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ためしてガッテンの夜間頻尿対策は本当に効くのか|医学的検証と原因別対処法

ためしてガッテンの夜間頻尿対策は本当に効くのか|医学的検証と原因別対処法

夜中に何度もトイレに起きる夜間頻尿は、加齢とともに増加する症状であり、日本では40歳以上の約7割が夜間に1回以上排尿のために起きるという疫学データが報告されています【文献3】。そのため、多くの人がこの症状に悩み、テレビ番組で紹介される改善法に関心を寄せるのは当然のことです。2020年7月にNHK「ガッテン!(旧ためしてガッテン)」で放送された夜間頻尿特集は、ふくらはぎのむくみと夜間頻尿の関係を取り上げ、弾性ストッキングや足上げといった対策を紹介して大きな反響を呼びました。

しかし、テレビ番組で紹介される健康情報は、わかりやすさを優先するあまり、医学的な正確性や適用範囲が十分に伝わらないことがあります。夜間頻尿の原因は単一ではなく、夜間多尿膀胱容量の低下、睡眠障害など複数の要因が複雑に絡み合っており、すべての患者に同じ対策が有効とは限りません。したがって、番組で紹介された方法が自分に合うかどうかを判断するには、その医学的根拠と限界を正しく理解する必要があります。

本記事では、ためしてガッテンで放送された夜間頻尿対策の内容を整理したうえで、学術論文に基づいてその医学的妥当性を検証します。さらに、番組では十分に触れられなかった夜間頻尿の他の原因と、それぞれに対応した正しい対処法についても解説します。夜間頻尿に悩む方が、自分の症状に合った適切な対策を選択するための判断材料を提供することが本記事の目的です。

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ためしてガッテンで紹介された夜間頻尿の原因と対策

2020年7月15日に放送されたNHK「ガッテン!」では、夜間頻尿の原因として「ふくらはぎに溜まった水分」という概念が紹介されました。番組によると、日中に立ったり座ったりしている間に重力の影響で水分がふくらはぎに溜まり、夜間に横になるとその水分が血液中に戻って尿として排出されるため、夜中に何度もトイレに起きることになるという説明でした。この現象は特に高齢者に顕著であり、若年者との比較実験によってその違いが視覚的に示されました。

番組では、この「ふくらはぎのむくみ」を解消することで夜間頻尿を改善できるとして、具体的な対策が複数紹介されました。弾性ストッキングの着用、就寝前の足上げ運動、夕方のウォーキングなどがその代表例です。これらの方法は薬を使わない行動療法として紹介され、実際に番組内で紹介された男性は、これらの対策を実践することで夜間頻尿が改善し、睡眠の質が向上したと報告されました。

この放送は多くの視聴者に影響を与え、泌尿器科の外来でも「ためしてガッテンで見た方法を試したい」という相談が増加しました。番組が提示した「ふくらはぎ=第2の膀胱」という比喩的表現は非常にわかりやすく、夜間頻尿と下肢のむくみの関係を一般の人に広く認知させることに貢献しました。しかし、この説明がすべての夜間頻尿患者に当てはまるわけではないことを理解しておく必要があります。

■. 番組が説明した夜間頻尿のメカニズム

ためしてガッテンでは、夜間頻尿の原因を「夜間多尿」という概念で説明しました。夜間多尿とは、1日の尿量のうち夜間に産生される尿の割合が異常に高い状態を指します。番組の説明によると、高齢者では日中に摂取した水分の多くがふくらはぎの間質(細胞と細胞の間の空間)に溜まり、夜間に横になることでその水分が血管内に戻り、腎臓で尿として処理されるため夜間の尿量が増加するとされています。

番組内では、若年者と高齢者が同じ生活を1日送り、尿の出方を比較する実験が行われました。その結果、若年者は日中のうちに摂取した水分のほとんどを尿として排出するのに対し、高齢者は就寝後に多くの水分が尿として排出されることが示されました。この実験結果は、加齢によって体液調節機能が変化し、日中に下肢へ水分が貯留しやすくなることを視覚的に示すものでした。

[1] 下肢への水分貯留が起こる理由

人間の体は常に重力の影響を受けており、立位や座位の状態が続くと血液や体液は下肢に移動しやすくなります。若年者では血管の弾力性や筋肉のポンプ機能が十分に働くため、この下肢への水分貯留は最小限に抑えられます。しかし、加齢に伴って血管機能や筋力が低下すると、日中に下肢へ移動した水分を効率的に循環させることが難しくなり、ふくらはぎを中心に水分が貯留するようになります。

これらの要因が複合的に作用することで、高齢者では日中にふくらはぎを中心とした下肢に水分が溜まりやすくなります。そして夜間に横になると重力の影響がなくなり、貯留していた水分が血管内に戻って腎臓に運ばれ、尿として産生されるという流れが生じます。この現象が夜間多尿の一因となり、結果として夜間頻尿を引き起こすことになります。

[1] 夜間多尿の定義と判定基準

夜間多尿は医学的に明確な定義があり、夜間頻尿診療ガイドラインでは「夜間の尿量が1日総尿量の33%以上を占める状態」を夜間多尿と定義しています。この判定には排尿日誌が用いられ、24時間の排尿時刻と排尿量を記録することで夜間尿量の割合を算出します。夜間頻尿を訴える患者の多くがこの夜間多尿に該当するとされており、ある研究では夜間頻尿患者の約67%が夜間多尿を有していたと報告されています。

  1. 排尿日誌を用いて24時間の全排尿量を記録します。
  2. 就寝から起床までの夜間尿量を合計します。
  3. 夜間尿量÷24時間尿量×100で夜間多尿指数を算出します。
  4. この値が33%以上であれば夜間多尿と判定されます。

夜間多尿の有無を確認することは、適切な治療法を選択するうえで非常に重要です。番組で紹介された弾性ストッキングや足上げ運動は、主に夜間多尿タイプの夜間頻尿に対して効果が期待される方法であり、膀胱容量の低下が主因である場合には十分な効果が得られない可能性があります。したがって、自分の夜間頻尿がどのタイプに該当するかを把握することが対策の第一歩となります。

■. 番組で紹介された具体的な改善法

ためしてガッテンでは、ふくらはぎへの水分貯留を防ぐための具体的な方法として、弾性ストッキングの着用と就寝前の足上げ運動が紹介されました。これらは薬物を使用しない行動療法であり、副作用のリスクが低く自宅で手軽に実践できる点が強調されました。番組内で紹介された実践者は、これらの方法を継続することで夜間のトイレ回数が減少し、朝までぐっすり眠れるようになったと証言していました。

また、番組では夕方のウォーキングも有効な対策として紹介されました。ふくらはぎの筋肉を動かすことで筋ポンプ作用が働き、下肢に溜まった水分を血管内に戻す効果があるという説明でした。これらの方法はいずれも日常生活の中で取り入れやすく、医療機関を受診せずに自分で実践できる点が視聴者から好評を得ました。

[1] 弾性ストッキングの着用方法

弾性ストッキングは、段階的に圧力をかけることで下肢の静脈還流を促進し、むくみを軽減する医療用具です。番組では、朝起きてから夕方までの日中に着用し、就寝時には脱ぐという使用法が紹介されました。圧迫圧は15〜20mmHg程度の中程度のものが推奨され、ドラッグストアや通販で購入できる着圧ソックスでも一定の効果が期待できるとされていました。

弾性ストッキングの効果については、夜間頻尿患者を対象とした臨床研究で検証されています。ある研究では、4週間の弾性ストッキング着用により夜間排尿回数が平均0.5回減少し、中途覚醒なし睡眠時間が0.8時間延長したと報告されています【文献4】。ただし、この研究では夜間尿量自体には有意な減少が見られなかったことも示されており、効果のメカニズムについてはさらなる検討が必要とされています。

[1] 就寝前の足上げ運動

足上げ運動は、就寝の数時間前に仰向けに横になり、足を心臓より高い位置に上げた状態を維持することで、下肢に溜まった水分を血管内に戻す方法です。番組では、就寝3〜4時間前に30分程度足を上げた状態で過ごすことが推奨されました。この方法により、就寝前に余分な水分を尿として排出し、夜間の尿産生を減少させる効果が期待されます。

この方法は、日中に下肢へ貯留した細胞外液を就寝前に意図的に血管内へ戻し、腎臓で尿として処理させることで夜間尿量を減少させるという理論に基づいています。番組では、この足上げ運動と弾性ストッキングを組み合わせることでより高い効果が得られると説明されていました。実際に複合的な行動療法を実施した研究では、夜間排尿回数の有意な減少が報告されています。

■. 番組放送後の反響と実践状況

ためしてガッテンの夜間頻尿特集は放送後に大きな反響を呼び、インターネット上でも多くの関連記事や体験談が投稿されました。泌尿器科クリニックでは、番組を見て来院する患者や、番組で紹介された方法を試してみたいという相談が増加したと報告されています。番組が提唱した「ふくらはぎ=第2の膀胱」という表現は非常にキャッチーであり、夜間頻尿のメカニズムを一般の人にわかりやすく伝える効果がありました。

一方で、医療専門家からは番組内容に対していくつかの懸念も示されました。夜間頻尿の原因は多岐にわたり、ふくらはぎのむくみによる夜間多尿はその一部に過ぎないという指摘です。また、弾性ストッキングや足上げ運動の効果を示す質の高いエビデンスがまだ十分ではないことや、これらの方法だけで改善しない場合に適切な医療機関への受診が遅れる可能性についても注意喚起がなされました。

[1] 視聴者の実践報告

番組放送後、多くの視聴者がSNSやブログで弾性ストッキングや足上げ運動の実践結果を報告しています。改善を実感したという声がある一方で、効果を感じられなかったという報告も少なくありません。この結果の違いは、夜間頻尿の原因が個人によって異なることを反映していると考えられます。夜間多尿が主因である人には効果がある一方、膀胱容量の低下や睡眠障害が主因である人には十分な効果が得られない可能性があります。

これらの実践報告は、テレビ番組で紹介された方法がすべての人に等しく効果があるわけではないことを示しています。自分の夜間頻尿の原因を正しく把握し、それに合った対策を選択することが重要です。効果が見られない場合は、自己判断で継続するのではなく、泌尿器科などの専門医療機関を受診して原因の精査を受けることが推奨されます。

[1] 医療機関での対応の変化

番組放送後、泌尿器科の診療現場では夜間頻尿の説明において「ふくらはぎのむくみ」や「弾性ストッキング」というキーワードが患者との共通言語として使われるようになりました。これは番組が夜間頻尿の啓発に貢献した成果といえます。一方で、医師は番組で紹介された方法の適応と限界を患者に正確に伝える必要性も認識するようになりました。

  1. 患者が番組を視聴したかどうかを問診で確認します。
  2. 夜間頻尿の原因を排尿日誌などで評価します。
  3. 夜間多尿が確認された場合は行動療法を第一選択として提案します。
  4. 膀胱容量低下や他の原因が疑われる場合は追加検査を実施します。

このように、番組放送は夜間頻尿という症状に対する一般の認知度を高め、患者と医療者のコミュニケーションを円滑にする効果がありました。しかし、番組で紹介された方法はあくまで夜間多尿タイプの夜間頻尿に対する一つの選択肢であり、すべての患者に適用できる万能の解決策ではないことを理解しておく必要があります。



番組内容の医学的検証|ふくらはぎ説はどこまで正しいか

ためしてガッテンで紹介された「ふくらはぎに溜まった水分が夜間頻尿の原因」という説明は、医学的に一定の根拠があります。実際に、下肢の体液貯留と夜間尿量の関係を調べた研究が複数存在し、両者の間に統計的に有意な相関関係が報告されています。ただし、この関係がすべての夜間頻尿患者に当てはまるわけではなく、夜間頻尿の原因は多岐にわたることを理解しておく必要があります。

番組が強調した「ふくらはぎ説」は、夜間多尿の発症メカニズムの一つとして学術的にも認められている概念です。しかし、番組では視聴者にわかりやすく伝えるために説明が簡略化されており、実際の病態はより複雑です。夜間頻尿には夜間多尿以外にも、膀胱容量の低下、睡眠障害、前立腺肥大症など複数の原因があり、それぞれに適した対策が異なります。

本セクションでは、番組で紹介された内容を学術論文と照合し、どの部分が科学的に支持されているのか、どの部分に注意が必要なのかを検証します。医学的なエビデンスに基づいて番組内容を評価することで、読者が自分の状況に合った適切な対策を選択できるようになることを目指します。

■. 下肢浮腫と夜間尿量の関連を示す研究

下肢の体液貯留と夜間尿量の関係については、日本の研究グループによる先駆的な研究が存在します。2009年に発表された研究では、60歳以上の男性34名を対象に生体電気インピーダンス分析を用いて1日4回の体液分布測定を行い、夜間尿量との関連を調査しました【文献1】。この研究により、下肢への体液貯留と夜間尿量の間に統計的に有意な相関関係があることが初めて客観的に示されました。

この研究の重要な点は、単に「むくみがあると夜間頻尿になる」という現象を観察しただけでなく、体液の分布変化を定量的に測定し、夜間尿量との関係を数値で示したことです。研究結果によると、下肢の体液貯留量と夜間尿量の相関係数はr=0.527であり、中程度の正の相関が認められました【文献1】。この結果は、番組で説明された「ふくらはぎに溜まった水分が夜間に尿として出る」という概念を科学的に裏付けるものです。

[1] 生体電気インピーダンス分析による検証

生体電気インピーダンス分析とは、微弱な電流を体に流し、その抵抗値から体液量や体組成を推定する検査方法です。この方法を用いることで、体内の水分がどの部位にどれだけ存在するかを非侵襲的に測定することができます。2009年の研究では、朝・昼・夕方・就寝前の4時点で測定を行い、日内変動のパターンを詳細に分析しました【文献1】。

研究では、夕方における下肢の体液増加量が大きい人ほど夜間尿量が多い傾向があることが示されました。この関係は統計的に有意であり(p=0.0019)、偶然ではなく実際の生理学的関連を反映していると考えられます【文献1】。ただし、相関係数0.527は完全な相関ではないため、下肢浮腫以外の要因も夜間尿量に影響していることが示唆されています。

[1] 抗利尿ホルモンとの関連

2011年に発表された別の研究では、下肢浮腫と夜間尿量の関連に加えて、抗利尿ホルモンの関与も調査されました【文献2】。この研究では50歳以上の男性患者66名を対象に、下肢浮腫の程度、夜間尿量、尿中ADH濃度の関係を分析しています。結果として、下肢浮腫と夜間尿量の間には相関係数r=0.32の正の相関が認められました【文献2】。

  1. 下肢に体液が貯留すると循環血液量が相対的に減少します。
  2. 夜間に横になると貯留していた体液が血管内に戻ります。
  3. 循環血液量の増加によりADH分泌が抑制されます。
  4. ADH低下により腎臓での水分再吸収が減少し尿量が増加します。

多変量解析の結果、尿中ADH/クレアチニン比が夜間多尿の独立した予測因子であることが明らかになりました【文献2】。この研究は、下肢浮腫が夜間尿量に影響するメカニズムとして、ADHを介した経路が関与していることを示唆しています。番組では詳しく説明されていませんでしたが、ふくらはぎ説の背景にはこのようなホルモン調節機構が存在しています。

■. 弾性ストッキングの効果に関するエビデンス

番組で推奨された弾性ストッキングの効果については、夜間頻尿患者を対象とした臨床研究が行われています。2022年に発表された日本の研究では、夜間頻尿を訴える34名の患者を対象に、4週間の弾性ストッキング着用による効果を前向きに検証しました【文献4】。この研究は単群試験(対照群なし)ですが、弾性ストッキングの効果を客観的に評価した数少ない研究の一つです。

研究の結果、弾性ストッキング着用により夜間排尿回数が平均0.5回減少し(p=0.004)、中途覚醒なし睡眠時間が平均0.8時間延長しました(p=0.013)【文献4】。これらの改善は統計的に有意であり、弾性ストッキングが夜間頻尿の症状を軽減する効果があることを示唆しています。また、患者満足度調査では約64%の患者が何らかの満足感を報告しました。

[1] 研究で示された効果の詳細

この臨床研究では、夜間排尿回数や睡眠時間以外にも複数の評価項目が設定されていました。足首周囲径とふくらはぎ周囲径は弾性ストッキング着用により有意に減少しており、下肢のむくみが実際に軽減されたことが客観的に確認されました【文献4】。この結果は、弾性ストッキングが意図した通りに下肢の体液貯留を抑制していることを示しています。

一方で、この研究では夜間尿量自体には有意な変化が認められませんでした【文献4】。つまり、弾性ストッキングは夜間排尿回数を減らし睡眠の質を改善したものの、夜間に産生される尿の総量を減少させることはできなかったという結果です。この点は番組の説明と異なる部分であり、弾性ストッキングの効果メカニズムについてはさらなる研究が必要とされています。

[1] エビデンスの限界と注意点

弾性ストッキングの効果を検証したこの研究にはいくつかの限界があります。まず、対照群を設けていない単群試験であるため、観察された改善が弾性ストッキングの効果なのか、プラセボ効果や時間経過による自然な変動なのかを厳密に区別することができません。また、研究参加者は34名と比較的少数であり、結果の一般化には慎重である必要があります。

これらの限界を踏まえると、弾性ストッキングの効果は「示唆されている」段階であり、確立されたエビデンスとは言い難い状況です。番組ではこれらの科学的な不確実性について十分に説明されていませんでした。弾性ストッキングを試す価値はありますが、効果がない場合には他の原因を疑い、医療機関を受診することが重要です。

■. 番組が触れなかった夜間頻尿の他の原因

夜間頻尿の原因は多岐にわたりますが、番組では「ふくらはぎのむくみによる夜間多尿」に焦点を当てており、他の重要な原因についてはほとんど触れられていませんでした。夜間頻尿診療ガイドラインでは、夜間頻尿の原因を大きく3つに分類しています。夜間多尿、夜間膀胱容量の低下、睡眠障害の3つであり、これらが単独または複合的に関与することで夜間頻尿が生じます。

日本人を対象とした疫学研究では、40歳以上の成人のうち夜間1回以上トイレに起きる人は約69%に達し、3回以上の人も約14%存在することが報告されています【文献3】。この研究では、夜間頻尿が健康関連QOLに最も大きな影響を与える下部尿路症状であることも示されました【文献3】。しかし、夜間頻尿で困っている人のうち医療機関を受診したのはわずか18%に過ぎませんでした【文献3】。

[1] 膀胱容量低下による夜間頻尿

夜間多尿がなくても、膀胱が十分な量の尿を貯められない場合には夜間頻尿が生じます。この状態は「夜間膀胱容量の低下」と呼ばれ、過活動膀胱前立腺肥大症間質性膀胱炎などの疾患が原因となります。番組で紹介された弾性ストッキングや足上げ運動は、膀胱容量低下が主因の夜間頻尿には効果が期待できません。

膀胱容量低下による夜間頻尿の場合、排尿日誌で確認すると1回の排尿量が少なく、夜間尿量の割合は正常範囲内であることが多いです。このタイプの夜間頻尿には、過活動膀胱に対する薬物療法や前立腺肥大症に対する治療が必要となります。自分がどのタイプに該当するかを正確に把握するためには、泌尿器科での精査を受けることが推奨されます。

[1] 睡眠障害と夜間頻尿の関係

夜間頻尿と睡眠障害は双方向の関係にあります。夜間頻尿があると睡眠が分断されて睡眠の質が低下しますが、逆に睡眠障害があると夜間に覚醒しやすくなり、覚醒のたびにトイレに行く習慣がつくことで見かけ上の夜間頻尿となることもあります。特に高齢者では睡眠が浅くなりやすく、この関係が顕著になります。

  1. 睡眠時無呼吸症候群では夜間に繰り返し覚醒が起こります。
  2. 覚醒するたびに膀胱の充満感を自覚しやすくなります。
  3. 結果として夜間のトイレ回数が増加します。
  4. この場合、原疾患の睡眠時無呼吸を治療することで夜間頻尿も改善します。

睡眠時無呼吸症候群をはじめとする睡眠障害では、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌増加により実際に夜間尿量が増加することも知られています。このタイプの夜間頻尿では、弾性ストッキングや足上げ運動ではなく、睡眠障害自体の治療が必要です。いびきや日中の強い眠気がある場合は、睡眠外来の受診も検討すべきです。

■. 番組内容の総合評価

ためしてガッテンで紹介された「ふくらはぎ説」は、学術的な根拠を持つ概念であり、完全な誤りではありません。下肢の体液貯留と夜間尿量の関連は複数の研究で示されており、弾性ストッキングによる症状改善効果も報告されています。番組は夜間頻尿という症状の認知度を高め、多くの人が自分の健康に関心を持つきっかけを作ったという点で評価できます。

しかし、番組の内容にはいくつかの問題点もあります。夜間頻尿の原因が「ふくらはぎのむくみ」であるかのように単純化された説明は、すべての夜間頻尿患者に当てはまるものではありません。また、弾性ストッキングや足上げ運動の効果を示すエビデンスは、まだ十分に確立されたものとはいえません。視聴者がこれらの方法を試して効果がなかった場合に、適切な医療機関への受診が遅れる可能性があることも懸念されます。

[1] 医学的に支持される部分

番組内容のうち、学術的エビデンスによって支持されている部分を整理します。下肢への体液貯留と夜間尿量の間に相関関係があることは複数の研究で確認されており、番組の基本的な前提は正しいといえます。また、弾性ストッキングが夜間排尿回数を減少させ、睡眠の質を改善する可能性があることも臨床研究で示されています。

これらの知見は、番組で紹介された対策が一部の夜間頻尿患者には有効である可能性を示唆しています。特に、夕方にふくらはぎのむくみを自覚している人、排尿日誌夜間多尿が確認された人では、弾性ストッキングや足上げ運動を試す価値があるといえます。ただし、これらは夜間頻尿の万能薬ではなく、効果がない場合は他の原因を考慮する必要があります。

[1] 注意が必要な部分

一方で、番組内容について医学的な観点から注意が必要な部分も存在します。番組では夜間頻尿の原因がふくらはぎのむくみであるかのように説明されていましたが、実際には夜間頻尿の原因は多岐にわたります。また、紹介された対策の効果を示すエビデンスは限定的であり、すべての人に効果があるとは限りません。

夜間頻尿は単なる老化現象ではなく、生活の質を大きく低下させる症状であり、また死亡リスクの上昇とも関連していることが報告されています【文献5】。この研究では、夜間排尿回数が増えるほど死亡リスクが段階的に上昇することが示されました【文献5】。このような背景から、夜間頻尿を軽視せず、適切な評価と治療を受けることが重要です。番組で紹介された方法を試して効果がない場合は、自己判断で放置せず、医療機関を受診することを強く推奨します。



夜間頻尿の正しい原因別対処法

夜間頻尿の対処法は、その原因によって大きく異なります。ためしてガッテンで紹介された弾性ストッキングや足上げ運動は夜間多尿タイプに対する対策であり、膀胱容量低下や睡眠障害が原因の場合には効果が限定的です。適切な対処法を選択するためには、まず自分の夜間頻尿がどのタイプに該当するかを把握することが重要です。

夜間頻尿の原因は大きく3つに分類されます。夜間に産生される尿量が多い「夜間多尿」、膀胱が十分な量の尿を貯められない「膀胱容量低下」、そして睡眠が浅く覚醒しやすい「睡眠障害」です。これらの原因は単独で存在することもあれば、複数が同時に関与していることもあります。自分の状態を正確に評価するためには排尿日誌の記録が有用です。

本セクションでは、夜間頻尿の原因別に適切な対処法を解説します。セルフケアで改善が期待できる方法から、医療機関での治療が必要な場合まで、段階的に説明していきます。自分に合った対策を見つけるための参考にしてください。

■. 排尿日誌による原因の特定方法

夜間頻尿の原因を特定するうえで最も重要なツールが排尿日誌です。排尿日誌とは、24時間以上にわたって排尿した時刻と尿量をすべて記録する方法です。この記録を分析することで、夜間多尿なのか膀胱容量低下なのか、あるいは両方が関与しているのかを判断することができます。泌尿器科を受診した際にも、排尿日誌の結果が診断と治療方針の決定に活用されます。

排尿日誌は自宅で簡単に実施できます。計量カップを用意し、排尿のたびに時刻と尿量を記録するだけです。最低でも連続した24時間、可能であれば2〜3日間の記録があると精度の高い評価が可能になります。記録した結果から、1日総尿量、夜間尿量、夜間多尿指数、1回排尿量などを算出し、夜間頻尿のタイプを判定します。

[1] 排尿日誌の具体的な記録方法

排尿日誌を正確に記録するためには、いくつかのポイントがあります。まず、計量カップは目盛りが50ml単位で読み取れるものを用意します。排尿のたびにカップに尿を取り、量を確認してからトイレに流します。外出時に記録が難しい場合は、時刻だけでも記録しておき、尿量は推定値として記載することも許容されます。

  1. 起床時の最初の排尿から記録を開始します。
  2. 排尿した時刻を分単位まで記録します。
  3. 排尿量を計量カップで測定し、ml単位で記録します。
  4. 就寝時刻と起床時刻も記録します。
  5. 翌日の起床時の排尿までを1日分として集計します。

記録が完了したら、以下の項目を算出します。24時間総尿量は1日の全排尿量を合計した値です。夜間尿量は就寝後から起床時の排尿までの合計値であり、起床時の最初の排尿は夜間尿量に含めます。夜間多尿指数は夜間尿量÷24時間総尿量×100で計算され、この値が33%以上であれば夜間多尿と判定されます。また、1回排尿量の最大値は機能的膀胱容量の目安となります。

[1] 排尿日誌の結果の解釈

排尿日誌の結果から、夜間頻尿のタイプを判定することができます。夜間多尿指数が33%以上で、1回排尿量が正常(200〜400ml程度)であれば、夜間多尿が主因と考えられます。一方、夜間多尿指数は正常範囲内だが1回排尿量が少ない(150ml未満)場合は、膀胱容量低下が主因と考えられます。両方の異常が認められる場合は、複合型として両方への対策が必要になります。

排尿日誌の評価は泌尿器科での専門的な判断が最も正確ですが、上記の基準を参考に自己評価を行うことも可能です。自分の夜間頻尿のタイプを把握することで、このあと説明する対処法の中から自分に適したものを選択しやすくなります。判断に迷う場合や症状が重い場合は、医療機関を受診して専門的な評価を受けることを推奨します。

■. 夜間多尿タイプへの対処法

夜間多尿が原因の夜間頻尿には、番組で紹介された弾性ストッキングや足上げ運動などの行動療法が有効である可能性があります。これらの方法は、日中に下肢へ貯留した水分を就寝前に血管内へ戻し、就寝前に尿として排出することで夜間の尿産生を減少させることを目的としています。薬物を使用しないため副作用のリスクが低く、自宅で実践できる点が利点です。

ただし、夜間多尿の原因はふくらはぎのむくみだけではありません。水分の過剰摂取、塩分の過剰摂取、心機能の低下、腎機能の低下、ホルモンバランスの変化など、さまざまな要因が関与しています。行動療法で効果がない場合は、これらの要因を考慮した対策や医療機関での評価が必要になります。

[1] 生活習慣の改善

夜間多尿に対する最初のアプローチは生活習慣の改善です。特に水分摂取と塩分摂取のパターンを見直すことが重要です。就寝前の過剰な水分摂取は夜間尿量を直接的に増加させます。一方、塩分の過剰摂取は体内の水分保持を促進し、夜間に尿として排出される水分量を増やします。

水分摂取を控えるといっても、脱水を起こすほど制限する必要はありません。1日の総水分摂取量は体重の2〜2.5%程度(体重60kgなら1.2〜1.5リットル)が目安であり、この範囲内で夕方以降の摂取量を減らし、午前中から日中にかけて多めに摂取するように調整します。水分を極端に制限すると脱水や便秘の原因になるため、バランスの取れた調整が必要です。

[1] 下肢の体液貯留を防ぐ行動療法

ためしてガッテンで紹介された弾性ストッキングと足上げ運動は、下肢への体液貯留を防ぎ、夜間多尿を軽減することを目的とした行動療法です。弾性ストッキングは日中に着用することで下肢の静脈還流を促進し、足上げ運動は就寝前に行うことで貯留した水分を意図的に血管内へ戻します。これらを組み合わせることでより高い効果が期待できます。

  1. 朝起きたらすぐに弾性ストッキングを着用します。
  2. 日中は継続して着用し、夕方に脱ぎます。
  3. 就寝3〜4時間前に足上げ運動を20〜30分間実施します。
  4. 足上げ後にトイレに行き、溜まっていた水分を排出します。
  5. 就寝前にもう一度トイレに行ってから床に就きます。

弾性ストッキングは圧迫圧15〜20mmHg程度の中程度のものを選択します。ドラッグストアで販売されている着圧ソックスでも一定の効果が期待できます。足上げ運動は仰向けに横になり、クッションや座布団を使って足を心臓より15〜20cm高くした状態を維持します。この姿勢でテレビを見たり読書をしたりして過ごすと負担なく継続できます。

[1] 夜間多尿に対する薬物療法

生活習慣の改善や行動療法で十分な効果が得られない場合は、医療機関で薬物療法について相談することができます。夜間多尿に対する薬物療法として、抗利尿ホルモン製剤(デスモプレシン)が使用されることがあります。この薬は腎臓での水分再吸収を促進し、夜間の尿産生を減少させる効果があります。

デスモプレシンは効果的な薬ですが、副作用として低ナトリウム血症を起こす可能性があります。特に高齢者では注意が必要であり、医師の管理のもとで慎重に使用される薬です。また、心不全を合併している場合は体液量が増加するリスクがあるため、使用が制限されることがあります。薬物療法を希望する場合は、泌尿器科を受診して適応を判断してもらう必要があります。

■. 膀胱容量低下タイプへの対処法

膀胱容量低下が原因の夜間頻尿では、弾性ストッキングや足上げ運動はほとんど効果がありません。このタイプの夜間頻尿には、膀胱の機能を改善する対策が必要です。原因疾患として過活動膀胱前立腺肥大症間質性膀胱炎などが考えられ、それぞれに応じた治療法があります。膀胱容量低下が疑われる場合は、泌尿器科での精査を受けることを推奨します。

膀胱容量低下による夜間頻尿の特徴は、1回の排尿量が少ないことです。排尿日誌で最大排尿量が150ml未満の場合は、膀胱容量低下の可能性が高いと考えられます。また、日中にも頻尿がある、急に強い尿意を感じる(尿意切迫感)、尿意を我慢できずに漏れることがある(切迫性尿失禁)などの症状がある場合は、過活動膀胱の可能性があります。

[1] 過活動膀胱に対する治療

過活動膀胱は、膀胱が自分の意思とは関係なく勝手に収縮してしまう状態です。少量の尿が溜まっただけで強い尿意を感じ、頻繁にトイレに行く必要があります。日本では40歳以上の約12%が過活動膀胱の症状を有しているとされており、非常に頻度の高い疾患です。治療には行動療法と薬物療法があります。

膀胱訓練は、尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、5分程度我慢してから排尿する訓練です。これを続けることで膀胱の容量を徐々に増やし、排尿間隔を延ばすことができます。骨盤底筋体操は、肛門や膣を締める動作を繰り返すことで骨盤底筋を強化する運動です。これらの行動療法は薬物療法と併用することでより高い効果が得られます。

[1] 前立腺肥大症に対する治療

前立腺肥大症は、加齢に伴って前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿障害を引き起こす疾患です。50歳以上の男性の約30%、80歳以上では約90%に前立腺肥大が認められるとされています。前立腺肥大症による夜間頻尿は、膀胱が完全に空にならないこと(残尿)や、膀胱刺激症状によって生じます。

  1. α1遮断薬:前立腺や尿道の筋肉を弛緩させ、尿の通りを改善します。
  2. 5α還元酵素阻害薬:前立腺を縮小させる効果があります。
  3. PDE5阻害薬:前立腺や膀胱の血流を改善し、症状を緩和します。
  4. 手術療法:薬物療法で効果不十分な場合に検討されます。

前立腺肥大症は泌尿器科で診断・治療が行われます。診察では問診、尿検査、超音波検査、尿流量測定などが実施され、前立腺の大きさや排尿状態が評価されます。多くの場合は薬物療法で症状の改善が得られますが、重症例や薬物療法が無効な場合には手術療法が検討されます。夜間頻尿に加えて、尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、残尿感があるなどの症状がある男性は、前立腺肥大症の可能性を考慮して泌尿器科を受診することを推奨します。

■. 睡眠障害が関与する場合の対処法

睡眠障害と夜間頻尿は相互に影響し合う関係にあります。夜間頻尿があると睡眠が分断されますが、逆に睡眠が浅いと夜間に覚醒しやすくなり、覚醒するたびにトイレに行くことで見かけ上の夜間頻尿となることもあります。睡眠障害の関与が疑われる場合は、睡眠の質を改善する対策が夜間頻尿の改善にもつながります。

睡眠障害の関与を疑うサインとしては、排尿日誌夜間多尿指数も1回排尿量も正常範囲内である場合や、トイレに行きたくて目が覚めるのではなく目が覚めてからトイレに行っている場合などがあります。また、いびきがひどい、日中に強い眠気がある、睡眠中に呼吸が止まることがあると指摘されたことがある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性も考慮されます。

[1] 睡眠衛生の改善

睡眠の質を向上させるための生活習慣を睡眠衛生といいます。睡眠衛生の改善は、薬を使わずに睡眠の質を向上させる基本的なアプローチであり、夜間頻尿の改善にも寄与する可能性があります。特に高齢者では、加齢に伴う睡眠の変化を理解し、適切な睡眠習慣を身につけることが重要です。

高齢者では必要な睡眠時間が若年者より短くなることが知られています。無理に長時間床にいようとすると、かえって睡眠が浅くなり中途覚醒が増加することがあります。実際に眠れる時間に合わせて床にいる時間を調整すること(睡眠時間制限法)も、睡眠の質を改善する有効な方法です。

[1] 睡眠時無呼吸症候群の評価と治療

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる疾患であり、夜間頻尿との関連が指摘されています。無呼吸により胸腔内圧が変化し、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌が増加することで夜間尿量が増加します。また、無呼吸による覚醒反応が夜間の排尿回数増加に関与している可能性もあります。

  1. いびきが大きい、呼吸が止まることがあると指摘された場合は睡眠検査を検討します。
  2. 睡眠ポリグラフ検査または簡易検査で睡眠時無呼吸症候群の診断が行われます。
  3. 中等症以上の場合はCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)が標準的治療です。
  4. CPAP療法により夜間頻尿が改善することが多くの研究で報告されています。

睡眠時無呼吸症候群の治療により、夜間頻尿が劇的に改善することがあります。夜間頻尿で悩んでいる人で、いびきや日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考慮して睡眠外来や呼吸器内科を受診することを検討してください。泌尿器科での夜間頻尿の治療と並行して、睡眠障害の評価を受けることも有用です。



まとめ

ためしてガッテンで紹介された夜間頻尿対策は、医学的に一定の根拠を持つ内容です。下肢の体液貯留と夜間尿量の間には統計的に有意な相関関係があり【文献1】【文献2】、弾性ストッキングの着用により夜間排尿回数が減少し睡眠の質が改善する可能性も臨床研究で示されています【文献4】。番組は夜間頻尿という症状の認知度を高め、多くの人が自分の健康に関心を持つきっかけを作った点で評価できます。

しかし、番組で紹介された対策がすべての夜間頻尿患者に有効なわけではありません。夜間頻尿の原因は夜間多尿だけでなく、膀胱容量低下や睡眠障害など多岐にわたります。弾性ストッキングや足上げ運動は夜間多尿タイプに対して効果が期待される方法であり、膀胱容量低下が主因の場合には別の対策が必要です。自分の夜間頻尿がどのタイプに該当するかを把握することが、適切な対処法を選択するための第一歩となります。

夜間頻尿は単なる加齢現象ではなく、生活の質を大きく低下させる症状です。日本人を対象とした疫学研究では、夜間頻尿が健康関連QOLに最も大きな影響を与える下部尿路症状であることが示されています【文献3】。さらに、夜間排尿回数が多いほど死亡リスクが段階的に上昇するという報告もあります【文献5】。夜間頻尿を軽視せず、適切な評価と対策を行うことが重要です。

番組内容の医学的評価をまとめると、支持される部分と注意が必要な部分の両方が存在します。下肢の体液貯留と夜間尿量の相関関係は複数の研究で確認されており、番組の基本的な前提は妥当です。弾性ストッキングによる夜間排尿回数の減少(平均0.5回)と中途覚醒なし睡眠時間の延長(平均0.8時間)も報告されています【文献4】。一方で、これらの研究は対照群のない小規模試験が中心であり、エビデンスの質は十分とはいえません。また、弾性ストッキングで夜間尿量自体は有意に減少しなかったという結果も示されており【文献4】、効果のメカニズムには不明な点が残っています。

読者が取るべき行動としては、まず排尿日誌を2〜3日間記録し、自分の夜間頻尿のタイプを把握することから始めることを推奨します。夜間多尿指数が33%以上であれば夜間多尿タイプの可能性が高く、番組で紹介された弾性ストッキングや足上げ運動を試す価値があります。1回排尿量が150ml未満であれば膀胱容量低下タイプの可能性があり、過活動膀胱前立腺肥大症などの評価のために泌尿器科を受診することが推奨されます。

生活習慣の改善も重要な対策です。夕方以降の過度な水分摂取を控え、塩分摂取量を見直し、アルコールやカフェインは夕方以降避けることが夜間多尿の軽減に寄与します。弾性ストッキングは朝から夕方まで着用し、就寝3〜4時間前には足上げ運動を20〜30分間実施します。これらの行動療法を2〜4週間継続しても効果が実感できない場合は、自己判断で放置せず医療機関を受診してください。

夜間頻尿の背景には治療が必要な疾患が隠れている可能性もあります。過活動膀胱前立腺肥大症睡眠時無呼吸症候群、心不全、糖尿病など、さまざまな疾患が夜間頻尿の原因となりえます。特にいびきや日中の眠気がある場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性を、尿の勢いが弱い・残尿感があるなどの症状がある男性は前立腺肥大症の可能性を考慮して、専門医療機関を受診することを検討してください。

夜間頻尿は適切な対策により改善が期待できる症状です。ためしてガッテンで紹介された方法は選択肢の一つとして有用ですが、万能の解決策ではありません。自分の状態を正しく把握し、原因に応じた対策を選択することで、夜間の睡眠の質を向上させ、日中の生活の質も改善することができます。本記事の内容を参考に、自分に合った対策を見つけていただければ幸いです。



専門用語一覧



参考文献一覧

  1. Torimoto K, Hirayama A, Samma S, Yoshida K, Fujimoto K, Hirao Y. The relationship between nocturnal polyuria and the distribution of body fluid: assessment by bioelectric impedance analysis. J Urol. 2009; 181(1): 219-224. PMID: 19013595
  2. Hirayama A, Torimoto K, Yamada A, et al. Relationship between nocturnal urine volume, leg edema, and urinary antidiuretic hormone in older men. Urology. 2011; 77(6): 1426-1431. PMID: 21316091
  3. Homma Y, Yamaguchi O, Hayashi K; Neurogenic Bladder Society Committee. Epidemiologic survey of lower urinary tract symptoms in Japan. Urology. 2006; 68(3): 560-564. PMID: 16979726
  4. Kaga K, Yamanishi T, Shibata C, Kamasako T, Kaga M, Fuse M. The Efficacy of Compression Stockings on Patients With Nocturia: A Single-Arm Pilot Study. Cureus. 2022; 14(8): e28603. PMID: 36185903
  5. Funada S, Tabara Y, Setoh K, Negoro H, Akamatsu S, Yoshino T, Yoshimura K, Watanabe N, Furukawa TA, Matsuda F, Ogawa O. Impact of Nocturia on Mortality: The Nagahama Study. J Urol. 2020; 204(5): 996-1002. PMID: 32396408



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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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