耳鳴りの原因と漢方治療:ツムラ漢方薬を中心とした対策と効果

耳鳴りの原因と漢方治療:ツムラ漢方薬を中心とした対策と効果

耳鳴りは、外部に音源が存在しないにもかかわらず自分にだけ音が聞こえる現象であり、日本人の15~20%が経験し、高齢者では30%以上に上ると報告されています【文献1】。この症状は生活の質(QOL)を大きく低下させ、睡眠障害や不安感、抑うつなどの二次的影響も及ぼします【文献2】。しかし、耳鳴りの原因は多岐にわたり、現代医学で根本治療が困難な例も多いため、多くの患者が長期間悩み続けています。

西洋医学では、明確な疾患(中耳炎・メニエール病・突発性難聴など)がある場合にはその治療を優先しますが、原因不明の耳鳴りについてはビタミンB12製剤や血流改善薬、抗不安薬などの対症療法が中心で、完治が難しい現状です【文献3】。また、音響療法やカウンセリングなども併用されますが、満足できる結果が得られないケースも少なくありません。

こうした背景から、体質や全身のバランスを重視する漢方医学のアプローチが注目されています。ツムラ製品をはじめとする漢方エキス製剤は、耳鳴りの原因や体質に応じた個別処方が可能であり、近年多くの医療現場や患者に受け入れられています【文献4】。本記事では、止まらない耳鳴りの原因と症状、西洋医学的治療の現状と課題、漢方による(しょう)分類と処方選択、さらにツムラ漢方薬の適応例と注意点まで、最新の学術知見を踏まえて体系的に解説します。

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耳鳴りの原因・症状と西洋医学での治療

耳鳴りは、個々の感じ方や発症要因が多様であり、単なる「耳の症状」以上に全身や心理面にも影響を及ぼすことが知られています【文献2】。最初に、耳鳴りの主な発症要因や症状タイプについて整理し、その上で西洋医学における治療の現状と限界について明らかにします。

西洋医学では、耳鳴りを「症状」として捉え、まず耳鼻咽喉科領域の疾患(中耳炎・メニエール病・突発性難聴など)の有無を調べます。明らかな原因疾患があれば、その治療が奏功し耳鳴りが改善することもありますが、実際には原因不明の「自覚的耳鳴り」が大半を占めます【文献5】。このタイプの耳鳴りは加齢や騒音曝露、血流障害、ストレス、自律神経の乱れなど複数の因子が複雑に関与します。

現在の医療現場では、耳鳴りの根本治療は困難で簡単な治し方は無いとされており、主にビタミンB12製剤、循環改善薬、抗不安薬、補聴器、音響療法、カウンセリングなどが用いられていますが、どの方法も万能ではありません。患者個々のQOLや精神的負担を十分考慮しつつ、多角的な対応が求められています【文献3】【文献6】。

■1. 耳鳴りの主な原因と症状の分類

耳鳴りは、「自覚的耳鳴り」と「他覚的耳鳴り」に大きく分けられます。自覚的耳鳴りは本人だけに知覚される現象で、全耳鳴り患者の90%以上を占めます。他覚的耳鳴りは稀で、血管拍動音や筋収縮音など体内音が実際に発生し、第三者も確認できる場合があります【文献7】。主な発症要因を以下にまとめます。

さらに、加齢による聴覚細胞の機能低下や、長期の騒音曝露による内耳障害、慢性中耳炎や血流障害、ストレス、自律神経失調など多くの因子が複雑に絡み合い、症状の現れ方や重症度も大きく異なります。生活習慣や全身疾患との関係も指摘されており、単一要因だけでなく多因子的な背景を常に念頭に置く必要があります【文献8】。

[1] 耳鳴りを引き起こす主な要因

耳鳴りは、耳自体の疾患以外にも、全身的な健康状態や生活習慣、心理的要素が関与して発生します。代表的な要因は次のとおりです【文献8】。

  • 加齢や内耳障害:聴覚細胞の老化・損傷による幻聴的な耳鳴り。
  • 慢性中耳炎・内耳炎:耳の疾患が聴覚神経に影響し発生。
  • 血流障害:高血圧・動脈硬化・糖尿病など全身疾患による内耳の血流低下。
  • 精神的ストレス・自律神経失調:心理的負荷・疲労が神経過敏を引き起こす。

これらの要因はしばしば複合的に作用し、単一疾患だけで説明できない場合も多いです。耳鳴りの評価・治療にあたっては、全身状態を含めた包括的な視点が不可欠です【文献8】。

[2] 自覚的耳鳴りと他覚的耳鳴りの特徴

自覚的耳鳴りは「キーン」「ジー」などの幻覚的な音が本人だけに感じられ、難治性かつ慢性的になりやすいとされます。他覚的耳鳴りは血管拍動音や筋肉の振動音が外部からも確認でき、基礎疾患の治療で改善する場合もあります【文献7】。

  • 自覚的耳鳴り:外的音刺激が無い状態で本人にのみ知覚される。内耳や脳の感覚過敏が関与。
  • 他覚的耳鳴り:血管雑音や筋肉の振動など体内発生音。医療機器で確認できる。

大多数の耳鳴りは自覚的タイプで、根本治療が難しく、個々の生活背景や心理状態も考慮した対応が重要となります【文献6】。

■2. 耳鳴りが生活に及ぼす影響と社会的負担

耳鳴りが慢性化すると、QOLの低下や睡眠障害、不安、抑うつ、集中力低下など多岐にわたる影響が現れます。特に高齢者や基礎疾患を持つ患者では、これらの負担が大きくなりやすいことが指摘されています【文献2】。

また、耳鳴りは他人から理解されにくい症状であり、患者自身が悩みを周囲に打ち明けにくい傾向にあります。社会的サポートや医療機関との連携、セルフヘルプグループなどの利用が推奨されています【文献9】。

[1] 耳鳴りによる主な二次的影響

耳鳴りは、睡眠障害や心理的ストレスを引き起こし、全身状態の悪化を招くことも少なくありません【文献2】。

  • 睡眠障害:入眠困難、中途覚醒、熟眠障害など。
  • 精神的ストレス:イライラ、不安感、抑うつ症状の増加。
  • 生活の質低下:集中力や作業効率の低下、対人関係への悪影響。

QOLの維持と精神的負担の軽減のためには、症状そのものだけでなく、患者の心理・社会面への支援が不可欠です【文献2】【文献9】。

[2] 社会的影響と支援体制の重要性

耳鳴り患者は孤立しやすく、社会的なサポートが欠如しがちです。カウンセリングや支援グループの利用、早期相談が推奨されます【文献9】。

  • 社会的孤立感:共感を得にくく孤独を感じやすい。
  • 支援体制:情報提供やカウンセリング、サポートグループの活用。
  • 早期相談:症状悪化やQOL低下時には早期受診が推奨される。

社会的な理解と支援体制の整備が、患者の心理的回復や社会復帰のために重要な役割を果たします【文献9】。

■3. 西洋医学的治療の実際と限界

西洋医学では、耳鳴りの原因疾患が明確な場合はその治療を優先し、改善が見込まれます。しかし、原因不明の耳鳴り(特に自覚的耳鳴り)には根本的治療法が存在せず、対症療法が中心です【文献3】【文献6】。

主な治療法は、ビタミンB12製剤、血流改善薬、抗不安薬、補聴器、音響療法(マスキング)、カウンセリング(認知行動療法)などがあり、どれも一定の効果はあるものの、全ての患者で十分な満足が得られるわけではありません【文献3】【文献6】。

[1] 西洋医学的対処法の概要

代表的な治療法を以下にまとめます。多くは症状緩和やQOL向上を目的としています【文献3】【文献6】。

  • 薬物療法ビタミンB12(メコバラミン)、血流改善薬、抗不安薬・抗うつ薬。
  • 補聴器・音響療法:聴力低下時の補聴器やホワイトノイズ発生装置の利用。
  • カウンセリング:認知行動療法や心理サポートの導入。

これらの治療は耳鳴りの苦痛軽減には一定の有用性があるものの、治癒を保証するものではありません。患者個々の生活や心理状態に配慮した多面的な支援が必要とされます【文献3】【文献6】。

[2] 治療の限界と今後の課題

現行の治療法では耳鳴りの完全な消失は難しく、長期間症状と付き合う患者が多いのが現状です。今後は新たな治療法開発と多職種連携による包括的支援体制の強化が期待されています【文献10】。

  • 個人差:同じ治療でも患者によって効果が異なる。
  • 慢性化対策:薬物以外の生活支援・心理的ケアも重要。
  • 新規治療法:現状に満足できない患者への新しいアプローチの必要性。

西洋医学と他の治療法(漢方や心理的支援など)を組み合わせた多面的なケアが、今後ますます重要となるでしょう【文献10】。



漢方医学からみた耳鳴り:全身バランスと体質の観点

漢方医学では、耳鳴りを単なる耳の症状と捉えるのではなく、全身のバランスの乱れや体質の変化が反映されたものと考えます【文献11】。このため、同じ「耳鳴り」でも人によって用いる処方が異なり、患者ごとの体質や併存症状を重視した個別治療が重視されます。近年ではツムラをはじめとした漢方エキス製剤の標準化も進み、より多くの臨床現場で耳鳴り対策として活用されています【文献12】。

漢方では、診断の中心を「(しょう)」という体質・状態の総合評価に置きます。脈診・腹診・舌診といった独自の診察法を用い、単なる症状のみならず全身状態や生活背景、心理的要素までも統合的に評価する点が特徴です。そのうえで、耳鳴りに対しては複数のに分類し、体質に適した薬剤を選択します【文献13】。

代表的なとしては、「腎虚(じんきょ)」型、「瘀血(おけつ)」型、「気虚(ききょ)」・「気滞(きたい)」型、「肝鬱(かんうつ)」型が挙げられます。耳鳴りの音の特徴や随伴症状、全身所見に応じてを判定し、最適な漢方処方を選びます【文献14】。以下、漢方的な病態分類・診断のポイントと主なの特徴を解説します。

■1. 漢方における耳鳴りの病態分類と証

耳鳴りは漢方診断体系において、「腎虚」「瘀血」「気虚気滞」「肝鬱」などに分類されます。各の判定には症状の質、体力・年齢・随伴症状、精神状態など多面的な要素が評価されます【文献13】【文献14】。それぞれのの特徴と典型例を整理します。

腎虚」は加齢や慢性疾患による体力低下と関係が深く、耳鳴りの他に腰膝のだるさや頻尿、めまいなどの症状を伴いやすい傾向です。「瘀血」は血流の滞りによる冷えや肩こり、頭痛、しびれなどが目立ちます。「気虚気滞」はエネルギー不足や流れの停滞で、全身の疲労感や気分の落ち込みなども随伴します。「肝鬱」はストレス・自律神経の乱れが背景となるです。

[1] 腎虚型耳鳴りの特徴

腎虚型耳鳴りは、高齢者や慢性疾患のある人に多く、加齢による体力低下や慢性的な疲労が背景にあることが特徴です。夜間や疲労時に悪化しやすく、音の質は弱く持続的な傾向です【文献15】。

  • 持続的な弱い耳鳴り:低音の「ボー」「ザー」が続きやすい。
  • 加齢・慢性疲労と関連:高齢者や長期疾患患者に多い。
  • 随伴症状:腰痛、膝のだるさ、頻尿、めまい、健忘など。

腎虚型には、補腎作用のある六味丸や八味地黄丸、牛車腎気丸などがよく用いられます【文献15】。

[2] 瘀血型耳鳴りの特徴

瘀血型耳鳴りは、血行不良や冷え、肩こり、頭痛などを伴うタイプです。耳鳴りの音は強めで、「ジーン」「ゴー」といった低音や脈打つような感覚が特徴的です【文献16】。

  • 強い耳鳴りと血流障害:冷えや頭重感を伴う。
  • 肩こり・頭痛の随伴:筋肉のこわばり、目の疲れなど。
  • 冷え性との関連:四肢末端の冷感がみられる。

瘀血薬である当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散などが選択されます【文献16】。

■2. 証の診断と漢方処方選択の実際

漢方治療では、症状だけでなく個々の体質・生活背景・全身状態を総合的に評価し、を診断します。適切なの判定には、脈や舌・腹部、冷え・のぼせ・便通・睡眠の質など全身の情報が重要視されます【文献13】。

が異なれば同じ耳鳴りでも選択される漢方薬は変わります。自己判断での市販薬使用でも、医師や薬剤師に相談することでより適切な選択が可能です。診断の誤りは効果不十分につながるため注意が必要です【文献17】。

[1] 主な証ごとの代表的漢方処方

ごとに代表的な処方を以下に整理します。ツムラ製品のみならず、他社や伝統的処方も含まれることがあります【文献15】【文献16】【文献17】。

最適な漢方薬は患者の体質や症状に合わせて決定されます。の判定と継続的評価が治療成功の鍵です【文献17】。

■3. 体質・随伴症状の重視と生活指導

漢方では、耳鳴りの治療にあたり体質や生活習慣の見直しも強調されます。十分な休養やストレス管理、冷え対策、食生活の改善など、薬物療法と生活指導の併用が望まれます【文献18】。

耳鳴り悪化要因には、睡眠不足や過労、精神的緊張、血流不良などがあります。これらへの対応としてセルフケアの導入も重要です【文献18】。

[1] 生活習慣の見直しとセルフケア

耳鳴り改善や予防のためには、規則正しい生活リズム、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス対策が基本です。冷えや血流不良の改善も重視されます【文献18】。

  • 生活リズム調整:早寝早起き、規則的な食事で自律神経を整える。
  • 運動・血流促進:無理のない範囲でのウォーキングやストレッチ。
  • ストレス対策:趣味やリラクゼーション法(呼吸法、瞑想など)活用。

これらセルフケアの実践は、漢方薬との相乗効果によって耳鳴り症状の緩和に寄与します【文献18】。

[2] 専門家相談の重要性と注意点

耳鳴り治療に漢方薬を用いる場合、自己判断に頼らず医師や薬剤師へ相談することが推奨されます。特に急な難聴や強いめまいを伴う場合は、まず耳鼻科を受診することが大切です【文献19】。

  • 医療機関受診:急性症状や重症例では早期受診を徹底。
  • 副作用・相互作用:持病や他薬剤併用時の注意。
  • の変化への再評価:治療経過中の体質変化に合わせた見直し。

正確な診断と適切な漢方選択、継続的な評価が耳鳴り改善の基盤となります【文献19】。



耳鳴りへの漢方治療:ツムラ製品を中心とした処方の実際と使い分け

漢方治療は耳鳴りの原因や体質に応じて柔軟に処方選択できる点が大きな特徴であり、特にツムラをはじめとするエキス製剤が臨床で広く利用されています【文献12】。患者ごとのや随伴症状に合わせた最適な漢方薬を選択することで、西洋医学単独では難しい症例にも幅広く対応できる可能性があります。以下では主要なごとに、ツムラ製品を中心とした漢方薬の使い分けとポイントを体系的に整理します。

耳鳴り治療においては、腎虚型には六味丸や八味地黄丸、牛車腎気丸、瘀血型には当帰芍薬散や桂枝茯苓丸、加味逍遙散、気虚肝鬱型には補中益気湯や加味逍遙散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などが用いられます【文献15】【文献16】。また、の変化や併用薬、体質・年齢によって使い分ける実践的な知見も重要です。

漢方薬は単剤使用だけでなく、複数の処方を組み合わせたり、生活指導と併用したりすることでより高い治療効果が期待できます。耳鳴り症状の特徴や随伴症状、患者の希望を丁寧に把握しながら処方を選ぶことが、安全かつ効果的な治療につながります【文献17】。

■1. 腎虚型に適した代表的漢方薬と適応

腎虚型耳鳴りには腎の機能を補い、体力低下や加齢による症状を改善する処方が選択されます。ツムラ六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸が代表例です。これらは高齢者や慢性疾患患者の耳鳴りに多く使われています【文献15】。

六味丸は腎陰虚(体内の潤い不足)に適応し、八味地黄丸はより冷えや下半身の虚弱が目立つ場合、牛車腎気丸は利水作用を強めむくみやしびれを伴う場合に選択されます。いずれも安全性が高く長期使用にも適していますが、体質に合わない場合は副作用に注意が必要です【文献15】【文献20】。

[1] 六味丸(ツムラ製品)

六味丸は腎陰虚に基づく耳鳴りやめまい、腰膝のだるさ、頻尿、口渇などに用いられます。地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮を配合し、高齢者や虚弱体質の方に向いています【文献15】。

  • 腎陰虚補充:慢性疲労や加齢による耳鳴りに適応。
  • 随伴症状:腰膝のだるさ、頻尿、めまい、口渇など。
  • 安全性:副作用が少なく、長期連用にも適する。

体力や腎のエネルギーが低下した耳鳴りに対して、第一選択となる処方です。明確な根拠に基づき、臨床効果も報告されています【文献15】。

[2] 八味地黄丸・牛車腎気丸(ツムラ製品)

八味地黄丸は冷えや下半身のだるさ、頻尿・夜間尿を伴う場合に、牛車腎気丸はむくみやしびれを伴う場合に適応します。配合生薬や効能が六味丸より広く、利尿作用や下肢症状の改善も期待できます【文献15】【文献20】。

  • 八味地黄丸:下半身の冷え・だるさ、頻尿、夜間尿に。
  • 牛車腎気丸:利尿作用・むくみ・しびれを伴う場合。
  • 配合生薬:八味地黄丸(六味丸+附子・桂皮)、牛車腎気丸(八味地黄丸+牛膝・車前子)。

どちらも体質・症状に応じて使い分けられています。特に高齢者では副作用や併用薬にも注意が必要です【文献20】。

■2. 瘀血型・気滞型・肝鬱型に対する漢方薬選択

瘀血型や気滞型、肝鬱型の耳鳴りでは血流や気の巡りを改善し、精神的ストレスや自律神経の乱れにも対応できる処方が選ばれます。ツムラ当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などが代表的です【文献16】【文献21】。

の見極めや随伴症状に基づいて選択し、必要に応じて処方の組み合わせや生活指導も加えます。特に女性や精神症状を伴う場合に有用な処方が多いのが特徴です。

[1] 当帰芍薬散・桂枝茯苓丸(ツムラ製品)

当帰芍薬散は冷えやむくみ、月経異常を伴う場合、桂枝茯苓丸は血行不良や頭重感、肩こり、冷えが顕著な場合に適応します【文献16】。

  • 当帰芍薬散:冷え・むくみ・女性の体質改善。
  • 桂枝茯苓丸:血行不良、頭重感、肩こり、冷えに。
  • 配合生薬:当帰、芍薬、川芎、茯苓、白朮、沢瀉(当帰芍薬散)、桂皮、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬(桂枝茯苓丸)。

瘀血型は肩こり・冷え・頭重感を伴う例に効果的です。体質に応じた適応が求められます【文献16】。

[2] 加味逍遙散・抑肝散・柴胡加竜骨牡蛎湯(ツムラ製品)

加味逍遙散は自律神経失調やストレス性耳鳴りに、抑肝散や柴胡加竜骨牡蛎湯は神経過敏や不眠、不安を伴う場合に用いられます【文献21】。

  • 加味逍遙散:精神的ストレス・情緒不安定に。
  • 抑肝散:神経過敏、イライラ、不眠、高齢者や認知症例にも。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯:不安・不眠・動悸・神経症状を伴う耳鳴りに。

精神症状やストレスが耳鳴り悪化因子の場合に重宝される処方群です。患者の訴えを丁寧に聞き取り、最適な選択を行います【文献21】。

■3. 漢方薬選択時のポイントと注意点

耳鳴りへの漢方治療では、の診断が最も重要です。単なる耳鳴り症状だけでなく、全身状態や併存症状、生活背景を総合的に評価することが求められます。自己判断での市販薬使用でも、効果がなければ医師・薬剤師への相談が推奨されます【文献17】。

また、長期使用や他薬との併用時には副作用・相互作用にも注意が必要です。特に急激な難聴・めまい・強い頭痛を伴う場合は速やかな医療機関受診が必要です。正確な診断と継続的評価が漢方治療成功のカギとなります【文献19】【文献20】。

[1] 漢方治療の安全性と医療連携

漢方薬は一般に安全性が高いとされますが、体質や持病によっては重篤な副作用も報告されています。肝障害や消化器症状、アレルギー反応などのリスクがあるため、定期的な医師の診察が推奨されます【文献20】。

  • 副作用・相互作用:体質・持病・併用薬によるリスク。
  • 継続的評価:症状や体質の変化に合わせた処方見直し。
  • 医療機関受診:異常や効果不十分時の早期相談。

安全・効果的な治療のためには、専門家の助言のもと経過観察と処方調整を継続することが大切です【文献20】。



まとめ

耳鳴りは、人口の15~20%が経験し高齢者で特に多く、生活の質や精神的健康に大きな影響を及ぼす症状です【文献1】【文献2】。西洋医学では原因疾患がある場合の治療が優先されますが、実際には加齢や血流障害、ストレスなど多因子的な要素が関与し、原因不明の自覚的耳鳴りが大半を占めます【文献5】【文献8】。治療法はビタミンB12製剤や循環改善薬、補聴器、音響療法、カウンセリングなど多岐にわたりますが、決定的な根治療法はなく、患者ごとに効果も異なるのが現状です【文献3】【文献6】【文献10】。

このような状況下で注目されるのが、漢方医学の全身バランス・体質観点からのアプローチです【文献11】【文献13】。漢方では腎虚型、瘀血型、気虚気滞型、肝鬱型などのに応じて六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯などを選択します【文献15】【文献16】【文献21】。体質や随伴症状を総合的に診断し、その人に合った処方を選ぶことで、耳鳴りの軽減や再発予防に寄与します。また、漢方は薬物療法だけでなく、生活指導やセルフケアと併用することで効果が高まりやすいとされます【文献18】。

一方、漢方薬にも副作用や相互作用のリスクがあり、長期連用や他薬剤併用時には医師や薬剤師への相談が重要です【文献19】【文献20】。急激な難聴や強いめまい・頭痛を伴う場合には速やかに医療機関を受診すべきです。耳鳴りは個人差が大きく、単一の治療法で全てが解決するわけではありませんが、西洋医学と漢方医学の長所を活かし、多面的な視点と継続的な評価を重ねることで、多くの患者の生活の質向上に貢献できると考えられます【文献10】【文献17】。今後も新たな研究と臨床経験の蓄積により、より安全で有効な治療選択肢が広がっていくことが期待されます。



専門用語一覧

  • 耳鳴り:外部に音源がないにもかかわらず、本人にだけ音が聞こえる症状。自覚的耳鳴り他覚的耳鳴りがある。
  • 自覚的耳鳴り:本人にしか知覚されない幻覚的な耳鳴り。全耳鳴りの90%以上を占める。
  • 他覚的耳鳴り:体内の音(血管雑音や筋収縮音)が原因で、医療機器などで第三者も確認できる耳鳴り。
  • QOL(Quality of Life:生活の質):病気や症状が日常生活や精神面に与える総合的な影響。
  • 腎虚(じんきょ):漢方医学で、腎の機能が低下し体力やエネルギーが不足している状態。
  • 瘀血(おけつ):血液循環の滞りや障害。冷えや肩こり、しびれなどが現れる体質。
  • 気虚(ききょ):気(エネルギー)が不足し、疲労感や免疫力低下などが現れる体質。
  • 気滞(きたい):気の流れが停滞し、精神的な不調や体の張り感などが生じる状態。
  • 肝鬱(かんうつ):ストレスや精神的緊張、自律神経の乱れによる気のうっ滞状態。
  • 証(しょう):漢方診断における体質・症状・生活背景などを統合した総合評価単位。



参考文献一覧

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執筆者

代表取締役社長 博士(工学)中濵数理

■博士(工学)中濵数理

  • 由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長
  • 沖縄再生医療センター:センター長
  • 一般社団法人日本スキンケア協会:顧問
  • 日本再生医療学会:正会員
  • 特定非営利活動法人日本免疫学会:正会員
  • 日本バイオマテリアル学会:正会員
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