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パーキンソン病とは?原因やなりやすい性格、初期症状を解説

パーキンソン病とは?原因やなりやすい性格、初期症状を解説

■1. パーキンソン病とは?

パーキンソン病は、主に運動機能に影響を与える進行性の神経変性疾患です。脳内の黒質(こくしつ)という部分にあるドーパミン神経細胞が減少し、変性・消失することにより、運動の調節がうまくいかなくなり、震え(振戦)、動作の遅れ(寡動)、筋肉のこわばり(筋強剛)などの症状が現れます。高齢者に多く発症しますが、若年性パーキンソン病も存在します。



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黒質(こくしつ)とは、中脳に位置する神経構造で、脳幹の一部です。具体的には、中脳の腹側(前側)にあり、大脳基底核の一部として機能します。線条体(せんじょうたい)も大脳基底核の一部を構成する神経核で、運動調節だけでなく、学習や報酬系にも関与する重要な領域です。

パーキンソン病は進行性の疾患ですが、適切な治療やリハビリテーションにより症状を管理し、生活の質(QOL)を向上させることが可能です。

■2. パーキンソン病の原因

(1) ドーパミン神経細胞の減少

パーキンソン病の根本的な原因は、脳の黒質にあるドーパミン神経細胞が減少することです。ドーパミンは運動の制御に関わる神経伝達物質であり、その不足によって筋肉のコントロールが難しくなります。

(2) レビー小体の蓄積

パーキンソン病の患者の脳には、レビー小体と呼ばれる異常タンパク質(αシヌクレイン)の凝集体が蓄積しています。このレビー小体が神経細胞を傷つけ、ドーパミンの減少を引き起こすと考えられています。

・αシヌクレインとは?

αシヌクレイン(アルファシヌクレイン) は、脳内に存在するタンパク質 の一種で、特に神経細胞のシナプス(神経伝達を行う部位)に多く含まれています。このタンパク質は通常、神経細胞の正常な機能を助ける役割を持っていますが、異常に蓄積・凝集すると神経変性疾患の原因となります。

(3) 遺伝的要因

パーキンソン病のほとんどは孤発性(家族歴がない)ですが、遺伝的要因も関係しています。特定の遺伝子変異(LRRK2、PARK7、PINK1など)が原因で発症することがあります。

・LRRK2とは?

LRRK2(ルーキン2:Leucine-Rich Repeat Kinase 2) は、パーキンソン病の発症に関与する遺伝子およびタンパク質です。LRRK2遺伝子の変異は、遺伝性パーキンソン病(家族性パーキンソン病)の主要な原因の一つとされています。

・PARK7とは?

PARK7(パーク9:Parkinson Disease 7) は、パーキンソン病の発症に関与する遺伝子およびタンパク質の名称です。PARK7遺伝子の変異は、特に若年性パーキンソン病(50歳以下で発症するパーキンソン病)の原因の一つとされています。

・PINK1とは?

PINK1(ピンク1:PTEN-induced putative kinase 1) は、パーキンソン病の発症に関与する遺伝子およびタンパク質の名称です。PINK1遺伝子の変異は、若年性パーキンソン病(50歳以下で発症するタイプ)の原因の一つとして知られています。

(4) 環境要因

パーキンソン病の発症には、環境因子も関与するとされています。



■3. パーキンソン病になりやすい性格とは?

パーキンソン病は遺伝的要因や環境要因が関与する疾患ですが、「なりやすい性格」があるのではないかという研究もあります。

(1) 几帳面で真面目な性格

パーキンソン病の患者には、几帳面で真面目、責任感が強いといった性格の人が多いとされています。これは「パーキンソン病患者に特有の性格傾向」として報告されており、ストレスを抱えやすい性格が病気の発症リスクに関係している可能性があります。

(2) 不安を抱えやすく、抑うつ傾向がある

パーキンソン病の患者は、発症前から不安感が強く、うつ傾向があることが知られています。これは、パーキンソン病に関わる神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンの影響を受ける可能性が指摘されています。

(3) リスクを避ける慎重な性格

パーキンソン病の患者は、リスクを避け、慎重に行動する傾向があるとも言われています。挑戦よりも安定を求める性格が、神経伝達物質の変化と関係しているのではないかと考えられています。

このような性格的特徴が直接パーキンソン病の原因になるわけではありませんが、疾患リスクとの関連性については今後の研究が求められます。



■4. パーキンソン病の初期症状

パーキンソン病の初期症状は非常に多様であり、気づかれにくいことがあります。以下の症状が現れた場合は、早期の受診が推奨されます。

(1) 安静時振戦(しんせん)

(2) 動作の遅れ(寡動)

(3) 筋肉のこわばり(筋強剛)

(4) 姿勢の変化とバランスの悪化

(5) 嗅覚障害

(6) 睡眠障害やうつ症状

これらの初期症状は加齢による変化と勘違いされることがありますが、早期に専門医に相談することが重要です。



■5. まとめ

パーキンソン病は、ドーパミン神経細胞の減少による運動障害を引き起こす疾患です。発症には遺伝や環境要因が関与し、几帳面で真面目な性格の人がなりやすい傾向があるとされています。初期症状として、手の震えや動作の遅れ、筋肉のこわばり、嗅覚障害が現れることが多く、早期の診断と適切な治療が重要です。

現在、薬物療法や手術療法、リハビリテーションなどが治療に用いられていますが、今後の研究で根本的な治療法が開発される可能性があります。

パーキンソン病の再生医療による治療の可能性

パーキンソン病の治療法の一つとして、再生医療が注目されています。

その中でも、血小板由来成分(HPL:Human platelet lysate;血小板溶解物)を用いた治療が有望視されています。これは、HPLが血小板由来の成長因子や抗酸化物質、細胞外小胞(EVs)を豊富に含んでおり、組織修復や神経細胞の再生を促す効果が期待されているためです。

参考文献:Cellular and Molecular Life Sciences (2022) 79:379

血小板溶解物のジャンルの1つにPCP-FD®という院内調剤用試薬があります。もともとは、次世代PRP療法用途(多血小板血漿療法:Platelet-Rich Plasma)として開発されたものですが、一般的な方法で製造されるHPLよりも成長因子を高濃度化できる点で大きなアドバンテージがあり、その鼻腔内注入(点鼻療法)に関し、医師主導での臨床研究がはじまっています。

パーキンソン病では、ドーパミン神経細胞の減少が症状の主な原因となりますが、研究によると、HPLには、神経細胞の修復や保護を促進し、神経細胞の生存率を向上させ、炎症を抑える作用があることが示唆されています。

さらに、HPLの活用は、現在のドーパミン補充療法とは異なり、根本的な神経細胞の機能回復を目指すアプローチとなり得ます。臨床研究が進むにつれ、パーキンソン病の進行を抑え、症状を改善する新たな治療法となり得るかもしれません。

今後、パーキンソン病の患者のQOL向上に大きく貢献することが期待されます。



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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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