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ためしてガッテンで話題の前立腺肥大と夜間頻尿:放送内容の医学的検証と正しい対処法

ためしてガッテンで話題の前立腺肥大と夜間頻尿:放送内容の医学的検証と正しい対処法

NHKの人気番組「ためしてガッテン(現:ガッテン!)」では、夜間頻尿前立腺肥大症の関係について複数回にわたり特集を組んでいます。番組では、夜中に何度もトイレに起きる症状の原因として、前立腺肥大症だけでなく下肢のむくみや水分の移動といった要因が紹介されています。この放送内容は多くの中高年男性の関心を集め、前立腺肥大症に対する認識を広める役割を果たしています。

しかし、テレビ番組の情報は限られた時間内で伝えられるため、医学的な正確性や詳細な治療選択肢については十分に説明されていない場合があります。前立腺肥大症は加齢に伴い極めて高い頻度で発症する疾患であり、80歳以上の男性では80%以上に組織学的な前立腺肥大が認められます【文献1】。したがって、番組で紹介された内容を医学的根拠に基づいて検証し、正確な理解を深めることが重要です。

本記事では、ためしてガッテンで紹介された前立腺肥大症と夜間頻尿に関する内容を整理したうえで、最新の医学的知見に基づいた検証を行い、適切な診断方法と治療選択肢について解説します。前立腺肥大症による下部尿路症状に悩む方々が、科学的根拠に基づいた判断を行えるよう、学術論文のデータを引用しながら詳しく説明していきます。

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ためしてガッテンで紹介された前立腺肥大症と夜間頻尿の内容

ためしてガッテンでは、夜間頻尿の原因として前立腺肥大症が取り上げられるとともに、多くの視聴者が知らなかった別の原因メカニズムも紹介されています。番組では、前国立長寿医療センター泌尿器科の医師が「第2の膀胱」という概念を用いて、下肢に蓄積された水分が夜間に尿として排出される現象を説明しています。この内容は、夜間頻尿が必ずしも前立腺肥大症だけに起因するわけではないという重要な視点を提供しています。

番組の構成では、まず夜間頻尿で悩む男性の実例を紹介し、その後に医学的な説明と対策方法が示されています。特に印象的なのは、昼間の生活習慣が夜間の排尿回数に影響を与えるという指摘です。長時間の立ち仕事や座位姿勢により下肢に水分が貯留し、就寝後に横になることで血液循環が改善され、蓄積された水分が腎臓で処理されて尿として排出されるというメカニズムが解説されています。

さらに番組では、夜間頻尿の改善方法として、単に前立腺肥大症の治療だけでなく、昼間の下肢のむくみ対策や水分摂取のタイミング調整なども提案されています。これらの対策は、前立腺肥大症以外の要因による夜間頻尿にも効果が期待できるという内容です。ただし、これらの情報が医学的にどこまで正確で、どのような患者に適用可能なのかについては、詳細な検証が必要です。

■1. 番組で説明された夜間頻尿の定義と頻度

ためしてガッテンでは、夜間頻尿を「夜中に2回以上トイレに起きる状態」として定義しています。この定義は、一般的な医学的基準とも一致しており、視聴者にとって理解しやすい形で提示されています。番組では、この症状が中高年男性に非常に多く見られ、生活の質を大きく低下させる要因となっていることが強調されています。

また、夜間頻尿の頻度については、加齢とともに増加する傾向が示されています。番組では具体的な統計データとして、50歳以上の男性における夜間頻尿の有病率が説明され、多くの視聴者が自身の症状と照らし合わせることができる内容となっています。しかし、夜間頻尿の背景にある原因は多様であり、前立腺肥大症だけでなく、膀胱機能の変化、心臓や腎臓の疾患、糖尿病なども関与することが医学的には知られています。

[1] 夜間頻尿が生活に与える影響

番組では、夜間頻尿が単に排尿回数の問題だけでなく、睡眠の質の低下、日中の倦怠感、転倒リスクの増加など、生活全般に悪影響を及ぼすことが説明されています。特に高齢者では、夜間のトイレ移動中の転倒が骨折につながり、要介護状態に陥るリスクもあると指摘されています。

これらの影響は、単なる不便という範囲を超えて、患者の身体的・精神的健康、さらには社会生活全体に及ぶ深刻な問題です。したがって、夜間頻尿は積極的に治療すべき症状であり、我慢すべきものではないという番組のメッセージは適切です。

[2] 番組が提示した夜間頻尿の自己診断方法

ためしてガッテンでは、視聴者が自分自身で夜間頻尿のタイプを判断するための簡易的な方法が紹介されています。具体的には、1日の排尿回数や夜間の排尿回数を記録する排尿日誌の作成が推奨されています。また、夜間の排尿量が1日の総排尿量の33%以上を占める場合は「夜間多尿」に該当すると説明されています。

これらの自己診断方法は、医療機関を受診する際の基礎情報として有用ですが、最終的な診断は医師による総合的な評価が必要です。番組で紹介された方法はあくまで症状のタイプを推測するための手段であり、自己判断のみで治療方針を決定すべきではありません。

■2. 番組で解説された第2の膀胱理論

ためしてガッテンで特に注目された内容が「第2の膀胱」という概念です。これは、下肢に蓄積された水分が実質的に膀胱のように機能し、夜間に尿として排出されるという考え方です。番組では、昼間に立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢を続けることで、重力により下肢に水分がうっ滞し、むくみが生じることが説明されています。

この理論によれば、就寝して横になることで下肢に蓄積された水分が血液循環により再び全身に戻り、腎臓で濾過されて尿として生成されます。その結果、夜間の尿産生量が増加し、頻繁にトイレに起きる必要が生じるというメカニズムです。加齢とともに血管の機能が低下し、水分が下肢に貯留しやすくなることも、高齢者で夜間頻尿が多い理由の一つとして示されています。

[1] 下肢のむくみと夜間頻尿の関係

番組では、下肢のむくみ(浮腫)が夜間頻尿の重要な原因の一つであることが強調されています。特に、心臓や腎臓の機能が低下している高齢者では、体液の調節機能が衰え、日中に下肢に水分が貯留しやすくなります。この水分が夜間に尿として排出されることで、夜間多尿が生じるという説明です。

この説明は医学的にも妥当な内容であり、夜間多尿の一因として下肢浮腫が関与することは泌尿器科領域でも認識されています。ただし、すべての夜間頻尿が下肢のむくみだけで説明できるわけではなく、前立腺肥大症による膀胱刺激症状や膀胱容量の減少なども重要な要因です。

[2] 番組が推奨した下肢むくみ対策

ためしてガッテンでは、下肢のむくみを軽減することで夜間頻尿を改善する方法がいくつか提案されています。具体的には、日中に適度な運動を行うこと、長時間同じ姿勢を避けること、弾性ストッキングを使用すること、就寝前の数時間は下肢を挙上する姿勢をとることなどが紹介されています。

  1. 日中に適度な運動やウォーキングを行い下肢の血液循環を促進します。
  2. 長時間の立位や座位を避け定期的に姿勢を変えます。
  3. 弾性ストッキングを使用して下肢の水分貯留を予防します。
  4. 夕方以降は下肢を挙上する姿勢をとり水分の移動を促します。
  5. 就寝の2~3時間前に軽い運動を行い余分な水分を排出します。

これらの対策は、下肢浮腫が主な原因である夜間多尿には効果が期待できます。しかし、前立腺肥大症による膀胱出口閉塞や膀胱機能障害が主因である場合には、これらの生活習慣改善だけでは十分な効果が得られない可能性があります。したがって、症状の原因を正確に診断したうえで、適切な対策を選択することが重要です。

■3. 番組における前立腺肥大症の説明内容

ためしてガッテンでは、前立腺肥大症そのものについても説明がなされています。前立腺は膀胱の下に位置する男性特有の臓器であり、尿道を取り囲むように存在します。加齢とともに前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿障害が生じるという基本的なメカニズムが解説されています。

番組では、前立腺肥大症の症状として、尿が出にくい、尿の勢いが弱い、排尿後も残尿感がある、頻尿、夜間頻尿などが挙げられています。また、前立腺肥大症は加齢に伴い極めて高頻度に発症する疾患であり、50歳以上の男性の約半数に何らかの症状が現れると説明されています。これらの情報は、視聴者に前立腺肥大症の一般的な理解を促す内容となっています。

[1] 番組が示した前立腺肥大症の危険因子

ためしてガッテンでは、前立腺肥大症のリスク因子についても触れられています。最も重要な因子は加齢であり、年齢が上がるほど発症率が高くなることが強調されています。また、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病との関連も指摘されており、メタボリックシンドロームが前立腺肥大症のリスクを高める可能性があると説明されています。

これらの危険因子に関する説明は、医学的にも支持される内容です。ただし、番組では時間の制約上、各因子がどの程度のリスク増加をもたらすのか、また予防的介入がどの程度有効なのかについての詳細な情報は提供されていません。

[2] 番組が紹介した前立腺肥大症の治療選択肢

ためしてガッテンでは、前立腺肥大症の治療方法についても簡単に触れられています。軽度の症状では生活習慣の改善や経過観察が選択され、中等度以上の症状では薬物療法が導入されると説明されています。また、薬物療法で効果が不十分な場合や重症例では手術療法が検討されるという治療の段階的なアプローチが示されています。

  1. 軽度の症状では生活習慣の改善と定期的な経過観察を行います。
  2. 中等度の症状では薬物療法が第一選択として導入されます。
  3. 薬物療法で効果不十分な場合は手術療法を検討します。
  4. 急性尿閉などの合併症が生じた場合は緊急処置が必要です。
  5. 治療方針は症状の重症度と患者の希望を考慮して決定されます。

番組で示された治療の流れは、一般的な診療ガイドラインとも概ね一致しています。しかし、具体的な薬剤の種類や作用機序、手術方法の詳細、各治療の効果や副作用については、番組の時間内では十分に説明されていません。これらの詳細な情報は、実際の医療機関での診療において医師から説明を受けることが重要です。



前立腺肥大症の医学的実態:ためしてガッテンの内容を検証する

ためしてガッテンで紹介された前立腺肥大症と夜間頻尿に関する内容は、視聴者にわかりやすく構成されていますが、医学的根拠に基づいた検証が必要です。前立腺肥大症は組織学的な前立腺の過形成を意味し、必ずしもすべての患者で症状が出現するわけではありません。実際に、剖検研究によると31~40歳の8%、51~60歳の40~50%、80歳以上では80%以上に前立腺肥大が認められますが、症状を伴う臨床的前立腺肥大症の頻度はこれより低くなります【文献1】。

番組で強調された「第2の膀胱」理論や下肢のむくみと夜間頻尿の関係は、医学的にも一定の妥当性があります。しかし、前立腺肥大症による下部尿路症状夜間多尿は別個の病態であり、両者が混在する症例も多く存在します。下部尿路症状の原因は前立腺肥大だけでなく、膀胱機能障害、神経因性膀胱、加齢による膀胱容量の減少など多岐にわたります【文献2】。したがって、番組の内容を正しく理解するためには、医学的な背景知識が不可欠です。

本章では、番組で紹介された内容について、最新の学術論文や診療ガイドラインに基づいて詳細に検証します。前立腺肥大症の疫学データ、病態生理学的メカニズム、夜間頻尿との関連、そして番組で提案された対策の医学的妥当性について、科学的根拠を示しながら解説します。これにより、読者は番組の情報を適切に解釈し、自身の症状に対する正しい判断ができるようになります。

■1. 前立腺肥大症の疫学的実態と番組内容の整合性

ためしてガッテンでは、前立腺肥大症が中高年男性に極めて高頻度に発症すると説明されています。この説明は医学的データと一致しており、大規模な疫学研究でも裏付けられています。Berry らの研究では、10の独立した研究から1,000以上の前立腺を分析した結果、病理学的前立腺肥大症の有病率は40代で8%、51~60歳で50%に達することが報告されています【文献1】。この加齢に伴う有病率の上昇は、番組で示された内容と合致します。

しかし、重要な点は、組織学的な前立腺肥大の存在と臨床症状の出現は必ずしも一致しないことです。前立腺肥大があっても症状を伴わない場合も多く、逆に前立腺のサイズが比較的小さくても重度の下部尿路症状を呈する患者も存在します。この乖離は、症状の発現が前立腺サイズだけでなく、膀胱出口閉塞の程度、膀胱機能、前立腺内の平滑筋成分の割合など複数の要因に依存するためです【文献2】。番組では時間の制約上、この複雑な関係について詳細に説明されていません。

[1] 年齢別の前立腺肥大症有病率

前立腺肥大症の有病率は年齢とともに顕著に増加します。正常な前立腺は21~30歳で約20±6gmに達し、前立腺肥大症が発症しない限りこの重量は加齢によってもほぼ一定に保たれます【文献1】。一方、前立腺肥大症を発症した場合、前立腺の平均重量は約33±16gmとなり、症例によってはさらに大きくなることがあります【文献1】。

これらのデータは、ためしてガッテンで50歳以上の男性の約半数に何らかの症状が現れるという説明の根拠となっています。しかし、症状の定義や重症度によって有病率は変動するため、すべての前立腺肥大が治療を要するわけではないという点を理解することが重要です。

[2] 前立腺サイズと症状の関係

番組では、前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され排尿障害が生じるという単純化されたメカニズムが説明されています。このメカニズムは基本的には正しいものの、実際の臨床現場ではより複雑です。前立腺肥大症では、肥大した前立腺による機械的閉塞と前立腺平滑筋の緊張による機能的閉塞の両方が関与します【文献2】。

したがって、前立腺肥大症の診断と治療方針の決定には、前立腺サイズだけでなく、症状の重症度、尿流測定、残尿量測定、膀胱機能評価など多面的な評価が必要です。番組で示された単純化されたモデルは理解しやすい反面、個々の患者における症状の多様性を十分に反映していません。

■2. 夜間頻尿のメカニズムに関する医学的検証

ためしてガッテンで紹介された「第2の膀胱」理論、すなわち下肢に蓄積された水分が夜間に尿として排出されるメカニズムは、医学的にも認められている現象です。この現象は「夜間多尿」と呼ばれ、夜間の尿産生量が1日の総尿量の33%以上を占める状態と定義されます。加齢により血液を循環させる機能が低下し、日中に下肢に水分が貯留しやすくなることが原因の一つです。

しかし、夜間頻尿の原因は夜間多尿だけではありません。前立腺肥大症による膀胱出口閉塞が存在する場合、膀胱容量の減少や膀胱過活動が生じ、1回の排尿量が少なくなるため頻回にトイレに起きる必要が生じます。また、前立腺肥大症患者の50~70%には過活動膀胱が合併しており、尿意切迫感や切迫性尿失禁が夜間頻尿の原因となります。したがって、夜間頻尿は単一の原因ではなく、複数の病態が重なって発症することが多いのです。

[1] 夜間多尿と前立腺肥大症の鑑別

ためしてガッテンで紹介された排尿日誌を用いた自己診断方法は、夜間多尿と前立腺肥大症による膀胱機能障害を鑑別するうえで有用です。夜間の排尿量が1日の総排尿量の33%以上を占める場合は夜間多尿が主因であり、下肢のむくみ対策や水分摂取のタイミング調整が効果的です。一方、夜間の排尿回数は多いが1回の排尿量が少ない場合は、膀胱容量の減少や膀胱過活動が疑われます。

  1. 24時間の排尿回数と各回の排尿量を記録します。
  2. 夜間の総排尿量と日中の総排尿量を計算します。
  3. 夜間排尿量が1日の総排尿量の33%以上であれば夜間多尿と判断します。
  4. 夜間の排尿回数が多く1回量が少ない場合は膀胱機能障害を疑います。
  5. 両者が混在する症例も多く存在します。

この鑑別は治療方針の決定に重要です。夜間多尿が主因であれば、生活習慣の改善や利尿薬の調整、心不全や腎機能障害の治療が優先されます。一方、前立腺肥大症による膀胱機能障害が主因であれば、前立腺肥大症に対する薬物療法や手術療法が必要となります【文献4】。

[2] 前立腺肥大症と過活動膀胱の合併

番組ではあまり詳しく触れられていませんが、前立腺肥大症患者では過活動膀胱の合併が非常に高頻度です。膀胱出口閉塞が持続すると、膀胱壁の肥厚や膀胱機能の変化が生じ、少量の尿でも強い尿意を感じるようになります。この状態では、夜間に何度もトイレに起きる必要が生じますが、これは下肢のむくみとは無関係です。

過活動膀胱を合併している場合、前立腺肥大症の治療に加えて、抗コリン薬やβ3作動薬などの膀胱機能改善薬の併用が必要になることがあります【文献4】。番組で紹介された下肢のむくみ対策だけでは、このタイプの夜間頻尿には効果が限定的です。したがって、症状の原因を正確に診断することが適切な治療につながります。

■3. 番組で紹介された対策の医学的妥当性

ためしてガッテンで提案された下肢のむくみ対策は、夜間多尿が主因である夜間頻尿に対しては医学的にも妥当な方法です。弾性ストッキングの使用、下肢挙上、適度な運動などは、下肢の水分貯留を減少させ、夜間の尿産生量を抑制する効果が期待できます。これらの対策は非侵襲的であり、副作用のリスクも低いため、試みる価値があります。

しかし、前立腺肥大症による膀胱出口閉塞や膀胱機能障害が主因である場合、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られません。このような症例では、薬物療法が必要となります。前立腺肥大症の標準的な薬物療法には、α1遮断薬5α還元酵素阻害薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬などがあり、症状や前立腺のサイズに応じて選択されます【文献4】。また、薬物療法で効果不十分な場合や合併症が生じた場合には、手術療法が検討されます【文献4】。

[1] 生活習慣改善の効果と限界

番組で紹介された生活習慣の改善は、軽度の症状や夜間多尿が主因である症例には効果的です。水分摂取のタイミング調整、カフェインやアルコールの制限、適度な運動、規則正しい排尿習慣などは、症状の軽減に寄与します。これらの対策は、薬物療法や手術療法の前段階として、またはこれらの治療と併用する形で推奨されます。

ただし、これらの生活習慣改善は軽度から中等度の症状には有効ですが、重度の症状や合併症を伴う症例では不十分です。また、生活の質を著しく損なう症状に対しては、積極的な薬物療法や手術療法が必要となります。番組の情報を参考にしつつも、症状が改善しない場合や悪化する場合には、必ず医療機関を受診することが重要です。

[2] 医療機関受診の判断基準

ためしてガッテンでは、自己診断や生活習慣の改善が強調されていますが、以下のような症状や状況では速やかに医療機関を受診する必要があります。これらは前立腺肥大症の進行や合併症の可能性を示唆するサインであり、専門的な評価と治療が必要です。

前立腺肥大症は進行性の疾患であり、適切な治療を行わないと症状が徐々に悪化し、急性尿閉、膀胱結石、腎機能障害などの合併症を引き起こす可能性があります。番組で紹介された情報は有用ですが、あくまで初期対応や予防的な側面に限定されるため、症状が持続する場合には専門医による診断と治療が不可欠です【文献2】。



前立腺肥大症による夜間頻尿の正しい治療と対処法

前立腺肥大症による下部尿路症状に対する治療は、症状の重症度、前立腺のサイズ、患者の年齢や合併症、生活の質への影響度などを総合的に評価したうえで決定されます。ためしてガッテンで紹介された生活習慣の改善は重要な第一歩ですが、中等度以上の症状や生活の質を著しく損なう症状に対しては、薬物療法や手術療法などの医学的介入が必要です。現在では複数の治療選択肢があり、個々の患者の状況に応じた最適な治療法を選択することが可能です【文献4】。

薬物療法は前立腺肥大症の初期治療として広く用いられており、α1遮断薬5α還元酵素阻害薬が中心的な役割を果たします。これらの薬剤は作用機序が異なるため、前立腺のサイズや症状のタイプに応じて使い分けられます。α1遮断薬は前立腺と膀胱頸部の平滑筋を弛緩させることで機能的閉塞を解除し、比較的速やかに症状を改善します。一方、5α還元酵素阻害薬は前立腺を縮小させることで機械的閉塞を解除しますが、効果の発現には数ヶ月を要します【文献3】。

薬物療法で効果が不十分な場合や、急性尿閉などの合併症が生じた場合には手術療法が検討されます。手術療法にはいくつかの方法があり、経尿道的前立腺切除術が長年にわたり標準的な治療として行われてきました。近年では、レーザーを用いた低侵襲手術や新しい治療技術も導入されており、患者の状態や前立腺のサイズに応じて最適な手術方法が選択されます【文献4】。本章では、これらの治療選択肢について詳しく解説します。

■1. 前立腺肥大症の正確な診断方法と評価

適切な治療を選択するためには、まず正確な診断と症状の評価が必要です。前立腺肥大症の診断は、病歴聴取、身体診察、各種検査を組み合わせて行われます。初診時には、排尿症状の詳細な聴取とともに、国際前立腺症状スコアなどの質問票を用いて症状の重症度を客観的に評価します。また、前立腺がんなど他の疾患を鑑別するための検査も同時に行われます【文献4】。

基本的な検査には、尿検査、前立腺特異抗原検査、直腸指診、超音波検査、尿流測定、残尿測定などがあります。これらの検査により、前立腺のサイズ、膀胱出口閉塞の程度、膀胱機能の状態を評価し、治療方針を決定します。症例によっては、膀胱鏡検査や尿流動態検査などの専門的な検査が追加されることもあります。これらの検査結果を総合的に判断することで、個々の患者に最適な治療法を選択することができます【文献4】。

[1] 症状スコアによる重症度評価

国際前立腺症状スコアは、前立腺肥大症の症状を客観的に評価するための標準的なツールです。7つの質問項目から構成され、各項目を0~5点で評価し、合計点で症状の重症度を判定します。この評価により、軽症、中等症、重症の分類が可能となり、治療方針の決定や治療効果の判定に用いられます。

合計スコアが0~7点は軽症、8~19点は中等症、20~35点は重症と分類されます。軽症例では経過観察や生活習慣の改善が選択されることが多く、中等症以上では薬物療法が導入されます。重症例や生活の質が著しく損なわれている場合には、手術療法も検討されます。この症状スコアは治療前だけでなく、治療開始後も定期的に評価され、治療効果の判定に用いられます。

[2] 前立腺サイズと膀胱機能の評価

前立腺のサイズは、経直腸超音波検査や経腹超音波検査により測定されます。前立腺体積が30mL以上の場合、5α還元酵素阻害薬の効果が期待できるため、薬剤選択の重要な判断材料となります。また、膀胱機能の評価として、尿流測定と残尿測定が行われます。最大尿流速度が10mL/秒未満、残尿量が50mL以上の場合、膀胱出口閉塞が示唆されます。

  1. 超音波検査により前立腺の体積を測定します。
  2. 尿流測定装置を用いて排尿の勢いと排尿時間を記録します。
  3. 排尿直後に超音波またはカテーテルで残尿量を測定します。
  4. これらの結果を統合して膀胱出口閉塞の程度を評価します。
  5. 必要に応じて膀胱鏡検査や尿流動態検査を追加します。

これらの検査結果は、治療方針の決定に重要な情報を提供します。前立腺体積が30mL以上の症例では5α還元酵素阻害薬の併用が有効であり、残尿量が多い症例では手術療法の適応を検討する必要があります。また、尿流測定で閉塞の程度が軽度であるにもかかわらず症状が強い場合は、膀胱機能障害や過活動膀胱の合併が疑われ、治療方針が変わることがあります【文献2】。

■2. 薬物療法による症状改善と前立腺縮小

前立腺肥大症の薬物療法は、症状の改善と疾患進行の抑制を目的として行われます。現在、日本で使用可能な主要な薬剤には、α1遮断薬5α還元酵素阻害薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬があり、これらを単剤または併用で使用します。α1遮断薬とホスホジエステラーゼ5阻害薬は初期治療の第一選択薬として位置づけられており、比較的速やかな症状改善が期待できます【文献4】。

前立腺体積が30mL以上の症例では、5α還元酵素阻害薬の追加または併用が推奨されます。5α還元酵素阻害薬は、前立腺を25~30%縮小させることで長期的な症状改善と疾患進行の抑制効果を発揮します。特に、α1遮断薬との併用療法は、大規模臨床試験であるMTOPS試験において、単剤療法よりも優れた効果が証明されています【文献5】。この試験では、併用療法により臨床進行のリスクが有意に減少することが示されました【文献5】。

[1] α1遮断薬の作用機序と効果

α1遮断薬は、前立腺と膀胱頸部の平滑筋に存在するα1受容体を遮断することで、筋緊張を緩和し尿道の抵抗を減少させます。前立腺肥大症における下部尿路閉塞は、肥大した前立腺による機械的閉塞と平滑筋緊張による機能的閉塞の両方が関与しており、α1遮断薬は後者に対して効果を発揮します。効果は内服開始後数日から1週間程度で現れることが多く、速やかな症状改善が期待できます。

日本で使用可能なα1遮断薬には、タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルなどがあります。これらの薬剤はα1A受容体に選択性が高く、血管への影響が少ないため、起立性低血圧などの副作用が軽減されています。ただし、逆行性射精という射精障害が生じることがあり、妊娠を希望するカップルでは注意が必要です。また、眼科手術を受ける際には術中虹彩緊張低下症候群のリスクがあるため、事前に眼科医に服用を伝える必要があります。

[2] 5α還元酵素阻害薬による前立腺縮小効果

5α還元酵素阻害薬は、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害することで、前立腺細胞の増殖を抑制し前立腺を縮小させます。ジヒドロテストステロンは前立腺組織で発現するアンドロゲン受容体を活性化し、前立腺細胞の増殖を促進する重要な因子です【文献3】。5α還元酵素の活性を抑制することで、ジヒドロテストステロンの合成が減少し、前立腺の縮小が得られます【文献3】。

日本で使用可能な5α還元酵素阻害薬はデュタステリドであり、前立腺体積が30mL以上の症例に適応があります。MTOPS試験では、フィナステリド単剤療法により臨床進行リスクが有意に減少し、特に急性尿閉のリスクが68%減少することが示されました【文献5】。さらに、ドキサゾシンとの併用療法では、臨床進行リスクが81%減少し、単剤療法よりも優れた効果が得られました【文献5】。この結果は、大きな前立腺を有する症例では併用療法が推奨される根拠となっています。

[3] 併用療法と過活動膀胱治療薬

前立腺肥大症に過活動膀胱を合併している症例では、α1遮断薬に加えて抗コリン薬またはβ3作動薬の併用が検討されます。過活動膀胱は前立腺肥大症患者の50~70%に合併しており、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁などの症状を引き起こします。これらの症状は前立腺肥大症の治療だけでは改善しないため、膀胱機能改善薬の追加が必要となります【文献4】。

  1. まずα1遮断薬による前立腺肥大症の治療を開始します。
  2. 蓄尿症状が残存する場合は過活動膀胱の合併を評価します。
  3. 抗コリン薬またはβ3作動薬の追加を検討します。
  4. 前立腺体積が大きい場合は5α還元酵素阻害薬の併用も考慮します。
  5. 定期的に症状スコアと残尿量を評価し治療効果を判定します。

抗コリン薬は膀胱の過剰な収縮を抑制することで蓄尿症状を改善しますが、口内乾燥や便秘などの副作用があります。β3作動薬は膀胱の弛緩を促進することで蓄尿機能を改善し、抗コリン薬よりも副作用が少ないとされています。ただし、これらの薬剤は残尿を増加させる可能性があるため、残尿量が多い症例では慎重に使用する必要があります。治療開始後は定期的に残尿量を測定し、安全性を確認することが重要です【文献4】。

■3. 手術療法と最新の治療技術

薬物療法で効果が不十分な場合、急性尿閉を繰り返す場合、膀胱結石や腎機能障害などの合併症が生じた場合には、手術療法が検討されます。手術療法の目的は、肥大した前立腺組織を除去または縮小させることで、膀胱出口閉塞を解除し排尿機能を改善することです。経尿道的前立腺切除術は長年にわたり標準的な手術として行われてきましたが、近年では様々な新しい治療技術が開発されています【文献4】。

手術療法の選択は、前立腺のサイズ、患者の年齢、合併症の有無、患者の希望などを総合的に考慮して行われます。前立腺体積が80~100mL以上の大きな前立腺に対しては、レーザー核出術や開腹手術が選択されることがあります。一方、中等度のサイズの前立腺に対しては、経尿道的前立腺切除術やレーザー蒸散術などが一般的に行われます。また、低侵襲治療として前立腺動脈塞栓術や水蒸気治療なども導入されており、患者の状態に応じた治療選択が可能となっています【文献4】。

[1] 経尿道的前立腺切除術の実際

経尿道的前立腺切除術は、尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺組織を電気メスで切除する手術です。この手術は長年にわたり前立腺肥大症の標準的治療として行われており、症状改善効果と長期成績が確立されています。手術時間は前立腺のサイズにより異なりますが、通常1~2時間程度であり、入院期間は3~7日程度です。

経尿道的前立腺切除術の主な合併症には、術中術後の出血、尿失禁、尿道狭窄、逆行性射精などがあります。出血は術中に止血処置が行われますが、術後数週間は血尿が続くことがあります。尿失禁は多くの場合一時的であり、数週間から数ヶ月で改善しますが、永続的な尿失禁が生じる頻度は約1%程度です。逆行性射精は約60~80%の症例で生じるため、妊娠を希望する場合には手術前に十分な説明を受けることが重要です【文献4】。

[2] レーザー治療と低侵襲手術

近年、ホルミウムレーザーやツリウムレーザーを用いた前立腺核出術が普及しています。これらの手術は、レーザーにより前立腺腺腫を膀胱内に核出し、細切して摘出する方法です。経尿道的前立腺切除術と比較して出血が少なく、抗凝固薬を服用している患者でも比較的安全に施行できる利点があります。また、大きな前立腺に対しても対応可能です【文献4】。

その他の低侵襲治療として、前立腺尿道拳上術、水蒸気治療、前立腺動脈塞栓術などがあります。これらの治療は、手術侵襲が小さく外来または短期入院で施行できる利点がありますが、長期成績については経尿道的前立腺切除術レーザー核出術と比較してまだ十分に確立されていません。患者の年齢、合併症の有無、前立腺のサイズ、症状の重症度などを総合的に評価し、個々の患者に最適な治療法を選択することが重要です【文献4】。



まとめ

本記事では、ためしてガッテンで紹介された前立腺肥大症と夜間頻尿に関する内容を医学的観点から検証し、正しい治療法と対処法について解説しました。番組では夜間頻尿の原因として下肢のむくみに着目した第2の膀胱理論が紹介され、生活習慣の改善による対策が提案されました。医学的検証の結果、番組で紹介された内容の多くは疫学的データや臨床研究と整合しており、特に下肢のむくみと夜間多尿の関連性は医学的にも認められています。一方で、前立腺肥大症による夜間頻尿のメカニズムは複雑であり、膀胱出口閉塞過活動膀胱夜間多尿などの複数の要因が関与しています【文献2】【文献4】。

治療に関しては、症状の重症度や前立腺のサイズ、患者の年齢や合併症に応じて、生活習慣の改善、薬物療法、手術療法を適切に組み合わせることが重要です。軽症例では番組で紹介されたような生活習慣の改善が有効ですが、中等症以上の症例では薬物療法が必要となります。α1遮断薬は速やかな症状改善をもたらし、前立腺体積が30mL以上の症例では5α還元酵素阻害薬の併用により長期的な疾患進行抑制効果が得られます【文献5】。薬物療法で効果が不十分な場合や、急性尿閉などの合併症が生じた場合には、経尿道的前立腺切除術やレーザー治療などの手術療法が検討されます【文献4】。

前立腺肥大症は加齢とともに有病率が上昇し、50歳代で50%、80歳以上で80%以上の男性に認められる非常に一般的な疾患です【文献1】。夜間頻尿は睡眠の質を低下させ、日中の活動性や生活の質に大きな影響を及ぼします。症状がある場合は自己判断せず、泌尿器科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。国際前立腺症状スコアが8点以上、夜間排尿回数が2回以上、生活の質に影響がある場合は、医療機関での評価が推奨されます。早期に適切な治療を開始することで、症状の改善だけでなく、急性尿閉や腎機能障害などの重篤な合併症を予防することができます。

また、前立腺肥大症の症状は前立腺がんと重複することがあるため、前立腺特異抗原検査や直腸指診による鑑別診断も重要です。特に50歳以上の男性や、血尿、体重減少、骨痛などの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。ためしてガッテンで紹介された生活習慣の改善は、前立腺肥大症の予防や軽症例の管理に有効ですが、中等症以上の症例では専門的な医療介入が必要です。症状が気になる場合は、まず泌尿器科を受診し、自分の状態を正確に把握したうえで、医師と相談しながら最適な治療法を選択してください。適切な治療により、多くの患者で症状の改善と生活の質の向上が期待できます。



専門用語一覧



参考文献一覧

  1. Berry SJ, Coffey DS, Walsh PC, Ewing LL. The development of human benign prostatic hyperplasia with age. J Urol. 1984;132(3):474-479.
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  5. McConnell JD, Roehrborn CG, Bautista OM, et al. The long-term effect of doxazosin, finasteride, and combination therapy on the clinical progression of benign prostatic hyperplasia. N Engl J Med. 2003;349(25):2387-2398.



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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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