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再生医療解説|ヒト血小板溶解液系の局所注射が関節リウマチの症状改善に寄与する作用機序

再生医療解説|ヒト血小板溶解液系の局所注射が関節リウマチの症状改善に寄与する作用機序

当社へ報告されている自由診療下の臨床所見「関節リウマチの症状改善」を踏まえ、ヒト血小板溶解液(HPL)を局所注射した場合における想定作用機序を既存の学術知見に基づいて整理します。

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関節リウマチの病態

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis, RA)は、免疫の誤作動が滑膜(関節の内側を覆う膜)で持続し、炎症が続くことで軟骨や骨が壊れやすくなる病気です【文献1】。

線維芽細胞様滑膜細胞(Fibroblast‑like synoviocytes, FLS)が過剰に働き、腫瘍壊死因子(TNF‑α)やインターロイキン‑1β(IL‑1β)、インターロイキン‑6(IL‑6)などの炎症性サイトカインが増え、NF‑κBMAPKJAK-STATPI3K-AktWntなど複数の経路が同時に活発になります【文献1】【文献2】。

低酸素の環境や活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)の過剰は、これらの経路をさらに強める要因として働き、痛みや腫れ、こわばり、骨びらんへ結びつきます【文献1】【文献15】。

関節リウマチの治療で大切なのは、炎症を早く弱め、壊れやすい環境を修復に向け直し、これらの症状が再燃しにくい状態を保つことです【文献1】【文献2】。



ヒト血小板溶解液系の成分と特性

本稿で扱う「ヒト血小板溶解液系」とは、ヒト血小板溶解液(Human Platelet Lysate, HPL)を中核に、HPL由来エクソソーム(細胞外小胞)や血小板由来エクソソーム/微小粒子、さらに上流素材に相当する多血小板血漿(Platelet‑Rich Plasma, PRP)までを一括して指す総称です【文献3】【文献4】。

血小板を活性化・破砕すると、PDGF、TGF‑β、IGF‑1、HGFなど多様な成長因子やケモカインが可溶性成分として放出され、同時にmiRNAやタンパク質を内包したエクソソームが豊富に生じます【文献2】【文献3】【文献6】【文献7】。さらに、HPL由来エクソソームは血管内皮や軟骨細胞などに取り込まれやすく、内容物を届けて細胞のふるまいを調整します【文献4】【文献5】。

血小板を活性化・溶解すると、PDGF、TGF‑β、IGF‑1、HGFなど多様な成長因子が可溶性成分として放出され、同時にmiRNAやタンパク質を内包するエクソソームが豊富に生じます【文献5】【文献6】【文献7】。

可溶性成分とエクソソームが同時に存在することで、関節内の複数の細胞(軟骨細胞、滑膜細胞、血管内皮細胞、マクロファージなど)に広く働きかけることができます【文献5】。



想定される作用機序の全体構成

ヒト血小板溶解液系のRAに対する作用は、時間の流れに沿って次の三つの段階に整理できます。これら三つの段階は重なりながら進み、早期から中長期にかけて関節内の状態を望ましい方向へ誘導します。

  1. 第1段階:抗酸化酵素による迅速な炎症の弱化(鎮静)【文献1】【文献15】【文献16
  2. 第2段階:成長因子による組織修復の土台づくり(修復)【文献6】【文献7】【文献9】【文献14
  3. 第3段階:エクソソームmiRNAによる遺伝子の働きの調整(安定化)【文献5】【文献10】【文献11】【文献12】【文献13

これらの各段階は直列ではなく並行して起こり、全体として炎症の勢いを抑えつつ、組織の作る力を回復させ、再燃しにくい状態を保ちます【文献1】【文献5】。



第1段階(抗酸化酵素)—迅速な鎮静

■1. ROS低下による炎症シグナルの抑制

RAの関節内では、低酸素やミトコンドリア機能の乱れがROSを増やし、NF‑κBなどの炎症シグナルを押し上げます【文献1】【文献15】。

血漿と血小板にはスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)といった酵素系、さらにアルブミンや尿酸など非酵素系の抗酸化因子が生理的に含まれます【文献16】。

ヒト血小板溶解液系はこれらの抗酸化能を一括して供給し、投与直後からROSの過剰を下げることで炎症の勢いを素早く弱める下地を作ります【文献1】【文献15】【文献16】。

■2. 短期の痛み・腫れへの影響

ROSが下がると炎症性サイトカインの出力が抑えられ、痛みや腫れを支える刺激が早期に弱まります【文献1】【文献15】。

短期間で体感が変わりやすいという臨床報告は、この段階の寄与と整合します【文献1】。



第2段階(成長因子)—組織修復の土台づくり

■1. 軟骨・滑膜・骨への修復刺激

PDGF、TGF‑β、IGF‑1、HGFなどの組み合わせは、軟骨細胞や間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells, MSC)の生存・増殖・基質産生を高め、分解が優位になった代謝を作る側へ戻します【文献6】【文献7】。

PRPに含まれる多成分の組み合わせは、単一因子よりも軟骨保護や基質回復に有利に働くことが示されています【文献6】【文献9】。

滑膜細胞と軟骨細胞の共培養では、PRPがTNF‑αやマトリックス分解酵素の産生を下げ、ヒアルロン酸の合成を高める方向に働くことが報告されています【文献9】【文献14】。

■2. 数時間から日単位で現れる変化

受容体のリン酸化は分の単位で立ち上がりますが、基質産生や分解酵素の低下など目に見える変化は数時間から日単位で積み上がります【文献6】【文献7】【文献9】。

第1段階で炎症の勢いが弱まった後に、この段階が環境を修復しやすい方向へ戻し、可動域や動作の改善につながります【文献9】【文献14】。



第3段階(miRNA)—遺伝子の働きの調整による安定化

■1. エクソソームが運ぶメッセージによる調整

ヒト血小板溶解液系に含まれるエクソソームは、miRNA(例:miR‑223、miR‑126)を包んで標的細胞に届け、遺伝子の働きを細かく調整します【文献5】【文献10】【文献11】。

血小板由来エクソソームのmiR‑223は血管内皮のICAM‑1発現を抑え、白血球の過剰な集積を和らげます【文献10】【文献11】。

HPL由来エクソソームのmiR‑126は血管内皮の安定に関わり、関節内の栄養や酸素の供給環境を整える助けになります【文献4】。



中長期の安定化と再燃の抑制

PRP由来エクソソームは、軟骨細胞でWnt/β‑catenin経路の調整を通じて増殖と生存を助け、アポトーシス(細胞の自滅)を抑えます【文献12】。

さらに、血漿由来の細胞外小胞は、インターロイキン‑1β(IL‑1β)で刺激された軟骨細胞の分解系遺伝子を下げ、炎症性の状態に傾きにくくします【文献13】。

これらの調整は数時間から日単位で始まり、週単位で安定化に寄与します【文献5】【文献12】【文献13】。



臨床で期待される変化の時系列

作用機序の理解を助けるために、三つの作用段階と臨床で期待される変化の関係を時系列で整理します。なお、次の要点は互いに関連し、連続して現れます。

  1. 短期(投与後早期):痛みや腫れが和らぎ、動かしやすさが戻り始めます(第1段階の寄与が大きい)【文献1】【文献15】。
  2. 中期(数日〜数週):軟骨や滑膜の環境が修復側に傾き、日常動作のしやすさが上がります(第2段階の寄与が中心)【文献6】【文献7】【文献9】【文献14】。
  3. 長期(数週〜):炎症性の遺伝子の働きが抑えられ、再燃しにくい状態が保たれます(第3段階の寄与が中心)【文献5】【文献10】【文献11】【文献12】【文献13】。

以上のように、迅速な鎮静→組織修復の土台づくり→遺伝子の働きの調整による安定化という流れは、RAの病態と筋よく一致しています【文献1】【文献2】。



まとめ

ヒト血小板溶解液系(ヒト血小板溶解液由来エクソソームや血小板由来エクソソーム多血小板血漿を含む)は、関節内の状態に三つの段階で働きかけます。

先ず抗酸化酵素ROSの過剰を抑えて炎症の勢いを素早く弱め(鎮静)、次に成長因子が軟骨・滑膜・骨の作る力を底上げして環境を修復側に戻し(修復)、最後にエクソソームmiRNAが遺伝子の働きを調整して症状の再燃しにくい状態へ導きます(安定化)【文献1】【文献6】【文献9】【文献12】【文献13】【文献15】【文献16】。

これらの作用段階を重ねて働くことで、単一成分では得にくい広がりと持続性が期待できます【文献5】。



専門用語一覧



参考文献一覧

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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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