセルフチェックに用いることも可能です。症状の重症度に応じて治療法が選択され、軽症例では行動療法のみで改善が得られる場合もありますが、中等度以上では薬物療法の併用が推奨されます。

薬物療法には抗コリン薬β3受容体作動薬があり、それぞれ異なる作用機序で膀胱の過活動を抑制します。β3受容体作動薬であるミラベグロンは、大規模な第III相試験において24時間あたりの排尿回数および尿失禁回数を有意に減少させることが示されており、抗コリン薬と比較して口渇や便秘などの副作用が少ないことが特徴です【文献4】。また、行動療法と薬物療法で効果が不十分な難治性過活動膀胱に対しては、ボツリヌス毒素膀胱内注入療法が選択肢となります。第III相試験では、onabotulinumtoxinA 100単位の膀胱内注入により22.9%の患者が完全禁制を達成し、60.8%の患者が治療効果を実感したことが報告されています【文献3】。

ためしてガッテンで紹介された改善法を試みることは、軽度の症状に対する初期対応としては適切ですが、効果が得られない場合や症状が重い場合は自己対処に固執せず、泌尿器科を受診することが推奨されます。過活動膀胱は適切な診断と治療により多くの場合で症状のコントロールが可能な疾患であり、生活の質の向上が期待できます。番組内容を参考にしつつも、自分の症状に合った対処法を選択し、必要に応じて医療機関に相談することが、過活動膀胱と上手に付き合うための鍵となります。



専門用語一覧

  • 過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder):尿意切迫感を必須症状とし、通常は頻尿および夜間頻尿を伴う症状症候群です。切迫性尿失禁の有無は問いません。
  • 尿意切迫感:急に起こる我慢できないほどの強い尿意であり、通常の尿意とは異なる病的な感覚を指します。過活動膀胱の診断に必須の症状です。
  • 切迫性尿失禁:尿意切迫感と同時またはその直後に、意図せず尿が漏れてしまう状態です。過活動膀胱に伴う場合と伴わない場合があります。
  • 夜間頻尿:夜間就寝中に排尿のために1回以上起きる状態です。過活動膀胱夜間多尿、睡眠障害など複数の原因により生じます。
  • 夜間多尿:夜間の尿量が1日総尿量の33%以上を占める状態です。下肢のむくみや心不全、睡眠時無呼吸症候群などが原因となります。
  • 過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive Bladder Symptom Score):昼間頻尿、夜間頻尿尿意切迫感切迫性尿失禁の4症状を点数化した評価ツールです。
  • 骨盤底筋:膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓器を下から支える筋肉群です。この筋肉の収縮により尿道閉鎖圧が上昇し、排尿を制御します。
  • 骨盤底筋訓練:骨盤底筋を意識的に収縮・弛緩させることで筋力を強化し、排尿障害の改善を図る行動療法です。
  • 膀胱訓練:尿意を感じてもすぐにトイレへ行かず、排尿間隔を徐々に延長することで膀胱容量の増加を図る行動療法です。
  • 抗コリン薬:膀胱平滑筋のムスカリン受容体を遮断し、排尿筋の不随意収縮を抑制する薬剤です。口渇や便秘が主な副作用となります。
  • β3受容体作動薬:膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させて蓄尿機能を改善する薬剤です。ミラベグロンが代表的です。
  • ボツリヌス毒素膀胱内注入療法:A型ボツリヌス毒素を膀胱壁に直接注入し、排尿筋の過活動を抑制する治療法です。難治性過活動膀胱に適応されます。
  • 排尿日誌:排尿時刻、1回排尿量、尿意切迫感の有無、尿漏れの有無などを記録する日誌です。過活動膀胱の診断や治療効果の評価に用います。
  • 神経因性膀胱:脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷などの神経疾患に起因する膀胱機能障害です。過活動膀胱症状を呈することがあります。
  • 前立腺肥大症:前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を引き起こす疾患です。過活動膀胱を合併することが多いです。



参考文献一覧

  1. Homma Y, Yamaguchi O, Hayashi K; Neurogenic Bladder Society Committee. An epidemiological survey of overactive bladder symptoms in Japan. BJU Int. 2005;96(9):1314-1318.
  2. Homma Y, Yoshida M, Seki N, Yokoyama O, Kakizaki H, Gotoh M, et al. Symptom assessment tool for overactive bladder syndrome–overactive bladder symptom score. Urology. 2006;68(2):318-323.
  3. Nitti VW, Dmochowski R, Herschorn S, Sand P, Thompson C, Nardo C, Yan X, Haag-Molkenteller C. OnabotulinumtoxinA for the treatment of patients with overactive bladder and urinary incontinence: results of a phase 3, randomized, placebo controlled trial. J Urol. 2013;189(6):2186-2193.
  4. Khullar V, Amarenco G, Angulo JC, et al. Efficacy and tolerability of mirabegron, a β(3)-adrenoceptor agonist, in patients with overactive bladder: results from a randomised European-Australian phase 3 trial. Eur Urol. 2013;63(2):283-295.
  5. Wang AC, Wang YY, Chen MC. Single-blind, randomized trial of pelvic floor muscle training, biofeedback-assisted pelvic floor muscle training, and electrical stimulation in the management of overactive bladder. Urology. 2004;63(1):61-66.



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執筆者

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
  • 特定非営利活動法人日本免疫学会:正会員
  • 日本バイオマテリアル学会:正会員
  • 公益社団法人高分子学会:正会員
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