研究開発紹介:酸素運搬体マイクロカプセルの研究開発

研究開発紹介:酸素運搬体マイクロカプセル

研究開発の目的と背景

■1. ターゲット領域

酸素運搬体マイクロカプセルは、酸素を安定的に供給できる人工材料であり、段階的なターゲット設定を行っています。

  • ファーストステップでは、創薬研究や再生医療研究における酸素供給試薬として利用します。スフェロイドやミニ臓器など三次元培養系で内部が低酸素状態になり壊死する課題に対し、補助的に酸素を供給することで構造を安定化させます。培養終了後は容易に除去できる特性を持っています。
  • 中間ステップでは、動物実験や前臨床研究における酸素供給補助材として活用します。組織工学や移植片維持の補助に加えて、外科や集中治療における一時的な酸素補助としての応用も想定しています。
  • 最終ゴールは人工酸素運搬体、すなわち赤血球の代替としての利用です。出血性ショックや輸血不足、災害医療や戦地医療における血液代替材料としての実装を目指しています。

■2. 社会的・科学的背景

三次元培養やオルガノイド研究は創薬や再生医療の基盤技術として急速に普及していますが、酸素や栄養の拡散に制約があり、中心部が壊死するという課題があります。この課題は創薬スクリーニングの精度を下げ、再生医療研究の効率を悪化させています。

一方で、人工酸素運搬体は数十年にわたり研究されてきましたが、腎毒性や酸化ストレスの誘発、安全性や安定性の課題から臨床応用は限定的です。そのため、まず研究用試薬として普及させ、その後に動物実験や臨床応用へ展開することが現実的な開発戦略です。

■3. 現状の課題認識

スフェロイド内部の低酸素や壊死は創薬研究の再現性を低下させています。既存の人工酸素運搬体は腎毒性や保存安定性の不足といった課題を抱えています。研究用途として酸素供給を補助する材料は未開拓の分野であり、そこに大きなニーズが存在します。

課題解決の基本方針

■1. 研究開発の姿勢

将来的に赤血球代替を視野に入れながら、段階的に適応範囲を広げます。また、中低所得国にも提供可能なコスト効率の高い製品を開発します。

■2. 解決アプローチ

  • マイクロカプセル構造を利用して酸素キャリアを安定的に保持します。
  • 表面修飾によって免疫反応を回避し、将来的な体内循環時間の延長を図ります。
  • カプセルサイズを制御することで酸素拡散効率を最適化します。
  • 乾燥工程によって保存と輸送の利便性を高めます(凍結乾燥を含む複数の方法に対応可能です)。

当社のコア技術・強み

■1. 基盤技術

当社は、コアシェル粒子やマイクロカプセルを精密に形成する技術を有しています。界面合成による制御的な粒子形成、表面修飾による機能付与、カプセル構造の安定化といった基盤技術を活用することで、酸素を効率的かつ安定的に保持する新しい材料を開発しています。

■2. 他社との差別化要素

当社のマイクロカプセルは、酸素供給能に加えて、三次元培養研究で必要とされる「壊死防止」と「容易な除去性」を両立できます。さらに、乾燥保存に対応できるため、輸送や流通の利便性が高く、普及型製品として研究や産業用途から医療応用へと展開できる点で優位性があります。

研究開発の成果

本研究開発テーマは、パートナー企業からの事業移管によって当社が継続しているものです。移管は3フェーズに分けて実施しており、第1フェーズは完了済みで、第2フェーズは2025年10月から11月に実施予定です。

特許については、パートナー企業の保有特許からライセンスを受ける予定であり、加えて当社独自に国内特許(JP1件)を執筆中です。

学会発表については、再生医療学会や高分子学会などでの発表が想定されており、展示会についてはバイオエキスポへの出展を計画しています。

応用可能性と展望

■1. 市場性・応用分野

  • 三次元培養やオルガノイド研究市場は2024年時点で約30億米ドル(約4,500億円)規模であり、年率15%以上の成長が見込まれています。このうちスフェロイドやミニ臓器培養に関する酸素供給試薬市場は、当社が初期参入できる有望なサブセグメントです。
  • 人工酸素運搬体や人工赤血球市場はまだ小さいものの、輸血不足問題を背景に2030年には数千億円規模に拡大する可能性があります。特に災害医療、戦地医療、中低所得国向けの未充足需要が大きな参入機会です。
  • さらに、液体の溶存酸素濃度を向上させる用途(観賞魚用助剤、魚類の陸上養殖向け酸素供給材など)も潜在的市場と考えられます。既存のエアレーション技術の代替や補完として活用できれば、新たな産業分野での利用が期待されます。

■2. 今後の研究開発方向性

  • 短期(〜2年):培養研究用酸素供給試薬として製品化と販売を開始し、ISO9001に基づいた品質管理体制で製造と供給を行います。
  • 中期(3〜5年):動物実験や前臨床研究における酸素補助材としての有効性を評価します。この段階では共同研究やライセンス契約を通じて、マイルストン収入や開発支援を獲得することを想定します。
  • 長期(5〜10年):人工酸素運搬体(赤血球代替)として臨床応用と国際展開を目指します。製薬企業や材料メーカーへの導出によって、ライセンス収益や共同開発案件化を想定します。

■3. 社会実装の見込み

創薬研究や再生医療研究の基盤技術を支える普及型材料としてまず実装します。その後、災害医療や中低所得国の医療に広げることで、グローバルな血液代替製品へと発展することを目指します。

さらに、産業用途を含めた幅広い応用探索を継続し、協力企業や産官学連携を通じて新たな需要を開拓します。

産学連携・社会とのつながり

現在は共同研究を行っていませんが、大学研究機関や製薬企業との連携を積極的に募集しています。臨床や研究現場に関わる医師や研究者との協力を基盤に展開を進めていきます。

社会的意義としては、培養研究の効率化と血液代替技術の普及を通じて、医療格差の縮小や創薬スピードの加速に貢献することです。

品質と信頼性

現在は研究段階であり、ラボスケールでの品質管理を実施しています。短期的には研究用試薬として製品化を行い、ISO9001に基づいた品質マネジメント体制で製造と供給を進めます。

将来的には臨床用途への展開を見据えてISO13485やGMP対応への移行を検討し、パートナー企業と協力して臨床導出体制を整備していきます。

プロジェクトリーダー

本研究開発のプロジェクトリーダーは、当社代表取締役社長・CTOの博士(工学)中濵数理です。

■1. 本研究開発領域における同氏の実績

  • Langmuir 15 (13), 4630-4635, 192, 1999
  • 第10回高分子ミクロスフェア討論会 要旨集表紙掲載(慶應義塾大学)
  • Langmuir 16 (21), 7882-7886, 107, 2000
  • スマートポリマー国際シンポジウム ベストポスター賞
  • Langmuir 18 (26), 10095-10099, 36, 2002
  • 高分子微粒子の組織化を通した超構造体の作製(慶應義塾大学 博士論文)
  • キヤノン株式会社 全社トナータスクフォース セグメントリーダー(元)
  • キヤノン株式会社 化成品開発センター 第1・第4開発室 室長(元)
  • 色材協会誌 88 (10), 337-340, 2015
  • JP2020024319
  • JP2020024320
  • JP2020024321
  • JP2019148710
  • JP2019148726
  • JP2019139020
  • JP2019139132
  • JP2019139138
  • JP2019139231
  • JP2019045706
  • JP2018132758
  • JP2018124419
  • JP2018124420
  • JP2018084705
  • JP2018072621
  • JP2018017786
  • JP2018017858
  • JP2017227883
  • JP2017223910
  • JP2017198811
  • JP2017042729
  • JP2017042730
  • JP2017042731
  • JP2017043724
  • JP2017039793
  • JP2017039794
  • JP2017031390
  • JP2017014356
  • JP2017014384
  • JP2017014385
  • JP2017015916
  • JP2016126327
  • JP2016126331
  • JP2014224252
  • JP2014224253
  • JP2012236967
  • JP2012066236
  • JP2014084411
  • JP2013018953
  • JP2012233147
  • JP2011241376

ライフサイエンス事業部バイオマテリアルセグメント品質方針

■1. 品質宣言

化成品の研究開発、試作合成、製造販売において、以下の方針のもと品質マネジメントシステムを運用します。

  1. 顧客満足の追求 顧客の要求事項および適用される法令・規制要求事項を満たし、高品質な製品とサービスを提供します。
  2. 確実な品質と納期の実現 各プロセスにおいてリスクを適切に管理し、品質確保と納期遵守を徹底します。
  3. 品質目標の達成 年度ごとに具体的な品質目標を設定し、その達成に向けて計画的に取り組みます。
  4. 継続的改善 品質マネジメントシステムの有効性を維持・向上させるため、継続的な改善活動を推進します。

2025年6月1日
由風BIOメディカル株式会社
代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

文責

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
  • 特定非営利活動法人日本免疫学会:正会員
  • 日本バイオマテリアル学会:正会員
  • 公益社団法人高分子学会:正会員
  • X認証アカウント:@kazu197508

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