
体外医薬品の研究開発
体外医薬品とは、主に疾病の診断を目的とし、ヒトの体内に直接使用されることのない医薬品のことを指します。身近な例としては、インフルエンザや新型コロナウイルスの診断キットが挙げられます。当社は、数ある体外医薬品の中でも血液検査分野に注力しており、特に自動検査機器で大量に使用されるタイプの体外医薬品を研究開発しています。
■生化学検査
自動検査機器を用いる血液検査の一つに生化学検査があります。これは、健康診断で測定するγ-GTP値(肝臓や膵臓、腎臓などの臓器に存在する酵素で肝臓の機能を評価する指標)のように、疾病そのものではなく、そのリスクを数値化する検査です。
この分野の体外医薬品市場は、国内で約1,000億円、グローバルで約1兆円規模と大きなものですが、成長率は横ばいで、利益率も高くありません。そのため、当社では生化学検査向けの体外医薬品の開発はターゲットとしていません。
■免疫血清検査
一方で、免疫血清検査は、生化学検査とは異なり、疾病そのものを数値化することを目的とした検査です。がんや肝炎、ホルモン疾患、リウマチ、間質性肺炎などの診断に使用され、現在、自動検査機器で行われる免疫血清検査は約40項目存在します。
この分野の体外医薬品市場は、国内で約2,000億円、グローバルでは約2兆円規模に達し、年間5%以上の成長率を誇る、利益性の高い市場です。このような背景から、当社では免疫血清検査向けの体外医薬品を研究開発の主なターゲットとしています。
■生化学検査と免疫血清検査の市場動向
生化学検査と免疫血清検査では、検査機器の検出原理が異なるため、それぞれ専用の体外医薬品が用いられています。現在、免疫血清検査の主流となっている体外医薬品は、高感度・高精度なELISA法を作用機序としています。
しかし、ELISA法には大きな課題があります。1つの疾病を診断するのに20分以上の時間がかかるため、検査の効率が悪く、それが医療コストの増大につながっています。結果として、より迅速な検査手法の開発が強く求められています。
■検査装置市場の現状
検査装置の市場を見ると、生化学検査装置については日立ハイテク、キヤノンメディカルシステムズ、日本電子の3社が国内市場をほぼ独占しており、OEM供給を通じて海外市場にも一定の影響力を持っています。
一方、免疫血清検査用の装置市場は海外メーカーが独占しているのが現状です。医療の重要性としては、生化学検査と免疫血清検査はどちらも不可欠ですが、ビジネス面では免疫血清検査の収益性が圧倒的に高いことが特徴です。そのため、日本企業がこの分野で十分に参入できていないことに対して、業界内では強い危機感を抱いています。
■市場のゲームチェンジに向けた動き
現在、国内の検査装置メーカーは新たなコンセプトとして、「生化学検査装置の検出原理を活用できる新しい免疫血清検査用の体外医薬品」の開発に取り組んでいます。これが実現すれば、既存の生化学検査装置の圧倒的な市場稼働台数(MIF)を活用し、免疫血清検査市場においても国内企業が優位に立つことが可能となります。
1台の装置で生化学検査と免疫血清検査の両方が実施できるようになれば、エンドユーザーである医療機関にとってもコスト削減や業務効率向上につながるため、非常に魅力的なソリューションとなるでしょう。今後、この技術革新が市場のゲームチェンジャーとなるか、国内企業の挑戦に大きな注目が集まっています。
■生化学検査装置での免疫検査の実現に向けた課題
生化学検査装置を利用して免疫検査を行うためには、いくつかの技術的な課題を克服する必要があります。その中でも最も重要なのが検査時間の短縮です。
現在、生化学検査装置では1項目あたり約5分で結果を出すシークエンスが組まれていますが、免疫血清検査装置では約20分かかるのが一般的です。つまり、国内メーカーが目指す「生化学検査装置を活用した免疫検査」の実現には、5分以内に結果を得られる高感度な体外医薬品が必要となります。さらに、この新しい体外医薬品には、すでに確立されたELISA法と同等以上の感度と精度が求められます。
■ラテックス凝集法と機能性ナノ粒子の活用
検査時間を短縮する手法として、ラテックス凝集法が注目されています。この方法では、抗体を担持したナノ粒子を水溶液に分散させた体外医薬品を用います。
生化学検査装置では、ナノ粒子が分散した水溶液にレーザー光を当て、透過した光の強度を測定することで疾病の有無を判断します。血液中に病気由来の抗原が存在すると、抗原と抗体が結合してナノ粒子同士が凝集し、レーザー光が散乱されるため、透過光の強度が低下します。この変化を数値化することで、疾病の診断が可能になります。
ラテックス凝集法は迅速な検査を可能にする一方で、感度や精度の面ではELISA法に及ばないと考えられています。その主な要因は、ナノ粒子に生じる非特異的吸着にあります。血液中のタンパク質やコレステロールがナノ粒子表面に付着し、粒子同士を結びつけることで、本来の抗原抗体反応とは関係のない凝集が起こり、誤検出やノイズの原因となってしまうのです。
この問題を解決するためには、非特異的吸着を抑制する高機能なナノ粒子が必要となります。ラテックス凝集法の実用化において、機能性ナノ粒子をどのように設計していくかということは、まさに技術の要「キーマテリアル」となるのです。
■当社の機能性ナノ粒子開発と実績
当社では、ラテックス凝集法向けの機能性ナノ粒子を体外医薬品の原料として研究開発しています。すでに、競合他社のナノ粒子と比較して非特異的吸着を大幅に低減することに成功しており、抗体を担持したモデル体外医薬品においても、従来のナノ粒子より高感度な検出が可能となっています。
現在、当社が開発した旧バージョンのナノ粒子は、グローバルでも有名な大手企業へ研究成果を有償譲渡する協議が進められています。我々は、さらに、より高性能な新バージョンのナノ粒子についても、複数の候補がすでに原理検証を完了しており、さらなる高感度化を実現する段階に進んでいます。
■共同開発パートナーの募集
現在、当社では新バージョンの機能性ナノ粒子を用いた体外医薬品の共同開発を進めるため、パートナー企業を募集しています。特に、試薬メーカー、化学メーカー、検査装置メーカー、検査センターなど、関連する企業との強固な連携を構築し、実用化に向けた取り組みを加速させたいと考えています。
短期間のサンプルワークやトライアルにも対応可能ですので、ご関心のある企業様はぜひお気軽にお問い合わせください。
当社では、体外医薬品の開発に限らず、機能性ナノ粒子やその基盤技術を活用した共同研究や研究開発支援(機器分析などの受託業務を含む)、さらには研究開発の受託業務も承っております。
当社が沖縄県に拠点を置いていることについて、ご不安の声をいただくことがありますが、その点はご安心ください。当社では、研究開発や製品製造に必要なすべての機械装置をバリデーション済みで運用しており、化学合成に必要なインフラはもちろん、機器分析による品質管理や無菌試験などの安全性試験の環境も万全に整えています。
沖縄という立地に関係なく、高品質な研究開発支援をご提供できる体制を構築しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
■体外医薬品の研究開発のお問い合わせ
- 研究 機関:由風BIOメディカル沖縄第一研究所
- 製造 機関:由風BIOメディカル沖縄第一工場
- 認 証:ISO9001
- 認証 番号:JP30629-Q-2
- 統括管理者:博士(工学)中濵数理
- 研究責任者:博士(工学)中濵数理
- 住 所:沖縄県うるま市字州崎12-75
- 住 所:沖縄県うるま市字州崎5-1
- 電話 番号:098-923-0037
- 問い合わせ:お問い合わせフォーム
■ISO9001品質方針
■品質宣言
当社は、バイオマテリアル事業において、顧客の要求に応えることを基本方針とし、常に高品質な製品とサービスの提供に努めます。
- クレームや納期遅延を防ぐための取り組みを強化し、すべてのプロセスで円滑な運営を図ります。
- 年度ごとの品質目標を明確に設定し、その達成に向けて計画的に実行します。
- 品質マネジメントシステムの有効性と適用性を確保するため、継続的な改善活動を進めてまいります。
2024年6月1日
由風BIOメディカル株式会社
代表取締役社長・CTO 博士(工学)中濵数理