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再生医療解説|ヒト血小板溶解液系+ダーマローラー併用による中度脂漏性皮膚炎の症状改善

再生医療解説|中度脂漏性皮膚炎の症状改善に対するヒト血小板溶解液系塗布+ダーマローラー併用の作用機序

医師裁量で実施された自由診療において、ヒト血小板溶解液系(Human Platelet Lysate:HPL)とダーマローラーを併用したところ、中度脂漏性皮膚炎の症状(紅斑や落屑など)が大幅に改善した、再燃間隔が延びた、完全に治った、などの臨床所見が当社に報告されています。

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そこで本稿では、中度脂漏性湿疹の病態を整理し、ヒト血小板溶解液系の成分がどのような作用機序で奏功し得るか、ダーマローラーとの併用で相乗効果が期待できるかについて、因果関係が分かる形で、既存の学術知見に基づいて考察します。【文献1】【文献2

中度脂漏性皮膚炎の病態

中度脂漏性皮膚炎は、軽症と重症の中間に位置する状態であり、再燃と寛解を繰り返しやすいのが特徴です。

■1. 中度脂漏性皮膚炎の臨床像

  1. 紅斑と落屑が連続的に存在し、頭皮や顔の脂漏部位に広がる。
  2. かゆみや不快感が持続し、日常生活に支障を与える。
  3. びらんや浸出は明確ではなく、二次感染も通常は伴わないが、症状は慢性的に波を描く。

■1. 病態の四つの要素

[1] 角層バリアの破綻

経表皮水分喪失(TEWL)が増加し、角層脂質の配列が乱れ、外界からの刺激が侵入しやすい状態となる【文献1】。

[2] 皮脂とマラセチアの相互作用

マラセチアが皮脂を分解し、不飽和遊離脂肪酸(とくにオレイン酸)を産生する。これが角層を刺激し、炎症と落屑を悪化させる【文献2】【文献3】。

[3] 自然免疫の活性化

NF‑κBを中心とする炎症シグナルが刺激により持続的に活性化し、炎症性サイトカインが産生され、紅斑やかゆみを長引かせる【文献1】。

[4] 酸化ストレスの持続

活性酸素(ROS)が増加し、脂質過酸化が進行する。これにより角層はさらに脆弱化し、炎症は慢性化のループを形成する【文献4】。



ヒト血小板溶解液系に含まれる主要成分と役割

■1. ヒト血小板溶解液系の定義

ヒト血小板溶解液系とは、本稿で、ヒト血小板溶解液(HPL)を中核とし、その中に含まれる細胞外小胞(エクソソームや血小板由来微小粒子)と、上流素材にあたる多血小板血漿(PRP)を便宜上一体として扱う呼称です。

製法によって比率は変動しますが、ヒト血小板溶解液には創傷治癒に関わる多様な生理活性分子が含まれています【文献5】。

■2. ヒト血小板溶解液系に含まれる成分群

[1] 成長因子群(EGF、PDGF、TGF-β、VEGFなど)

表皮細胞や線維芽細胞の移動・増殖を促し、再上皮化や基質再編、血管新生を後押しします【文献6】。

[2] 細胞外小胞(エクソソーム/血小板由来微小粒子)

タンパク質や脂質、miRNA(例:miR-126)を運搬し、受け手細胞の遺伝子発現を調整します【文献5】【文献8】。

[3] 抗菌ペプチド群(Thrombocidinsなど)

表層の微生物由来刺激を直接下げ、炎症を引き起こす初期刺激を減らします【文献10】【文献11】。

[4] 抗酸化酵素群(SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ など)

ヒト血小板溶解液にはもともと酵素系の抗酸化因子が含まれており、活性酸素(ROS)を直接消去して脂質過酸化の連鎖を抑えます【文献17】。

■2. ヒト血小板溶解液系がもたらす主要な作用

ヒト血小板溶解液系の成分群は互いに重なり合い、次のような作用を同時に発揮します。



想定作用機序(時間軸モデル)

■1. フェーズ1:施術直後〜48時間における抗酸化と抗炎症の初期応答

[1] 直接抗酸化と炎症鎮静の同時進行

ヒト血小板溶解液に含まれるSODカタラーゼグルタチオンペルオキシダーゼ活性酸素(ROS)を直接消去し、脂質過酸化の連鎖を初期段階で断ちます【文献17】。

同時に、ヒト血小板溶解液PRP由来の因子がNF‑κB依存の炎症シグナルを抑制し、紅斑とかゆみの駆動力を弱めます【文献7】【文献15】。

[2] Nrf2経路の誘導による抗酸化強化

PRPNrf2を活性化し、内因性の抗酸化酵素(SOD、カタラーゼ、HO-1など)を増やすことで酸化ストレスに傾いた環境を是正します【文献9】。

[3] ダーマローラーによる到達性の向上

ダーマローラーが角層に均一な微小チャネルを形成し、ヒト血小板溶解液系のタンパク質や小胞が病変全体に分布しやすくなります【文献12】【文献13】。

■2. フェーズ2:2〜7日における再上皮化と微小循環の改善過程

[1] 再上皮化と角層成熟の加速

EGFPDGFTGF-βなどが角化細胞の移動・増殖・分化を整え、バリアの連続性が回復し、TEWLが減少する方向に働きます【文献6】【文献1】。

[2] 微小循環の改善と代謝安定化

ヒト血小板溶解液由来の細胞外小胞miR-126を運び、内皮細胞の応答を高めて新生血管を形成します。その結果、代謝産物のクリアランスが高まり、炎症の再燃性も下がります【文献8】。

■3. フェーズ3:2〜4週間における微生物環境と免疫の安定化

[1] 微生物・免疫の安定化

血小板由来の抗菌ペプチドが表層の微生物刺激を減らし、バリアが整った状態ではマラセチア関連の刺激が炎症に直結しにくくなります【文献10】【文献11】【文献2】。

[2] 炎症再燃の抑制と再発閾値の上昇

直接抗酸化とNrf2誘導が重なり、ROSからNF‑κBへの刺激回路が再活性化しにくくなります。その結果、炎症の再燃が防がれ、症状の再発閾値が引き上げられます【文献4】【文献9】【文献15】。



ダーマローラーによる経皮送達と創傷治癒プライミング

針長0.5mm~1.0mm程度のダーマローラーは、施術の効果を高める補助的な役割を果たします。

まず、角層に均一な微小チャネルを形成することで、ヒト血小板溶解液系に含まれる成分を皮膚内部へ均一に届ける経皮送達効果を高めます【文献12】【文献13】。これにより、抗炎症因子や抗酸化酵素成長因子細胞外小胞が病変部に十分に到達します。

さらに、0.5mm~1.0mmの浅い深さで生じる微小損傷は、皮膚が本来備えている自然の創傷治癒プログラムを軽度に呼び起こします。その上で、ヒト血小板溶解液系に含まれる成長因子細胞外小胞が加わることで、この自然反応はより効率的かつ質の高い修復プロセスとして進行します。

なお、0.5mm~1.0mmの針長の場合、乳頭真皮に達する深さであるものの、過度の損傷を避けやすい範囲にとどまるため、炎症性皮膚疾患への応用においても現実的です【文献14】。



実症例の紹介

以下の写真は、医療機関から提供を受けた臨床事例です。

■1. 症例の背景

患者は中度脂漏性皮膚炎で、ステロイドによる治療を繰り返し受けても再燃を防げず、症状が2年以上持続していました。

■2. 施術スキーム

[1] 1日目

施術前に写真撮影(左図)を行いました。患部を清潔な状態に整えた後、ヒト血小板溶解液系を塗布し、針長1.0mmのダーマローラーを使用しました。その後、再度ヒト血小板溶解液系を塗布し、患部になじませました。

[2] 2〜4日目

市販の化粧水を用いて患部を保湿しました。

[3] 5日目

1日目と同様に、患部を清潔な状態に整えた後、ヒト血小板溶解液系を塗布し、針長1.0mmのダーマローラーを使用しました。その後、再度ヒト血小板溶解液系を塗布し、患部になじませました。

[4] 6〜9日目

2〜4日目と同様に、市販の化粧水で患部を保湿しました。

[5] 10日目以降

施術後に写真撮影(右図)を行いました。以降は1カ月に一度の経過観察を続けていますが、本稿執筆時点で9カ月間再発は認められていません。



まとめ

中度脂漏性皮膚炎は、「角層バリアの破綻」「皮脂とマラセチアの相互作用」「自然免疫の活性化」「酸化ストレスの持続」という四つの要素が絡み合う慢性炎症です【文献1】【文献2】【文献4】。

ヒト血小板溶解液系は、抗酸化酵素の直接作用とNrf2誘導を通じて酸化ストレスを初期から低下させ、NF‑κB抑制で炎症反応を抑えます。さらに、成長因子miR-126を含む小胞がバリア再建と微小循環を整え、抗菌ペプチドが微生物刺激を減らします【文献5】【文献6】【文献8】【文献10】【文献11】【文献15】【文献17】。

ダーマローラーは、これらの成分を病変全体に均一に行き渡らせると同時に、軽微な創傷によって体が本来もつ自然修復プログラムを呼び起こします。その結果、ヒト血小板溶解液系の効果が増幅されます【文献12】【文献14】。

併用全体としては、初期の炎症・酸化制御 → バリアと循環の修復 → 微生物・免疫の安定化という三段階の流れを通じて、「再燃しにくい皮膚」へと近づける合理的な筋道が説明できます【文献1】【文献2】【文献4】【文献8】。



専門用語一覧



参考文献一覧

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執筆者

■博士(工学)中濵数理

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