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ためしてガッテンの便秘体操は本当に効くのか?放送内容と医学的根拠を検証

ためしてガッテンの便秘体操は本当に効くのか?放送内容と医学的根拠を検証

NHKの人気番組「ためしてガッテン」では、便秘解消に効果があるとされる体操が紹介され、多くの視聴者の関心を集めています。そのため、番組で取り上げられた方法が本当に医学的根拠に基づいているのかを検証することには大きな意義があります。また、便秘に悩む人々にとって、テレビで紹介された情報をそのまま実践してよいのかという疑問は当然のことであり、正確な情報に基づいた判断が求められます。

便秘は日本人の多くが経験する身体の不調であり、特に女性や高齢者において有病率が高いことが知られています。慢性便秘症診療ガイドライン2017では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しており、単に排便回数が少ないだけでなく、残便感や排便困難感も便秘に含まれます【文献5】。したがって、便秘の改善には排便回数の増加だけでなく、排便の質そのものを向上させる視点が必要です。

本記事では、ためしてガッテンで放送された便秘体操の具体的な内容を整理したうえで、その医学的妥当性を学術論文に基づいて検証します。さらに、番組内容に不足している点や注意すべき点を明らかにし、便秘改善に真に効果的な体操の実践法を解説します。

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ためしてガッテンで紹介された便秘体操の内容

NHK「ためしてガッテン」では、便秘解消のための体操として「うつぶせゴロゴロ寝体操」が紹介されています。この体操は、従来の食物繊維摂取や下剤服用とは異なるアプローチであり、腸内に溜まったガスを排出することで便秘を改善するという考え方に基づいています。そのため、食事療法や薬物療法で効果を実感できなかった人々からも注目を集めています。

番組によると、便秘の人の約8割に効果が期待できるとされており、1日わずか10分程度の実践で腸の動きが改善するという内容です。また、この体操は特別な器具を必要とせず、自宅で簡単に取り組めることも特徴として強調されています。したがって、運動習慣のない人や高齢者でも実践しやすい方法として位置づけられています。

ただし、テレビ番組という性質上、放送時間の制約から詳細な注意点や適応条件が省略されている可能性があります。そのため、番組内容を正確に理解したうえで、医学的な観点から検証することが重要です。以下では、番組で説明された便秘のメカニズムと体操の具体的なやり方について整理します。

■1. 番組で説明された便秘のメカニズム

ためしてガッテンでは、便秘が起こる原因として「大蠕動」の停止が挙げられています。大蠕動とは、大腸が大きく収縮して便を直腸まで一気に運ぶ動きのことであり、通常は睡眠中に起こるとされています。この大蠕動が正常に機能しないと、便が大腸内に長時間滞留し、便秘が生じるという説明です。

番組の説明によると、大蠕動が停止する主な原因は腸内ガスの蓄積です。便秘によって便が大腸内に滞留すると、腸内細菌が便を分解する過程で水素やメタンなどのガスを発生させます。そのため、これらのガスが大腸の動きを鈍らせ、大蠕動がさらに起こりにくくなるという悪循環が生じます。

[1] 大蠕動と通常の蠕動運動の違い

大蠕動は通常の蠕動運動とは異なり、大腸の後半部分から肛門に向かって非常にダイナミックに収縮する運動です。通常の蠕動運動が2〜3センチメートル程度の小さな動きで腸内容物を少しずつ移動させるのに対し、大蠕動は便を一気に直腸まで押し出す役割を担っています。

上記のように、大蠕動は便を排出するための最終段階において重要な役割を果たしています。そのため、この運動が阻害されると、便意を感じにくくなったり、排便が困難になったりする状態が生じます。番組では、腸内ガスがこの大蠕動を妨げる主要因であると説明しています。

[2] 腸内ガスが便秘を悪化させる仕組み

腸内ガスは、飲み込んだ空気と腸内細菌による発酵の両方から生成されます。便秘状態では便が腸内に長時間滞留するため、腸内細菌が便を分解する時間が延長し、ガスの産生量が増加します。

上記の仕組みにより、便秘とガス蓄積は相互に悪影響を及ぼし合う関係にあります。番組では、この悪循環を断ち切るためにガスを排出することが重要であり、そのための手段としてうつぶせゴロゴロ寝体操が提案されています。

■2. うつぶせゴロゴロ寝体操の具体的なやり方

ためしてガッテンで紹介されたうつぶせゴロゴロ寝体操は、腸内ガスを物理的に移動させて排出を促すことを目的としています。この体操は、うつぶせの姿勢で腹部を圧迫しながら体を左右に転がすという単純な動作で構成されています。そのため、特別な技術や体力を必要とせず、誰でも実践できる点が特徴です。

番組では、この体操を夜寝る前に行うことが推奨されています。夜間は副交感神経が優位になり、腸の動きが活発化する時間帯であるため、体操の効果が得られやすいという理由です。また、食後2〜3時間は避けることが望ましいとされています。

[1] 体操の手順と所要時間

うつぶせゴロゴロ寝体操は、うつぶせ寝とゴロゴロ転がる動作の2段階で構成されています。全体の所要時間は約10分程度であり、毎日継続することで効果が現れるとされています。

  1. うつぶせの姿勢で10分間静止する。このとき、おへその下あたりに枕やクッションを敷くと腹部への圧迫効果が高まる。
  2. 10分間のうつぶせ寝が終わったら、体を左右に傾けるようにゴロゴロと転がる動作を5往復行う。
  3. 体操中はテレビを見たり本を読んだりしても問題ないため、リラックスした状態で実践する。

上記の手順は非常にシンプルであり、特別な準備や器具を必要としません。番組では、うつぶせ姿勢によって直腸が上向きになり、空気より軽い腸内ガスが出口に向かって移動しやすくなると説明されています。

[2] 体操の実施タイミングと頻度

番組では、うつぶせゴロゴロ寝体操を毎日継続することが推奨されています。特に夜寝る前の実施が効果的とされており、これは睡眠中に大蠕動が起こりやすい状態を整える目的があります。

上記のように、体操の効果を得るためには適切なタイミングと継続的な実践が重要です。番組では、この体操によって便秘の人の約8割に効果が期待できると述べられていますが、この数値の根拠については後述の検証で確認します。

■3. 番組で紹介されたその他の便秘対策

ためしてガッテンでは、うつぶせゴロゴロ寝体操に加えて、排便困難型の便秘に対する「おしり5秒体操」も紹介されています。この体操は、便意があるにもかかわらずスムーズに排便できない人を対象としたものであり、骨盤底筋の機能改善を目的としています。そのため、うつぶせゴロゴロ寝体操とは異なるタイプの便秘に対応しています。

慢性便秘症診療ガイドライン2017では、便秘症状を「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つに分類しています【文献5】。排便回数減少型は便が大腸内に滞留して排便頻度が低下するタイプであり、排便困難型は便が直腸まで到達しているにもかかわらず排出が困難なタイプです。そのため、自分の便秘がどちらのタイプに該当するかを把握することが適切な対策を選択するうえで重要です。

[1] 排便困難型便秘に対するおしり5秒体操

おしり5秒体操は、座った状態で肛門を締めたり緩めたりする動作を繰り返すことで、骨盤底筋の協調運動を改善することを目的としています。この体操は、便意があってもスムーズに排便できない排便困難型の便秘に対して有効とされています。

  1. 椅子に浅く腰掛け、背筋を伸ばした姿勢をとる。
  2. 息を吸いながら肛門を5秒間締め、その後息を吐きながら力を抜く。
  3. 上記の動作を10回程度繰り返し、1日に数セット実施する。

上記の体操は、骨盤底筋の収縮と弛緩を意識的にコントロールする訓練であり、理学療法の観点からも有用性が認められています。高野(2019)は、骨盤底筋協調運動障害を有する便排出障害型便秘症に対して、バイオフィードバック療法や体幹筋トレーニングが効果的であると報告しています【文献4】。

[2] 食物繊維に関する番組の見解

ためしてガッテンでは、便秘に対する食物繊維の効果について注意喚起がなされています。番組の見解によると、便秘の状態で食物繊維を過剰に摂取すると、かえって便秘を悪化させる可能性があるとのことです。

上記の見解は、便秘のタイプによって適切な対処法が異なることを示唆しています。ただし、食物繊維の便秘改善効果については学術的なエビデンスが蓄積されており、番組の見解が全ての便秘患者に当てはまるわけではありません。この点については次の章で詳しく検証します。



番組内容の医学的検証と注意点

ためしてガッテンで紹介された便秘体操の内容は、視聴者にとってわかりやすく構成されていますが、医学的な観点から検証すると補足すべき点や注意すべき点が存在します。番組では便秘の約8割に効果が期待できると述べられていますが、この数値の根拠や適用条件については詳細な説明がなされていません。そのため、番組内容を鵜呑みにするのではなく、学術的なエビデンスに基づいて妥当性を確認することが重要です。

運動療法が便秘改善に有効であることは複数の学術論文で報告されています。Gaoら(2019)による9件のRCT(Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)を対象としたメタ解析では、運動療法が便秘症状の改善に有意な効果を示すことが確認されています【文献1】。ただし、この研究で対象となった運動は気功やウォーキングなどの有酸素運動であり、うつぶせゴロゴロ寝体操のような静的な体操とは性質が異なります。

また、番組で強調されている腸内ガスの排出と便秘改善の因果関係については、直接的なエビデンスが限られています。腸内ガスが大蠕動を抑制するという説明は理論的には妥当ですが、うつぶせ姿勢によるガス排出が便秘改善に直結するかどうかについては慎重な評価が必要です。以下では、番組内容の各要素について学術的な観点から検証します。

■1. 運動療法の便秘改善効果に関するエビデンス

運動療法が慢性便秘の改善に寄与することは、複数の疫学研究や介入研究によって支持されています。Dukasら(2003)は、62,036名の女性を対象としたNurses’ Health Studyにおいて、毎日運動する女性は週1回未満しか運動しない女性と比較して便秘の有病率が44%低いことを報告しています【文献2】。この研究では、中等度の身体活動と食物繊維摂取の組み合わせが便秘予防に最も効果的であることも示されています。

高野(2019)は、慢性便秘に対する運動療法の有効性についてエビデンスレベルは高くないものの、身体活動や運動量の低下が慢性便秘の発症や増悪に関係する可能性があると述べています【文献4】。また、9件のランダム化試験を集めたメタ解析では、気功やウォーキングなどの有酸素運動が有意差をもって便秘患者の症状を改善すると報告されています。

[1] 有酸素運動と便秘改善の関連性

学術論文で便秘改善効果が確認されている運動の多くは、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動です。Gaoら(2019)のメタ解析では、有酸素運動群の便秘改善効果はRR(Relative Risk:相対リスク)=2.42(95%CI:1.34-4.36)であり、統計的に有意な効果が認められています【文献1】。

上記の研究結果から、有酸素運動が便秘改善に寄与する可能性は高いと考えられます。ただし、ためしてガッテンで紹介されたうつぶせゴロゴロ寝体操は有酸素運動とは異なる性質を持つため、同様の効果が得られるかどうかは別途検証が必要です。

[2] 運動が腸管機能に与える生理学的影響

運動が便秘を改善するメカニズムについては、いくつかの仮説が提唱されています。Tantawyら(2017)は、運動が結腸運動を促進し、腸管通過時間を短縮する可能性があると述べています【文献3】。この効果は迷走神経の刺激や消化管ホルモンの分泌促進によるものと考えられています。

上記のメカニズムは主に有酸素運動に関するものであり、うつぶせゴロゴロ寝体操がこれらの生理学的変化を引き起こすかどうかは明確ではありません。うつぶせ姿勢による腹部圧迫がガス排出を促す可能性はありますが、腸管運動そのものを活性化する効果については科学的な検証が不足しています。

■2. 番組で示された「約8割に効果」の妥当性

ためしてガッテンでは、うつぶせゴロゴロ寝体操が便秘の人の約8割に効果が期待できると述べられています。この数値は視聴者にとって非常に魅力的に映りますが、その根拠となるデータの詳細は番組内で明示されていません。そのため、この数値がどのような条件下で得られたものかを慎重に評価する必要があります。

学術論文における運動療法の効果は、研究デザインや対象者の特性によって大きく異なります。Tantawyら(2017)による慢性便秘を有する肥満女性125名を対象としたRCTでは、12週間の運動プログラムによってPAC-SYM(Patient Assessment of Constipation Symptoms:便秘症状評価尺度)およびPAC-QOL(Patient Assessment of Constipation Quality of Life:便秘関連QOL尺度)が有意に改善したことが報告されています【文献3】。

[1] 学術研究における運動療法の効果率

運動療法の便秘改善効果に関する学術研究では、効果率は研究によって異なります。Gaoら(2019)のメタ解析では、運動療法群の改善率は対照群と比較して約2倍であることが示されていますが、個々の研究における改善率には幅があります【文献1】。

上記の結果から、運動療法が便秘改善に有効である可能性は高いものの、「約8割に効果」という数値を一般化することには慎重であるべきです。効果の程度は個人の便秘のタイプ、運動の種類、実施期間などによって異なります。

[2] 番組情報と学術エビデンスの乖離

テレビ番組と学術論文では、情報の伝達目的や対象者が異なるため、同じ現象に対する説明にも差異が生じることがあります。番組は視聴者の関心を引き、わかりやすく情報を伝えることを重視するため、複雑な条件や例外事項が省略される傾向があります。

上記の点を踏まえると、番組で紹介された体操を実践する際には、自分の健康状態や便秘のタイプを考慮したうえで、必要に応じて医療機関に相談することが望ましいといえます。

■3. 便秘のタイプによる体操の適応と限界

慢性便秘症診療ガイドライン2017では、機能性便秘大腸通過時間遅延型、大腸通過正常型、機能性便排出障害の3つに分類しています【文献5】。うつぶせゴロゴロ寝体操は主に腸内ガスの排出を目的としているため、ガス蓄積が便秘の主因となっている場合には効果が期待できます。一方、便排出障害型の便秘に対しては、別のアプローチが必要となります。

高野(2019)は、食事療法や運動療法は慢性便秘全般に対する共通の治療となるが、主に大腸通過時間遅延型や大腸通過正常型への治療であると述べています【文献4】。一方、便排出障害型の便秘に対しては、排便姿勢指導やバイオフィードバック療法、体幹筋トレーニングが有効であるとされています。

[1] 大腸通過時間遅延型便秘への適応

大腸通過時間遅延型便秘は、大腸の蠕動運動が低下して便の移動が遅くなるタイプの便秘です。このタイプの便秘に対しては、腸管運動を促進する運動療法や食事療法が有効とされています。

上記のように、大腸通過時間遅延型便秘に対してうつぶせゴロゴロ寝体操が一定の効果を発揮する可能性はありますが、単独で十分な効果を得ることは難しい場合があります。

[2] 便排出障害型便秘への適応の限界

便排出障害型便秘は、便が直腸まで到達しているにもかかわらず、骨盤底筋の協調運動障害や腹圧低下によって排出が困難になるタイプの便秘です。このタイプの便秘に対しては、うつぶせゴロゴロ寝体操の効果は限定的です。

上記の点から、便秘に悩む人は自分の症状がどのタイプに該当するかを把握したうえで、適切な対策を選択することが重要です。便意があるのにスムーズに排便できない場合は、うつぶせゴロゴロ寝体操ではなく、骨盤底筋の機能改善を目的とした体操や専門医への相談が推奨されます。



便秘改善に効果的な体操の実践法

ためしてガッテンで紹介されたうつぶせゴロゴロ寝体操は、腸内ガスの排出を促す方法として一定の意義がありますが、便秘改善のためにはより包括的なアプローチが必要です。学術論文で効果が確認されている運動療法の多くは有酸素運動であり、ウォーキングやジョギングなどの継続的な身体活動が推奨されています。そのため、うつぶせ体操を取り入れつつ、有酸素運動や体幹筋トレーニングを組み合わせることで、より効果的な便秘改善が期待できます。

Dukasら(2003)の研究では、毎日運動する女性と食物繊維摂取量が高い女性を組み合わせた群において、便秘の有病率が68%低下することが報告されています【文献2】。この結果は、運動と食事の両面からアプローチすることの重要性を示しています。また、Tantawyら(2017)の研究では、週3回60分間のトレッドミル歩行を含む運動プログラムによって、12週間で便秘症状とQOLが有意に改善したことが確認されています【文献3】。

以下では、学術的エビデンスに基づいた便秘改善のための体操と運動について、具体的な実践法を提示します。うつぶせゴロゴロ寝体操の適切な実施方法に加え、有酸素運動や体幹筋トレーニングの取り入れ方、さらに排便姿勢の改善についても解説します。

■1. うつぶせゴロゴロ寝体操の適切な実施方法

うつぶせゴロゴロ寝体操を効果的に実施するためには、正しい姿勢と適切なタイミングを守ることが重要です。番組で紹介された基本的な方法に加え、効果を高めるための工夫や注意点を理解しておく必要があります。この体操は腸内ガスの物理的な移動を促すものであるため、体の向きや圧迫の加え方が効果に影響します。

高野(2019)は、腹部マッサージが慢性便秘の症状改善に有効であるとするランダム化比較試験の報告があることを紹介しています【文献4】。1日15分、週5回の腹部マッサージが便秘症状を改善させたという研究結果は、腹部への適度な刺激が腸管運動を促進する可能性を示唆しています。うつぶせゴロゴロ寝体操も腹部を圧迫する動作を含むため、同様のメカニズムが働く可能性があります。

[1] 効果を高めるための姿勢と動作のポイント

うつぶせゴロゴロ寝体操の効果を最大限に引き出すためには、単に床にうつぶせになるだけでなく、腹部への圧迫を適切に加えることが重要です。枕やクッションの使用方法や体の動かし方によって、ガス排出の効率が変わります。

  1. 硬すぎない床面を選び、ヨガマットや布団の上でうつぶせになる。硬い床では腹部への圧迫が強すぎて不快感が生じる場合がある。
  2. おへその下あたりに枕やクッションを敷き、腸のある位置に適度な圧力がかかるように調整する。枕の高さは10〜15センチメートル程度が目安となる。
  3. うつぶせの状態で10分間静止した後、左右にゆっくりと体を傾けるように転がる動作を5往復行う。急激な動きは避け、腸内のガスが移動する時間を確保する。
  4. 転がる際には、体全体を使って大きく動くのではなく、腰を中心に左右に傾ける程度の動きで十分である。

上記のポイントを意識することで、腸内ガスが大腸の曲がりくねった部分から移動しやすくなります。うつぶせ姿勢では直腸が上向きになるため、空気より軽いガスが出口方向に移動しやすい状態が作られます。

[2] 実施を避けるべき状況と禁忌事項

うつぶせゴロゴロ寝体操は比較的安全な運動ですが、特定の状況下では実施を避けるべき場合があります。自分の健康状態を考慮したうえで、無理のない範囲で実践することが重要です。

上記の禁忌事項に該当する場合や、体操を実施して体調に異変を感じた場合には、無理に継続せず医療機関に相談することが望ましいです。

■2. 有酸素運動を取り入れた便秘改善プログラム

学術論文で便秘改善効果が確認されている運動の中心は有酸素運動です。Gaoら(2019)のメタ解析では、ウォーキングや気功などの有酸素運動が便秘症状を有意に改善することが報告されています【文献1】。そのため、うつぶせゴロゴロ寝体操に加えて有酸素運動を日常生活に取り入れることで、より効果的な便秘改善が期待できます。

Tantawyら(2017)の研究では、週3回、1回60分間のトレッドミル歩行を12週間継続した群において、便秘症状評価尺度と便秘関連QOL尺度が有意に改善したことが報告されています【文献3】。この研究は、継続的な有酸素運動が便秘改善に有効であることを示す重要なエビデンスです。

[1] 推奨される有酸素運動の種類と強度

便秘改善を目的とした有酸素運動では、激しい運動よりも中等度の強度で継続できる運動が推奨されます。高強度の運動は消化管への血流を減少させ、かえって消化機能に悪影響を与える可能性があるためです。

上記の運動は、週3回以上、1回20〜60分程度を目安に実施することが望ましいです。運動習慣のない人は、まず1日10〜15分程度のウォーキングから始め、徐々に時間と頻度を増やしていくことが推奨されます。

[2] 運動の継続と習慣化のための工夫

運動療法の効果を得るためには、継続的な実践が不可欠です。Dukasら(2003)の研究では、毎日運動する女性において便秘の有病率が最も低いことが示されており、運動頻度と便秘予防効果には正の相関があります【文献2】。そのため、運動を日常生活の中に習慣として定着させることが重要です。

上記の工夫を取り入れることで、運動を無理なく継続できるようになります。便秘改善のためには短期間の運動ではなく、長期的な運動習慣の形成が重要です。

■3. 体幹筋トレーニングと排便姿勢の改善

便秘改善のためには、有酸素運動に加えて体幹筋のトレーニングも有効です。高野(2019)は、便排出障害型の便秘に対して体幹筋トレーニングが効果的であると述べています【文献4】。腹横筋などの深層筋を鍛えることで、排便時に必要な腹圧を適切に高められるようになります。また、排便時の姿勢を改善することで、便の排出がスムーズになることも報告されています。

慢性便秘症診療ガイドライン2017では、便排出障害に対する理学療法としてバイオフィードバック療法や排便姿勢指導が推奨されています【文献5】。これらの方法は、骨盤底筋の協調運動を改善し、排便時の筋肉の使い方を最適化することを目的としています。

[1] 腹横筋を意識した体幹トレーニング

腹横筋は腹部の最も深層にある筋肉であり、排便時に腹圧を高める役割を担っています。高野(2019)は、腹横筋がうまく収縮せず内腹斜筋が過剰に収縮するなど、体幹筋を適切に使えていない場合に排便困難が生じることがあると指摘しています【文献4】。

  1. 四つん這いの姿勢(パピーポジション)をとり、背中を平らに保つ。
  2. 息をゆっくり吐きながら、おへそを背骨に近づけるように下腹部を引き上げる(ドローイン)。
  3. 下腹部を引き上げた状態を5〜10秒間保持し、その後ゆっくりと力を抜く。
  4. 上記の動作を10回程度繰り返し、1日2〜3セット実施する。

上記のドローイン運動は、腹横筋の収縮を意識的に学習するためのトレーニングです。この運動を継続することで、排便時に腹圧を適切に高められるようになり、便の排出がスムーズになることが期待できます。

[2] 排便時の姿勢改善による効果

排便時の姿勢は便の排出効率に大きく影響します。高野(2019)は、前傾姿勢をとることで直腸肛門角が開大し、排便が容易になることを前向き研究で報告しています【文献4】。また、足台を使用することで直腸圧が有意に上昇し、便排出率が増加することも確認されています。

上記の姿勢改善は、特に便排出障害型の便秘に対して有効です。うつぶせゴロゴロ寝体操で効果が得られない場合には、排便姿勢の見直しや体幹筋トレーニングを取り入れることで改善が期待できます。



まとめ

NHK「ためしてガッテン」で紹介された便秘体操、特にうつぶせゴロゴロ寝体操は、腸内に蓄積したガスを排出することで大蠕動の回復を促し、便秘を改善するという理論に基づいています。番組では、この体操によって便秘の人の約8割に効果が期待できると述べられており、1日わずか10分程度の実践で腸の動きが改善するという内容が多くの視聴者の関心を集めています。うつぶせの姿勢で10分間静止した後、体を左右に5往復転がすという単純な動作であるため、特別な器具や技術を必要とせず、誰でも自宅で取り組める点が特徴です。また、番組では大蠕動という腸の強力な収縮運動が便秘解消の鍵であり、腸内ガスがこの大蠕動を妨げているという説明がなされています。

しかしながら、この番組内容を学術的な観点から検証すると、補足すべき点や注意すべき点が存在します。運動療法が便秘改善に有効であることは複数の学術論文で支持されていますが、効果が確認されている運動の多くはウォーキングや気功などの有酸素運動です。Gaoら(2019)による9件のランダム化比較試験を対象としたメタ解析では、有酸素運動群の便秘改善効果はRR=2.42と統計的に有意であることが示されています【文献1】。一方、うつぶせゴロゴロ寝体操のような静的な体操については、直接的なエビデンスが限られています。うつぶせ姿勢による腹部圧迫がガス排出を促す可能性はありますが、腸管運動そのものを活性化する効果については科学的な検証が不足しているのが現状です。

また、Dukasら(2003)による62,036名の女性を対象とした大規模疫学研究では、毎日運動する女性は週1回未満しか運動しない女性と比較して便秘の有病率が44%低いことが報告されています【文献2】。さらに、運動と食物繊維摂取を組み合わせた場合、便秘の有病率は68%低下することも示されており、運動単独よりも食事との併用がより効果的であることがわかります。Tantawyら(2017)の研究でも、週3回60分間のトレッドミル歩行を含む運動プログラムを12週間継続した群において、便秘症状とQOLが有意に改善したことが確認されています【文献3】。これらの研究結果は、便秘改善のためには継続的な有酸素運動が重要であることを示唆しています。

便秘のタイプによって適切な対策が異なることも重要な視点です。慢性便秘症診療ガイドライン2017では、機能性便秘を大腸通過時間遅延型、大腸通過正常型、機能性便排出障害の3つに分類しています【文献5】。うつぶせゴロゴロ寝体操は主に腸内ガスの排出を目的としているため、ガス蓄積が便秘の主因となっている場合には一定の効果が期待できます。しかし、便意があるにもかかわらずスムーズに排便できない便排出障害型の便秘に対しては、この体操の効果は限定的です。高野(2019)は、便排出障害型の便秘に対してはバイオフィードバック療法や排便姿勢指導、体幹筋トレーニングが有効であると報告しており、便秘のタイプに応じた適切なアプローチを選択することの重要性を強調しています【文献4】。

便秘改善に効果的な体操の実践法としては、うつぶせゴロゴロ寝体操を取り入れつつ、有酸素運動や体幹筋トレーニングを組み合わせることが推奨されます。うつぶせ体操を実施する際には、おへその下に枕やクッションを敷いて腹部への圧迫を適度に加えること、食後2〜3時間は避けること、妊娠中や腹部手術直後は実施を控えることなどの注意点があります。有酸素運動としては、1日30分程度のウォーキングを週3回以上継続することが望ましく、運動習慣のない人はまず1日10〜15分程度から始めて徐々に時間と頻度を増やしていくことが推奨されます。また、便排出障害型の便秘に対しては、腹横筋を意識したドローイン運動や、前傾姿勢と足台を活用した排便姿勢の改善が有効です。

テレビ番組という性質上、放送時間の制約から詳細な注意点や適応条件が省略されている可能性があることを認識しておく必要があります。番組で紹介された方法をそのまま実践するのではなく、自分の便秘のタイプや健康状態を考慮したうえで、必要に応じて医療機関に相談することが望ましいです。便秘は単に排便回数が少ないだけでなく、残便感や排便困難感も含む多様な症状を呈する状態であり、その改善には個々の状態に応じた適切なアプローチが求められます。うつぶせゴロゴロ寝体操は便秘対策の選択肢の一つとして位置づけ、有酸素運動の継続、食物繊維と水分の適切な摂取、排便習慣の確立など、総合的な生活習慣の改善に取り組むことで、より確実な便秘解消が期待できます。



専門用語一覧



参考文献

  1. Gao R, Tao Y, Zhou C, Li J, Wang X, Chen L, et al. Exercise therapy in patients with constipation: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Scand J Gastroenterol. 2019;54(2):169-177.
  2. Dukas L, Willett WC, Giovannucci EL. Association between physical activity, fiber intake, and other lifestyle variables and constipation in a study of women. Am J Gastroenterol. 2003;98(8):1790-1796.
  3. Tantawy SA, Kamel DM, Abdelbasset WK, Elgohary HM. Effects of a proposed physical activity and diet control to manage constipation in middle-aged obese women. Diabetes Metab Syndr Obes. 2017;10:513-519.
  4. 高野正太. 便秘の食事療法, 運動療法, 理学療法. 日本大腸肛門病会誌. 2019;72(10):621-627.
  5. 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン2017. 東京: 南江堂; 2017.



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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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